退職金の確認方法|退職金があるか・いくらもらえるか計算方法を解説

退職金は老後の生活資金や転職後の生活を支える大切なお金です。しかし「自分の会社に退職金制度があるのか」「いくらもらえるのか」について詳しく把握していない人も少なくありません。

退職金制度は会社ごとに異なり、そもそも制度が存在しない場合もあります。退職金があるかないかで将来の資金計画が大きく異なりますので、事前に把握しておきましょう。

本記事では、退職金の確認方法や計算方法を解説します。退職金があるか・いくらもらえるか疑問に思っている人は、ぜひ参考にしてください。

本記事の結論

・退職金制度のある会社の割合は74.9%で、会社に支給義務はない
・退職金があるかどうかを確認する方法は、就業規則・退職金規程・雇用契約書・労働条件通知書を確認する、上司や人事部に聞く
・退職金がもらえない場合の対処法は、就業規則や退職金規程を再確認する、違法性がある場合は労働基準監督署労働喜寿に相談する

退職金制度は会社によって異なる

退職金はすべての会社で一律に支給されるわけではなく、制度の有無や内容は企業ごとに大きく異なります。勤続年数や役職、退職理由によっても金額は変わります。

そのため、自分の会社に制度があるのか、どのような仕組みなのかを早めに確認しておくことが重要です。

  • 退職金は法律で義務づけられていない
  • 退職金制度のある会社の割合
  • 退職金の相場

退職金は法律で義務づけられていない

退職金というと、多くの人が当然もらえるものだと考えがちですが、実際には法律で義務づけられているわけではありません。

労働基準法では最低限の賃金や労働条件が定められていますが、退職金については会社が自主的に制度を導入するかどうかに委ねられています。

そのため、退職金があるかどうかは企業ごとに異なり、制度がない場合でも違法にはなりません。

一方で、就業規則や退職金規程に制度が明記されており、自分が支給対象に当てはまっているのに支給されない場合は違法となります。自分が対象者として定められているかどうかを確認しておくことが重要です。

また、退職金が存在する会社でも、勤続年数や役職、退職理由によって受け取れる金額が変わります。たとえば、自己都合退職よりも会社都合退職のほうが多く支給されるケースは一般的です。

将来の資金計画に影響するため、自分の会社に制度があるのかを早めに確認しておきましょう。

関連記事:退職金が出ない場合の原因と対処法は?老後対策についても解説

退職金制度のある会社の割合

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によれば、退職金制度のある会社は全体の74.9%です。企業規模別の割合は以下の通りです。

企業規模 退職金制度がある割合
1,000人以上 90.1%
300~999人 88.8%
100~299人 84.7%
30~99人 70.1%

すべての企業が導入しているわけではなく、約4社に1社は退職金制度を設けていません。規模が大きい企業ほど退職金制度を導入している割合が高く、特に1,000人以上の大企業では9割以上が制度を導入しています。

一方で小規模企業では導入率が低く、退職金が必ずあるとは限りません。また、業種によっても退職金制度の有無は大きく異なります。

業種 退職金制度がある割合
複合サービス事業 97.9%
鉱業、採石業、砂利採取業 97.6%
電気・ガス・熱供給・水道業 96.4%
金融業、保険業 92.8%
教育、学習支援業 87.3%
学術研究、専門・技術サービス業 87.2%
製造業 85.6%
建設業 82.9%
卸売業、小売業 77.4%
医療、福祉 75.5%
不動産業、物品賃貸業 74.7%
情報通信業 74.6%
運輸業、郵便業 69.9%
生活関連サービス業、娯楽業 68.5%
サービス業(他に分類されないもの) 54.4%
宿泊業、飲食サービス業 42.2%

複合サービス事業や鉱業、電気・ガスといったインフラ関連、金融業などは導入率が9割を超えており、退職金制度が非常に整備されています。

一方で、宿泊業や飲食サービス業、娯楽業といったサービス系は導入率が低く、特に宿泊業・飲食サービス業ではわずか42.2%しか制度がありません。

このように、業種によって退職金制度の普及状況は大きく異なります。自分の勤務先がどの業種に属しているかを把握するだけでも、制度が導入されているかイメージしやすいです。

退職金の相場

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によれば、退職者1人あたりの平均退職金額は以下の通りです。対象は勤続20年以上かつ45歳以上の退職者となっています。

大学・大学院卒
(管理・事務・技術職)
高校卒
(管理・事務・技術職)
定年 1,896万円 1,682万円
会社都合 1,738万円 1,385万円
自己都合 1,441万円 1,280万円

定年退職であれば約1,600万〜1,800万円が平均的な水準です。ただし、自己都合退職の場合は定年よりも数百万円少なくなる傾向が見られます。また、学歴による違いもあり、大学・大学院卒は高校卒と比べて数百万円高い金額となっています。

ただし、これらはあくまで全国平均であり、実際の退職金額は企業規模や業種、勤続年数によって大きく異なるので注意しましょう。

大企業では平均を上回るケースも多い一方、中小企業では退職金が存在しない場合や金額が大きく下がるケースも珍しくありません。

自分がどの水準に当てはまるのかを把握するためには、会社の就業規則や退職金規程を確認することです。

退職金があるかどうかを確認する方法

退職金制度は会社によって有無や内容が異なるため、自分で確認することが大切です。退職金があるかどうかを確認する方法を紹介します。

  • 就業規則を確認する
  • 退職金規程を確認する
  • 雇用契約書や労働条件通知書を確認する
  • 給与明細から確認する
  • 会社の人事部・総務部に直接確認する
  • 先輩や上司に確認する

就業規則を確認する

退職金制度の有無を確認する際、まずチェックすべきは会社の就業規則です。就業規則は、会社が従業員に適用する労働条件を定めた基本文書であり、退職金の支給条件や計算方法も記載されている場合があります。

就業規則には「退職金規程に基づき支給する」といった概要が記載されていることが多く、制度の有無だけでなく、支給対象者や勤続年数、退職理由による差異なども確認できます。

確認方法としては、紙で保管されている場合はコピーをもらうか、社内のイントラネットで閲覧できる場合は最新版をチェックしましょう。

また、就業規則に「退職金規程を参照」と記載されている場合は、規程本文を別途確認する必要があります。

就業規則は労働基準法で従業員への周知が義務付けられており、閲覧を拒否されることは原則ありません。仮に周知義務を怠っていれば、退職金について明記されていたとしても違法になる可能性があります。

退職金規程を確認する

退職金規程は、退職金制度の具体的な支給ルールや計算方法を定めた文書です。就業規則に「退職金規程に基づき支給する」との記載があった場合、実際の金額や条件はこの規程に沿って決まります。

規程には、勤続年数に応じた計算式や、役職別の加算、自己都合・会社都合退職による差異など、詳細な条件が記載されていることが多いです。

確認の方法としては、会社の総務部や人事部で閲覧を申し出るのが基本ですが、社内イントラネットで閲覧できる場合もあります。

雇用契約書や労働条件通知書を確認する

退職金制度の確認には、雇用契約書や労働条件通知書も有効です。これらの書類には、入社時に取り交わした契約内容が記載されており、退職金の支給に関する記載がある場合があります。

とくに契約書に「退職金制度あり」「就業規則および退職金規程に基づき支給」と明記されていれば、自社で退職金制度が運用されている証拠となります。

給与明細から確認する

退職金制度があるかを確認する方法として、給与明細をチェックするのも有効です。

給与明細には基本給や手当、賞与などの項目が記載されていますが、会社によっては「退職金積立」や「退職金掛金」といった項目が明示されていることがあります。

これらが記載されていれば、退職金制度が導入されている可能性が高いと判断できます。

確認する際には、過去数か月分の給与明細を比較することがポイントです。毎月一定額が積み立てられているか、賞与の一部が退職金に反映されているかなど、制度の運用状況を把握できます。

また、会社によっては給与明細に明記されず、別途帳票や社内システムで管理されている場合もあるため、記載がないからといって制度が存在しないとは限りません。

給与明細での確認は、制度の有無を把握する初期手段として便利ですが、正確な支給条件や計算方法を理解するためには、就業規則や退職金規程とあわせて確認することが重要です。

会社の人事部・総務部に直接確認する

退職金制度の有無や詳細を正確に把握するためには、人事部や総務部に直接確認する方法が最も確実です。書類だけでは情報が不十分な場合や、規程が変更されている場合でも、担当部署に問い合わせれば最新の情報を得られます。

確認する際は、具体的に退職金制度の有無・支給条件・計算方法などを質問すると、必要な情報を漏れなく取得できます。直接確認するメリットは、書類だけではわからない細かい条件や制度の運用状況も知れることです。

問い合わせの際は、メールや社内問い合わせフォームを活用するのも便利ですが、口頭で確認する場合は記録を残すことが大切です。後々、退職金額や支給条件で誤解が生じた場合に証拠として役立ちます。

先輩や上司に確認する

退職金制度の情報は、社内の先輩や上司に聞くことでも把握できます。ただし、口頭での確認は公式な証拠にならないため、あくまで参考情報として扱うことが重要です。

確認内容が曖昧な場合は、必ず就業規則や退職金規程、人事部への確認とあわせてチェックしてください。

先輩や上司に確認する場合は、具体的な計算方法や条件までを把握している人はほとんどいないため、退職金制度の有無を知るために有効です。

退職金はいくらもらえる?金額の計算方法

退職金を計算する方法はいくつかありますが、代表的な制度は「退職一時金制度」「確定給付企業年金(DB)」「企業型確定拠出年金(DC)」「退職金共済」の4つです。

それぞれ計算方法や支給条件が異なりますので、具体的に見ていきましょう。

  • 退職一時金制度
  • 確定給付企業年金(DB)
  • 企業型確定拠出年金(DC)
  • 退職金共済

退職一時金制度

退職一時金制度は、退職時にまとまった金額を一括で受け取る方式です。計算の基本は、勤続年数や最終給与額に応じた支給率を掛ける方法が一般的で、たとえば「基本給×勤続年数×支給率」という形で算定されます。

役職や退職理由によって加算や減額が行われる場合もあります。会社都合退職では支給率が高めに設定され、自己都合退職では低めに設定されるのが一般的です。

具体例を挙げると、基本給30万円、勤続年数20年、支給率50%の場合、退職金は次のように計算されます。

退職金 = 基本給 × 勤続年数 × 支給率
退職金 = 30万円 × 20年 × 50%
退職金 = 300万円

退職一時金制度の特徴は、退職時にまとまった資金を受け取れることです。教育費や住宅資金、転職準備など、退職後の生活設計に活用できます。

ただし、一括支給のため税金や社会保険料の負担が大きくなる場合もあることに注意が必要です。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金は、退職時に受け取る年金額があらかじめ決まっている制度です。支給額は基本的に「最終給与額や平均給与額×勤続年数×支給率」に基づいて計算され、企業が積立金や運用によって必要額を準備します。

支給額は退職後、年金として分割で受け取る場合が多いですが、一括で受け取れるケースもあります。

具体例を挙げると、最終給与30万円、勤続年数20年、支給率1.5%の場合、退職時の年金総額は以下の通りです。

退職金総額 = 最終給与 × 勤続年数 × 支給率
退職金総額 = 30万円 × 20年 × 1.5%
退職金総額 = 9万円

DB制度の特徴は、受け取る金額が事前にほぼ確定していることです。投資リスクを個人が負う必要がなく、老後の生活設計に安定した資金として活用できます。

企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金は、企業が毎月一定額を拠出し、従業員自身が運用方法を選んで積み立てる制度です。最終的に受け取れる金額は運用成果によって変動するため、将来の受給額は保証されません。

積立額は毎月の給与から天引きされる場合や、会社が拠出する場合があります。

具体例として、毎月2万円を20年間積み立て、運用利回りが年率2%であった場合の将来の受給額を計算してみましょう。

将来価値(FV)=毎月拠出 × 【[(1 + 1か月あたりの利率) × 積立期間の月数] – 1】 / 1か月あたりの利率
月利 = 2% ÷ 12 = 約0.001667

FV= 2万円 × 【[(1 + 約0.001667) × 240] – 1】 / 約0.001667
FV ≈ 2万円 × 281.6 = 約563万円

この例では、20年間の積立と運用によって約563万円を受け取れる計算になります。実際の金額は運用成績や拠出額の変更、手数料などで変動するため、あくまで目安です。

DC制度の特徴は、従業員自身が運用方法を選べることです。株式や債券、投資信託などリスク・リターンの異なる選択肢を組み合わせることで、将来の資金を増やすことも可能ですが、運用次第では元本割れのリスクもあります。

老後資金を自分で管理・運用したい人に向いている制度です。

退職金共済

退職金共済は、中小企業の退職金制度を国や組合が支援する制度です。会社が毎月掛金を共済組合に納め、従業員は退職時に掛金や支給率に基づいて退職金を受け取ります。

支給額は「掛金 × 勤続年数 × 支給率」に基づいて計算され、運用リスクは共済組合が負います。

具体例を挙げると、毎月の掛金1万円、勤続年数20年、支給率1.2の場合、退職時の退職金総額は次の通りです。

年間掛金 = 1万円 × 12か月 = 12万円
退職金総額 = 年間掛金 × 勤続年数 × 支給率
退職金総額 = 12万円 × 20年 × 1.2
退職金総額 = 288万円

退職金共済の特徴は、会社が掛金を積み立てるため、従業員にとって退職金が安定して確保できることです。運用リスクを個人が負う必要がなく、老後の生活設計に活用しやすい制度となっています。

退職金がもらえない場合の対処法

退職金が支給されない場合には、まず原因を確認することが重要です。退職金制度は企業ごとに異なるため、支給対象や条件を誤解していることもあります。

  • 就業規則や退職金規程を再確認する
  • 違法性がある場合は労働基準監督署に相談する
  • 老後資金を自分で準備する

就業規則や退職金規程を再確認する

退職金がもらえない場合は、まず就業規則や退職金規程を確認してください。自分の中では退職金が支給されると思っていても、実は支給対象の基準を満たしていないケースがあります。

退職金のルールは企業ごとに異なるため、一般的な基準を満たしていても、必ずしも自社の規程に当てはまるとは限りません。

会社に「退職金がない」と訴える前に、まずこれらの情報を確認しておくことで、無用なトラブルを避けられます。

違法性がある場合は労働基準監督署に相談する

自分が支給対象に含まれているのに会社が支給しない場合は、労働基準監督署に相談・申告しましょう。支給対象になっているにもかかわらず支給されない場合は、労働基準法に違反している可能性があります。

相談することで、会社に対して助言や指導してもらえます。相談する際は、相談内容をまとめるだけでなく、労働基準法炉を違反している証拠を用意しましょう。証拠があれば、労働基準監督署も動きやすくなります。

なお、法的手段に出る場合は、労働基準監督署では対応できないため、弁護士へ相談が必要です。

老後資金を自分で準備する

自分が支給基準を満たしていない場合は、退職金をもらえませんので、老後資金は自分で準備しておくことが重要です。また、支給されたとしても思った以上に金額が少ない場合も、同様です。具体的には、毎月少額でも積み立て貯金やiDeCo、つみたてNISAなどの制度を活用して資産形成する方法があります。早いうちから準備を始めるほど、複利の効果で資金を増やせる可能性が高まります。

その他にも、以下のような方法で老後資金を準備できますので参考にしてください。

  • 副業をして収入源を増やす
  • 生活費を見直して支出を節約する
  • 財形貯蓄や定期預金を利用して計画的に貯める
  • 投資信託や株式などで資産運用する
  • 不要な保険や固定費を見直して支出を最適化する

これらを組み合わせることで、退職金に頼らず、自分で老後資金を安定的に準備できます。

まとめ

退職金は、会社が任意で導入している制度であり、すべての企業で必ず支給されるわけではありません。まずは就業規則や退職金規程を確認し、自分が支給対象に含まれているかを把握することが重要です。

その他にも、給与明細や上司、人事部などから退職金があるか確認できます。また、退職金がない場合や思ったより少額の場合でも、老後資金は自分で準備しておくことが大切です。

積立貯金やiDeCo、つみたてNISA、副業や支出の見直しなどを組み合わせることで、退職後の生活を安定させることができます。

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