再就職手当とは?もらえる条件と金額、申請方法をわかりやすく解説

再就職手当とは、失業保険(基本手当)の受給中に早期に再就職した人が受け取れる給付金です。

再就職が早ければ早いほど多くの金額が支給される仕組みで、厚生労働省が運営する雇用保険制度の一つにあたります。

ただし、誰でも自動的にもらえるわけではなく、受給には8つの条件をすべて満たす必要があります。

また、申請のタイミングや書類の不備によって支給が遅れたり、対象外になるケースもあるため注意が必要です。

本記事では、再就職手当の概要・支給条件・金額・申請方法をわかりやすく解説します。再就職を考えている方や、ハローワークの説明を聞いてもよく分からなかった方は、ぜひ参考にしてください。

本記事の結論

・再就職手当とは、失業保険(基本手当)の受給中に早期に再就職した人へ支給される給付金
・再就職手当がもらえる条件は、前職の会社へ再就職していない、1年以上の勤務が見込まれる、雇用保険の被保険者であるなど
・再就職手当の申請方法・手続きの流れは、就職後にハローワークに報告、再就職手当支給申請書を提出、支給決定通知書が届く
・再就職手当を受給するメリットは、再就職してすぐに退職しても再就職手当を返金する必要がない、再就職が早いほど多く支給される

目次

再就職手当とは?

再就職手当とは、失業保険(基本手当)の受給中に早期に再就職した人へ支給される給付金です。

早期の再就職を促進し、安定した雇用を実現する目的で設けられた制度で、雇用保険に加入していた人が対象になります。

失業保険の残日数が多いほど支給金額が高くなるため、できるだけ早く就職を決めた方が多くの金額を受け取れます。

支給対象となるのは、ハローワークに求職申し込みをしたうえで再就職した人であり、自己都合退職・会社都合退職のどちらでも条件を満たせば受け取ることが可能です。

再就職手当と失業手当の違い

失業手当(基本手当)は、失業中の生活を支えるために支給されるお金です。一方、再就職手当は早期に就職を決めた人に対して支給されるお金であり、目的が異なります。

再就職手当 失業手当(基本手当)
対象者 失業中に早期再就職をした人 失業中で求職活動をしている人
支給目的 早期就職の促進・就職支援 失業中の生活支援
支給時期 再就職後(就職報告から約1~2か月後) 失業認定後、4週間ごとに支給
課税区分 非課税 非課税
支給額の基準 残りの基本手当日数に応じて算出 基本手当日額×支給日数

再就職手当は、失業手当を最後まで受け取る前に再就職する人ほど有利になる制度です。

そのため、再就職手当と失業手当は同時に受け取ることはできません。失業手当の受給を途中で終了し、その残り分が再就職手当として支給されます。

関連記事:自己都合退職した場合の失業保険(失業手当)|もらえる条件や金額、手続きについて解説

再就職手当がもらえる条件は8つ

再就職手当を受け取るには、ハローワークが定める8つの条件をすべて満たす必要があります。1つでも該当しない場合は支給対象外となるため、事前に確認しておくことが大切です。

支給条件が多いため注意しましょう。

  • 1.受給手続き後、待期期間満了後に就職・事業を開始したこと
  • 2.失業認定を受け、基本手当の残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • 3.前職の会社へ再就職していないこと
  • 4.給付制限のある人が待期後1か月以内に就職する場合はハローワークなどの紹介で就職すること
  • 5.1年以上の勤務が見込まれること
  • 6.雇用保険の被保険者となっていること
  • 7.過去3年以内に再就職手当などの支給を受けていないこと
  • 8.求職申込み前から内定していた会社に就職していないこと

1.受給手続き後、待期期間満了後に就職・事業を開始したこと

再就職手当を受け取るためには、雇用保険の受給手続きを終え、7日間の待期期間が過ぎてから就職・開業していることが条件です。

待期期間とは、失業状態であることを確認するための期間であり、求職の申し込みをしてから7日間は基本手当の支給対象外となります。

待期期間中に入社した場合は、失業状態とみなされず再就職手当の支給対象外です。

2.失業認定を受け、基本手当の残日数が所定給付日数の3分の1以上あること

再就職手当の支給を受けるには、失業認定を受けていること、そして失業手当(基本手当)の残日数が所定給付日数の3分の1以上あることが条件です。

所定給付日数とは、年齢や雇用保険の加入期間、退職理由などに応じて決められた、受給できる最大日数のことを指します。

例えば、所定給付日数が90日の場合、再就職手当を受け取るには30日以上の残日数が必要になります。所定給付日数については以下の表を参考にしてください。

【自己都合退職の場合】

被保険者であった期間 10年未満 10年以上20年未満 20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

【会社都合退職の場合】

被保険者であった期間 1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

参考元:厚生労働省|離職されたみなさまへ

もし残日数が3分の1未満しか残っていない状態で再就職しても、支給対象外となりますので注意しましょう。

3.前職の会社へ再就職していないこと

再就職手当は、前職と同じ会社に再就職した場合には支給されません。これは、制度の目的が新しい職場への早期就職を支援することにあるためで、同じ職場への復職は対象外とされています。

たとえば、退職後に会社から「もう一度戻ってきてほしい」と誘われて再雇用された場合や、名義上は別会社でも実質的に同じグループ企業で、業務内容・勤務地・人事権などが前職と変わらない場合も、ハローワークの判断で同一事業主とみなされることがあります。

このようなケースでは再就職手当の支給対象外となるため、再就職先が前職の関連会社・子会社・グループ企業に該当する場合は、事前にハローワークへ確認しておくことが重要です。

4.給付制限のある人が待期後1か月以内に就職する場合はハローワークなどの紹介で就職すること

給付制限のある人とは、自己都合退職などの理由で、基本手当(失業手当)が一定期間支給されない人を指します。

また、教育訓練を受けたことなどにより給付制限が解除された場合も、この条件に当てはまります。

これらの人が待期期間(7日間)終了後の1か月以内に就職する場合は、ハローワークまたは厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者による紹介での就職であることが条件です。

たとえば、doda・リクルートエージェント・マイナビ転職エージェントなどの転職支援サービスは、許可を受けた職業紹介事業者に該当します。

ただし、求人によっては正式な紹介として扱われないケースもあるため、エージェントを利用する際はハローワークの要件を満たす紹介であるかを必ず確認しましょう。

一方で、ハローワークや許可事業者の紹介を介さず、自分で応募して1か月以内に就職した場合は支給対象外になります。

1か月を過ぎてから就職する場合は、応募経路に制限はありませんが、再就職手当を受け取るには所定給付日数の3分の1以上の残日数が必要となる点に注意してください。

5.1年以上の勤務が見込まれること

再就職手当の支給対象となるには、再就職先で1年以上の勤務が見込まれていることが条件です。これは、短期雇用や試用目的の採用などではなく、安定的な雇用に就いた人を支援する制度であるためです。

1年以上の勤務見込みは、実際に1年以上働いた実績が必要という意味ではありません。

雇用契約書や労働条件通知書などに、「期間の定めがない雇用契約」または「1年以上の雇用契約期間」が明記されていれば対象になります。

反対に、契約期間が6か月や10か月など1年未満で更新予定がない場合は、再就職手当の支給対象外です。

ただし、当初は6か月契約であっても、更新を前提とした雇用(契約更新見込みあり)であれば、ハローワークの判断で支給対象になるケースもあります。

また、正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・パートなどの雇用形態でも、勤務期間が1年以上見込まれる場合は再就職手当の対象になります。

6.雇用保険の被保険者となっていること

再就職手当を受け取るには、再就職先で雇用保険の被保険者として雇用されていることが条件です。

短期間のアルバイトや業務委託などではなく、雇用契約に基づいて継続的に働くことを前提とした再就職を支援するための制度だからです。

具体的には、再就職先で以下のいずれかの条件を満たしている必要があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

これらの条件を満たす場合、再就職先の事業主は労働者を雇用保険に加入させなければなりません。

そのため、再就職手当を申請する際には、雇用保険被保険者資格取得届の写しや雇用契約書などを提出が必要です。

一方、個人事業主として独立・開業する場合でも、一定の条件を満たせば再就職手当の対象になることがあります。

7.過去3年以内に再就職手当などの支給を受けていないこと

再就職手当を受け取るには、過去3年以内に再就職手当や就業促進定着手当などの支給を受けていないことが条件です。

これは、短期間での離職と再就職を繰り返して手当を何度も受け取ることを防ぐために設けられています。

過去3年以内とは、再就職手当を支給された日から3年を経過していない期間を指します。そのため、前回の再就職手当の支給日から3年以上経過していれば、再び支給対象になる可能性があります。

また、再就職手当と似た制度である就業促進定着手当を受けた場合も、同様に3年間は再就職手当の対象外です。

この2つの制度は併給が認められていないため、期間内に両方を受け取ることはできません。なお、再就職手当の申請をしたが不支給になった場合は、この条件には当てはまりません。

8.求職申込み前から内定していた会社に就職していないこと

再就職手当は、ハローワークへの求職申込み後に就職活動を行い、早期に再就職した人を支援する制度です。

そのため、求職申込みをする前からすでに内定していた会社に就職した場合は支給対象外となります。

制度の目的が失業状態にある人の就職支援であるため、あらかじめ再就職先が決まっていた場合は、失業状態とはみなされず、再就職手当の趣旨に該当しません。

たとえば、退職前から元同僚の紹介などで次の勤務先が決まっていた場合や、退職と同時に別会社への転籍が予定されていた場合は、ハローワークでの求職申込みをしても対象外になります。

また、開業や起業を予定しており、退職前から事業準備を進めていたケースも求職前に事業開始が決まっていたと判断されることがあります。

再就職手当はいつ?いくらもらえる?

再就職手当は、再就職してすぐにもらえるわけではありません。支給時期は勤務確認などの手続きがあるため、申請から一定の期間が必要です。

再就職手当がもらえるタイミングや計算方法について紹介します。

  • ハローワークへの「就職報告」から約1~2か月後
  • 再就職手当の受給金額の計算方法

ハローワークへの「就職報告」から約1~2か月

再就職手当は、ハローワークへの「就職報告」から約1~2か月後に支給されます。まずハローワークへ就職報告を行い、その後に審査・確認を経て支給が決定される、という流れです。

審査では、実際に就職しているか、雇用保険の被保険者資格を取得しているか、勤務が継続しているかなどが確認されます。そのため、再就職した直後に自動的に支給されるわけではありません。

また、提出書類に不備がある場合や勤務実態の確認に時間がかかる場合は、支給時期が遅れることもあります。したがって、1~2か月後というのはあくまで目安と考え、余裕をもって申請準備を進めることが大切です。

再就職手当の受給金額の計算方法

再就職手当の金額は、再就職時点で残っている基本手当日数と、再就職までのタイミングによって決まります。基本的な計算式は以下のとおりです。

再就職手当の金額=基本手当日額 × 残日数 × 支給率

支給率は、再就職の早さによって次の2段階に分かれています。

残っている基本手当日数 支給率
所定給付日数の3分の2以上 70%
所定給付日数の3分の1以上(3分の2未満) 60%

たとえば、基本手当日額が5,000円で、残日数が60日・支給率が70%の場合、5,000円 × 60日 × 70% = 210,000円が支給額の目安になります。

なお、基本手当日額には上限額があり、60歳未満は6,570円、60歳以上65歳未満は5,310円となっています(令和8年7月31日までの上限額)。

ただし、毎年8月1日に「毎月勤労統計」の平均給与額に基づき改定されますので、注意しましょう。

再就職手当の申請方法・手続きの流れ

再就職手当を受け取るためには、再就職後に自分で申請手続きを行う必要があります。ハローワークが自動的に支給してくれるわけではないため、申請の流れを正しく理解しておくことが重要です。

  • 就職後にハローワークに報告する
  • 「再就職手当支給申請書」を提出する
  • 勤務確認後に支給決定通知書が届く

就職後にハローワークに報告する

再就職先の入社日(勤務開始日)から1週間以内を目安に、ハローワークへ就職報告を行いましょう。報告を行わないまま就職すると、失業手当の不正受給とみなされるおそれがあるため注意が必要です。

就職報告の際には、ハローワークから渡された「再就職手当支給申請書」のほか、次の書類を準備します。

  • 再就職先の会社が記入した「雇用保険被保険者資格取得届」の写し
  • 雇用契約書または労働条件通知書の写し
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)

報告の際に、再就職先が雇用保険の適用事業所かどうか、また1年以上の勤務が見込まれるかといった条件も確認されます。

これらの条件を満たしていない場合、再就職手当の対象外となることがあるため、入社前に雇用条件をしっかり確認しておくことが大切です。

就職報告を終えると、ハローワークで申請書に受付印が押され、次の手続きである「再就職手当支給申請書」の提出へと進みます。

「再就職手当支給申請書」を提出する

就職報告を終えたら、次に再就職手当支給申請書をハローワークへ提出します。この申請書は、再就職手当の支給を正式に申請するための重要な書類で、本人と再就職先の事業主の記入が必要です。

まず本人欄には、氏名・住所・再就職先の名称などを記入します。次に、事業主欄には入社日・雇用形態・雇用保険加入の有無などを記入してもらう必要があります。

会社の担当者に依頼して、記入・押印が完了したらハローワークへ提出しましょう。

申請書の提出期限は明確には定められていませんが、入社後1~2週間以内を目安に提出するのが理想です。早めに提出しておくことで、勤務確認や審査がスムーズに進み、支給時期も早くなります。

また、書類の記入漏れや押印忘れがあると、支給までの期間が延びる原因になりますので、提出前に必ず内容を確認し、不備のない状態で提出することが大切です。

勤務確認後に支給決定通知書が届く

再就職手当支給申請書を提出すると、ハローワークで勤務実態の確認が行われます。これは、再就職先で実際に働いているか、継続勤務の見込みがあるかを確認するための手続きです。

勤務確認は、一般的に入社から1か月程度経過したタイミングで行われます。一般的には、再就職先の事業主に対して勤務状況の確認書類が送付され、回答内容に基づいて支給の可否が判断されます。

審査が完了すると、再就職手当支給決定通知書が自宅に郵送され、指定した銀行口座に振り込みが行われます。

通常は、申請から支給までおおよそ1~2か月が目安です。ただし、勤務確認に時間がかかったり、書類に不備がある場合はそれ以上かかることもあります。

再就職手当を受給するメリット

再就職手当を受給するメリットについて紹介します。

  • 再就職してすぐに退職しても再就職手当を返金する必要がない
  • 非課税の手当てとして支給される
  • 再就職が早いほど多くの手当を受け取れる

再就職してすぐに退職しても再就職手当を返金する必要がない

再就職手当は、制度の目的が早期再就職を支援することであり、再就職後の勤務継続までは求めていないため、一度支給が決定するとたとえ再就職後すぐに退職した場合でも返金する必要はありません。

ただし、支給決定前に退職した場合や、勤務確認の時点で既に離職していた場合は、支給対象外となる可能性がありますので、注意しましょう。

そのため、最低でも勤務確認が完了するまでは継続して働くことが望ましいです。

また、再就職手当を受給した後に再び失業した場合は、残っている基本手当日数を再計算し、新たに雇用保険の受給資格を得るまでに一定の期間(被保険者期間)が必要になります。

つまり、短期間で再度の受給はできない点には注意しましょう。

再就職手当は返金義務がない一方で、次の受給条件に影響する可能性もあるため、支給後の就労計画を慎重に立てることが大切です。

非課税の手当てとして支給される

再就職手当は、所得税や住民税がかからない非課税の手当として支給されるため、受け取った金額がそのまま手元に残るのが大きなメリットです。

給与やボーナスなどは課税対象ですが、再就職手当は雇用保険法に基づく給付金として扱われるため、課税所得に含まれません。

確定申告や年末調整の際に申告する必要もなく、受給金額が税金計算に影響することもありません。

再就職後すぐに必要となる引越し費用や通勤費、生活立ち上げの出費などに充てやすく、金銭的負担を軽減できます。

再就職が早いほど多くの手当を受け取れる

再就職手当は、再就職の時期が早いほど失業手当(基本手当)の残日数が多く残っているため、支給額が多くなります。

たとえば、所定給付日数が90日・基本手当日額が5,000円の場合を比較してみましょう。

再就職タイミング 残日数 支給率 支給額の目安
早めに再就職 60日 70% 5,000円 × 60日 × 70% = 210,000円
遅めに再就職 30日 60% 5,000円 × 30日 × 60% = 90,000円

このように、再就職の時期が1か月違うだけでも、支給額に2倍以上の差が生じる場合があります。

そのため、再就職手当を最大限に活用するには、できるだけ早く就職活動を再開し、条件の合う職場を見つけることが重要です。

再就職手当を受給するデメリット

再就職手当を受給するデメリットについて紹介します。

  • 再就職後にすぐ離職した場合、すぐに失業給付をもらえない
  • 再就職手当を目的に焦って就職先を決めてしまう

再就職後にすぐ離職した場合、すぐに失業給付をもらえない

再就職手当を受け取ったあとに短期間で退職した場合、すぐに再び失業給付を受け取ることはできません。

再度失業した場合は、新しく雇用保険の被保険者期間(原則6か月以上)を積み直す必要があります。

一方、再就職手当を受け取らずに失業手当を継続していた場合は、満額受け取ることが可能です。そのため、再就職後にすぐ退職してしまった場合はデメリットといえるでしょう。

再就職手当を目的に焦って就職先を決めてしまう

再就職手当は、早く就職するほど多くの金額を受け取れる制度ですが、手当の受給だけを目的に焦って就職先を決めてしまうのは危険です。

条件や仕事内容をよく吟味せずに入社してしまうと、職場環境のミスマッチや短期間での離職につながるおそれがあります。

たとえば、給与や勤務条件が希望とかけ離れている、職場の人間関係や社風が合わないといった理由で早期退職に陥るケースも少なくありません。

とくに、再就職手当を受給すると次の失業給付まで一定期間の被保険者期間(6か月以上)を満たす必要があるため、すぐに退職しても失業手当はもらえません。

そのため、焦って入社した結果、金銭的にもキャリア的にもマイナスになる可能性があります。

再就職手当以外でもらえるお金・支援制度

再就職手当のほかにも、就職やキャリア再スタートを支援するための公的制度がいくつかあります。

  • 常用就職支度手当(就職困難者向けの支援金)
  • 就業促進定着手当(前職よりも賃金が下がった場合)
  • 職業訓練受講給付金(スキルアップ期間を支援)
  • トライアル雇用制度(採用機会を広げる制度)

常用就職支度手当(就職困難者向けの支援金)

常用就職支度手当は、就職が難しいとされる人が早期に再就職した場合に支給される手当です。再就職手当と似ていますが、対象者が限定されており、主に就職困難者と呼ばれる人が対象です。

たとえば以下のような人が対象となります。

  • 障害者、母子家庭の母、父子家庭の父
  • 45歳以上で長期にわたって職に就いていない人
  • 公共職業訓練などを修了しても就職が決まらなかった人

支給額は、失業手当の残日数などをもとに算出され、再就職手当と同様に「基本手当日額 × 残日数 × 支給率(40~60%程度)」で計算されます。

ただし、支給率や上限額は対象者の状況によって異なりますので注意しましょう。

就業促進定着手当(前職よりも賃金が下がった場合)

就業促進定着手当は、再就職手当を受給した人のうち、再就職後の賃金が前職より下がった場合に支給される手当です。

早期に再就職しても、給与が下がって生活が厳しくなる人を支援する目的で設けられています。

就業促進定着手当を受給する場合は、以下の3つの条件をすべて満たしている必要があります。

  • 再就職手当を受給していること
  • 再就職後、6か月以上継続して勤務していること
  • 再就職先の1か月あたりの賃金が、離職前の賃金より少ないこと

支給額は、離職前と再就職後の賃金差額をもとに算出され、具体的には以下の通りです。

就業促進定着手当 = (離職前の賃金 − 再就職後の賃金) × 6か月分

再就職手当と同様に支給額には上限があり、毎年8月1日に改定しますので注意しましょう。

未経験分野に挑戦する人や前職の給与が高い人などは、就業促進定着手当に当てはまりやすくなるので、確認しておくと生活の安定を図れます。

職業訓練受講給付金(スキルアップ期間を支援)

職業訓練受講給付金は、再就職を目指して公共職業訓練(ハローワークが実施する無料の職業訓練)を受ける人に対して、生活費を支援する制度です。

すぐに就職するのが難しい人や、新しいスキルを身につけて再スタートしたい人に適しています。

職業訓練受講給付金を受給する場合は、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

  • ハローワークで求職申込みをしている
  • 収入が一定以下である(世帯年収300万円未満が目安)
  • 職業訓練を受講する本人とその世帯が住民税非課税相当である
  • 本人が訓練に専念できる状態である(就業していないなど)

職業訓練受講手当は月10万円で、交通費は月42,500円です。また、自宅から通えない場合は寄宿手当として月10,700円が支給されます。

訓練期間はコースによって異なりますが、3か月~1年程度が一般的です。

職業訓練受講給付金を活用すれば、収入が途絶える不安を軽減しながら、再就職に必要なスキルを身につけることが可能です。

ただし、受講態度が悪い、欠席が多いなどの場合は支給が停止されることがあります。

トライアル雇用制度(採用機会を広げる制度)

トライアル雇用制度は、職務経験が少ない人やブランクがある人に対して、一定期間お試しで雇用する制度です。

企業と求職者の双方が実際に働いてみてから採用を判断できるため、再就職のハードルを下げられます。

ハローワークの紹介を通じて、企業と求職者が一定期間(原則3か月間)試行的に雇用契約を結びます。

この期間中に能力や適性を確認し、双方の合意があれば常用雇用(正社員など)へ移行することが可能です。

求職者個人に直接お金が支給される制度ではありませんが、企業が採用に前向きになりやすくなるため、就職のチャンスを広げる効果があります。

再就職手当に関するよくある質問

再就職手当に関するよくある質問を紹介します。

  • 再就職手当で提出する必要書類は何?
  • 再就職手当はハローワーク以外で就職してももらえるの?
  • 再就職手当はいつ・どこに振り込まれるの?
  • 再就職手当はアルバイトやパートで入社した場合ももらえるの?
  • 再就職手当の支給申請書の記入例は?
  • 再就職手当は自己都合退職でももらえるの?

再就職手当で提出する必要書類は何?

再就職手当を申請する際に必要な書類は、以下の通りです。

  • 再就職手当支給申請書
  • 雇用保険被保険者資格取得届の写し
  • 雇用契約書または労働条件通知書の写し
  • 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)

ハローワークによっては「就職証明書」など追加で求められる書類がある場合もあります。

再就職手当はハローワーク以外で就職してももらえるの?

待期後1か月を過ぎてから就職する場合は、ハローワーク以外の紹介でも再就職手当を受け取ることが可能です。

一方で、待期期間が終わって1か月以内に就職する場合は、ハローワークや厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者の紹介でなければ対象外となるので注意しましょう。

再就職手当はいつ・どこに振り込まれるの?

再就職手当は、申請からおおむね1〜2か月後に、本人名義の銀行口座へ振り込まれます。ただし、勤務状況の確認や書類審査に時間がかかる場合は、2か月以上かかることもあります。

名義が異なる口座や家族名義の口座は利用できませんので、注意しましょう。

再就職手当はアルバイトやパートで入社した場合ももらえるの?

再就職手当は、アルバイトやパートなどの非正規雇用で働き始めた場合でも、一定の条件を満たせば受給できます。雇用形態ではなく、雇用保険の被保険者として雇われているかどうかがポイントです。

再就職手当を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用保険の被保険者資格を取得している(週20時間以上勤務など)
  • 雇用期間が1年以上見込まれている
  • 求職申込み前から内定していた会社ではない

つまり、たとえパート勤務であっても、長期雇用が前提で雇用保険に加入していれば再就職手当の対象になります。

再就職手当の支給申請書の記入例は?

再就職手当支給申請書は、本人と再就職先の事業主がそれぞれ記入する欄があります。書き方を間違えると審査が遅れる原因になるため、記入前に内容をよく確認しておきましょう。

本人が記入する主な項目は、以下の通りです。

  • 氏名、住所、生年月日
  • 離職票に記載されている受給資格番号
  • 再就職先の会社名・所在地・入社日
  • 振込先口座情報(本人名義)

特に受給資格番号や入社日の記入ミスが多いため、離職票や雇用契約書を手元に置いて正確に記入してください。事業主(会社側)が記入する主な項目は、以下の通りです。

  • 雇用契約の内容(雇用形態・契約期間・勤務時間など)
  • 雇用保険の被保険者資格取得の有無
  • 会社名・所在地・代表者名
  • 会社印の押印

会社側の記入欄は、必ず事業主本人または担当者に記入してもらい、押印を受けてから提出しましょう。

再就職手当は自己都合退職でももらえるの?

再就職手当は、会社都合か自己都合かは関係ないため、自己都合退職でも条件を満たせば受給できます。

給付制限中であっても、待期期間(7日間)終了後1か月以内に、ハローワークまたは厚生労働大臣の許可を受けた職業紹介事業者の紹介で就職した場合は、再就職手当の対象になります。

まとめ

再就職手当は、早期に再就職した人を支援するための制度で、失業手当の残日数に応じて一部がまとめて支給されます。

支給条件が多いため、条件を満たしているかしっかり確認してから申請しましょう。

申請には、就職報告・申請書の提出・勤務確認といった手続きが必要で、支給までにはおおむね1〜2か月かかります。

なお、再就職手当と失業手当を同時に受け取ることはできませんので、注意しましょう。

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