タイムカード打刻後に残業を要求するのは違法です。本来であれば残業代が発生するのですが、ブラック企業ではサービス残業で働かせることがあります。タイムカード打刻後であっても、労働していたことを証明できる証拠があれば残業代を請求することが可能です。
本記事では、タイムカード打刻後に残業を要求されたときの対処法について解説します。違法性についてや、タイムカード打刻後に残業するデメリットなども解説していますので、参考にしてください。
・タイムカード打刻後に残業するのは違法(サービス残業は違法)
・タイムカード打刻後に残業を要求されたときの対処法は、断る・残業代を請求する・早く帰るなど
・タイムカード打刻後の残業については、労働基準監督署や弁護士に相談し、転職や退職も視野に入れる
・タイムカード打刻後に残業するデメリットは、残業代が発生しない・労災が下りない・過労死につながる
目次
タイムカード打刻後の残業は違法です
タイムカード打刻後に残業を要求することは違法です。以下の2つについて見ていきましょう。
- タイムカード打刻後の残業はサービス残業になる
- サービス残業させた会社への罰則
タイムカード打刻後の残業はサービス残業になる
タイムカード打刻後の残業は、いわゆるサービス残業になります。賃金が発生しないタダ働きです。もちろんサービス残業は違法です。労働基準法第37条では、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超えて労働させる場合には、残業代(割増賃金)を支払わなければならないことが定められています。
つまり、タイムカード打刻後の残業は労働基準法第37条に違反するため、違法です。
サービス残業させた会社への罰則
タイムカード打刻後に残業させ、残業代を支払わない場合は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(労働基準法119条)。ただし、サービス残業させたからといって、すべて罰則を科されるわけではありません。主に悪質な場合にのみ刑事罰が適応されます。
当事者同士の交渉で未払いの残業代を支払うことにより、解決する場合もあります。労働者がサービス残業について、労働基準監督署に相談していた場合は、会社に対して調査が入ったり、是正勧告されたりするケースが多いです。
タイムカード打刻後に残業を要求されたときの対処法
タイムカード打刻後に残業を要求されたとき、どうすればいいのでしょうか。6つの対処法について解説します。
- サービス残業をきっぱり断る
- サービス残業分の残業代を請求する
- タイムカード打刻後にすぐ帰る
- タイムカードを打刻する前に必要な作業がないか確認する
- 会社の相談窓口に相談する
- 労働基準監督署に相談する
- 退職・転職を検討する
それぞれについて見ていきましょう。
サービス残業をきっぱり断る
タイムカード打刻後に残業を要求されたときは、「タイムカードを打刻したので残業できません」ときっぱり断りましょう。一度容認してしまうと、何度も残業を要求されます。たとえ作業が少なかったとしても、簡単に頷いてはいけません。作業がすぐに終わる予定でも長引くことがあるからです。
タイムカードを打刻したことを伝えると一般的な会社であれば、「タイムカード打刻したなら帰っていいよ」「この作業だけ終わらせたいからあとでタイムカードを修正してほしい」といった対応をされます。
しかし、ブラック企業であれば「定時内に仕事が終わらないのは自分の責任だ」などの理由をつけて、サービス残業を要求するのです。会社が残業代を支払わない場合は、無視して帰っても構いません。違法行為に従わないように気をつけましょう。
サービス残業分の残業代を請求する
タイムカードを打刻後に残業した場合は、タイムカードを修正してサービス残業分の残業代を請求しましょう。会社によって方法は異なりますが、タイムカードの修正用紙などを記入し、事務係に渡しておけば修正してもらえます。各自に修正できる場合は、自分で修正しても構いません。
ブラック企業であれば、タイムカード打刻後の残業代を支払ってもらえないことがあります。後日、未払いの残業代を請求するためには証拠が必要です。例えば、以下のような証拠を集めておきましょう。
- 給与明細
- タイムカードの打刻記録(勤怠管理の記録)
- 仕事で使っているパソコンのログイン履歴
- 会社に設置された防犯カメラの録画
- 上司や取引先に連絡したときにLINEやメール、通話記録
未払いの残業代を請求する方法については、こちら「残業代が計算されない理由は?未払いの残業代を請求する方法を解説 – 退職代行ほっとライン」の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
タイムカード打刻後にすぐ帰る
タイムカード打刻後に残業を要求されないように、すぐに帰ることが大切です。そもそも職場にいなければ、残業を要求されることはありません。タイムカードを打刻したのにだらだらと会社に残っていると、何か作業が発生した時に声をかけられてしまいます。仕事のオン・オフを切り替えることは大切なので、タイムカードを打刻したらすぐに帰りましょう。
ただし、ビジネスマナーとして上司よりも先に帰るときは、「お先に失礼します」など声をかけて帰りましょう。残業を要求されたくないからといって、挨拶もなしに帰るのはマナー違反です。帰宅準備を済ませておけば、上司も残業を要求しづらいものです。それでも心配な人は、タイムカードを打刻する前に必要な作業がないか上司に確認してから帰宅しましょう。
タイムカードを打刻する前に必要な作業がないか確認する
タイムカードを打刻する前に必要な作業がないか確認しておけば、打刻後に残業を要求されることはありません。仮に必要な作業が残っている場合は、そのままタイムカードを打刻せずに働くだけです。
上司も忙しいため、後から「〇〇を忘れていた」といわれることもあります。そのため、自ら必要な作業が残っていないか考えることも大切です。「〇〇は明日でも大丈夫ですか?」「〇〇は今日中に仕上げた方が良いですか?」とこちらから提案するといいでしょう。
会社の相談窓口に相談する
タイムカード打刻後に残業を要求される場合、会社の相談窓口に相談してください。断れば帰れたり、タイムカードの修正ができたりする人は良いですが、上司や会社に問題のある場合は誰かに相談することをおすすめします。この場合は、自分一人の力では対処しきれません。第三者からのアドバイスや手助けを求めましょう。
会社の相談窓口を利用すれば、事実確認を行ったあとに指導などをしてくれる可能性があります。
ただし、会社によってどこまで対応してもらえるか異なります。調査や指導してくれる会社もあれば、相談にしかのってもらえないことも少なくありません。会社の相談窓口では、問題が解決しない場合は社外の相談窓口を利用しましょう。
労働基準監督署に相談する
サービス残業は労働基準法に違反するため、労働基準監督署に相談するのも一つの手です。労働基準監督署に相談すると、実態を知るために会社に調査します。違反行為が見つかれば、会社に対して指導や是正勧告してくれます。これにより会社から未払いの残業代を請求することが可能です。また会社は態度を改め、労働環境が良くなるケースが多くあります。
ただし注意点が2つあります。1つ目は、労働基準監督署の役割は個人の問題を解決してくれないことです。あくまで会社が違反していることを是正することを目的としています。間接的に自分の問題を解決することになりますが、直接的な目的として動くことはありません。
また、労働基準監督署のできる範囲は「行政指導」までです。指導であって強制力はないため、会社が指示に従わなかったとしても処罰を下すことができません。
2つ目は、対応が遅れる可能性があることです。労働基準監督署には、多くの相談が寄せられています。そのため、優先度の高い内容から順に対応してくれます。そのため、あなたが労働基準監督署に相談したからといって、すぐに対応してくれるとは限りません。
なるべく早く対応してもらいたいときは、労働基準法に違反している証拠を提示しましょう。有力な証拠があるほうが、労働基準監督署も動きやすくなります。
退職・転職を検討する
タイムカード打刻後に残業を要求される、未払いの残業代を支払ってもらえないような会社は、労働環境に問題があります。このような会社で働いていても、何かしらトラブルに巻き込まれてしまうためあなたの成長につながりません。労働環境の整った会社に転職することをおすすめします。
労働環境の悪いブラック企業では、退職させてもらえない可能性があります。上司が退職届を受け取ってくれない、退職時に有給休暇が消化できないといった人は、退職代行サービスを利用しましょう。退職代行ほっとラインでは、退職成功率100%です。確実に退職できますので、ぜひご検討ください。
タイムカード打刻後に残業が発生するケースとは?
タイムカード打刻後に残業が発生するケースについて紹介します。
- タイムカード打刻後に思わぬ仕事ができてしまった
- 定時になるとタイムカードの打刻を指示される
- 周りの社員もタイムカード打刻後に残業している
- 仕事量が多くて定時内に終わらない
- タイムカード打刻前にも残業は発生する
それぞれについて見ていきましょう。
タイムカード打刻後に思わぬ仕事ができてしまった
タイムカード打刻後にやり忘れていた仕事があったり、急な仕事が入ったりして残業になるケースがあります。例えば、明日必要な資料が抜けていた、取引先から急に連絡が入ったなどです。急に仕事が入ることは仕方ありません。対応を求められた場合は、指示に従いましょう。
ただし、何度もお伝えしていますが、後ほどタイムカードの打刻修正をして労働時間を記録しておくことが重要です。何もせず働いてしまうとサービス残業になりますので、注意しましょう。
定時になるとタイムカードの打刻を指示される
定時になると強制的にタイムカードを打刻させられる会社もあります。ブラック企業によくあることです。残業代を抑えることを目的に会社独自のルールを設けている場合があります。会社独自のルールや就業規則に記載されていたとしても、優先されるのは法律です。
「うちの会社は定時にタイムカードを打刻するのがルール」「タイムカードを打刻しても仕事が終わるまで帰ってはいけない」などをいわれたとしても、労働基準法違反の可能性が非常に高いため無視してください。
また、タイムカード打刻後に労働指示がなかったとしても、労働者がサービス残業して働いていることを知っている(黙認している)場合でも、未払いの残業代を請求することは可能です。そのため、会社から指示がなく残業する場合は、会社に残業することを伝えてから作業をしましょう。会社が残業することを許可していないのに、残業しても未払いの残業代を請求することはできませんので注意してください。
周りの社員もタイムカード打刻後に残業している
周りの社員がタイムカード打刻後に残業しているから、自分も打刻後に残業するケースがあります。このケースは非常に厄介です。なぜならサービス残業することが当たり前になっているからです。労働者の中には、残業をして働くことを美徳だと感じている人もいます。
このように会社全体でサービス残業が許されている環境や、率先してサービス残業している状況は、サービス残業をなくすどころか、サービス残業を容認する人が増えてしまいます。また、「サービス残業がおかしい」と手を挙げても、周りから協力を得られない可能性が高いです。
手を挙げる人がいなくなれば、「会社とはこういうものなのだ」諦めてしまい、サービス残業が常態化してしまうのです。
仕事量が多くて定時内に終わらない
定時内に仕事が終わらず、残業になってしまうケースがあります。本来であれば、タイムカードを打刻せずに残業するのが一般的です。しかし、会社によっては残業することで評価が下がってしまう場合があります。また、労働時間が長ければ人事生産性が悪くなってしまいます。
役職のある人であれば、人事生産性が悪いと自身の評価が下がってしまうため好ましくありません。そのため、タイムカード打刻後にバレないように残業するのです。
タイムカード打刻前にも残業は発生する
残業といえば、タイムカード打刻後のイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、タイムカード打刻前にも残業は発生します。例えば以下のような場合です。
- タイムカード打刻前に朝礼がある
- 業務の一環として清掃活動がある
- 15分前などに出勤して着替えが必要である
- 早く出勤して資料をまとめる必要がある
- 仕事量が多いため早めに出勤して作業を始めている
着替えはすぐに終わるから。タイムカードを打刻する前に準備するのが当たり前だから、といった理由でタイムカード打刻前の残業を請求しない人は多くいます。中には作業が終わらないから朝早くから仕事する人もいるでしょう。
ただし、朝早くからきて残業するときは注意が必要です。あなたが朝から働いていることを会社が知っていなければ、残業としてみなされません。
労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。つまり、残業していることを会社が知らなければ、指揮命令下ではないため労働時間とみなされないのです。
タイムカード打刻後に残業するデメリット
タイムカード打刻後に残業するデメリットは、3つあります。
- サービス残業は残業代が発生しない
- 労災が下りない場合がある
- 過労死につながる恐れがある
それぞれについて見ていきましょう。
サービス残業は残業代が発生しない
サービス残業の最大のデメリットは、残業代が発生しないことです。つまり、タダ働きです。どれだけ働いても賃金にならないため、モチベーションの低下につながります。モチベーションが低下すれば、仕事のミスが増えたり、作業が遅くなったりなど、仕事に悪影響を及ぼします。
労災が下りない場合がある
タイムカード打刻後に残業したとしても、働いていた証拠がなければ労働時間と認められません。労働時間ではない時間にケガをしたとしても、労災が下りない可能性があります。労働時間外でも通勤時間であれば労災は認められますが、サービス残業の時間は通勤時間でも労働時間でもありません。
労災が下りなければ、治療費は自己負担です。労災から休業補償を受けることもできません。
過労死につながる恐れがある
サービス残業により労働時間が長くなれば、過労死につながる恐れがあります。過労死については、ニュースでもよく報道される内容です。サービス残業を繰り返すと過労死ラインとされている「月80時間」を超えます。心身ともに疲労が溜まり、命にもかかわる問題ですので、サービス残業を容認してはいけません。
サービス残業をしなければならない状況を打開できない場合は、退職を検討してください。サービス残業を容認している会社は、会社側からサービス残業を辞めるようにいうことはありません。自分から行動を起こさなけばサービス残業は終わりません。
タイムカード打刻後の残業に関するよくある質問
タイムカード打刻後の残業に関するよくある質問を見ていきましょう。
- タイムカードで勤怠を記録しないのは違法?
- 未払いの残業代には時効があるの?
- 残業代の正しい計算方法は?
- タイムカード打刻後に残業して違法になった判例はある?
タイムカードで勤怠を記録しないのは違法?
会社がタイムカードで勤怠を記録していなかったとしても違法ではありません。厚生労働省が発表した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によれば、以下のように明記しています。
・ 使用者が、自ら現認することにより確認すること
・ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
つまり会社がタイムカードで勤怠を管理していなかったとしても、客観的に見て労働時間を適正に記録してあれば問題ありません。
未払いの残業代には時効があるの?
未払いの残業代の時効は3年です。3年以内に未払いの残業代を請求しなければ、証拠があったとしても認められません。未払いの残業代がある人は、3年以内に請求しましょう。
残業代の正しい計算方法は?
残業代の計算式は以下の通りです。
残業代=1時間あたりの賃金(基礎賃金÷月平均所定労働時間)×割増率×残業時間
基礎賃金が200,000円、月平均所定労働時間が140時間、残業時間が15時間(深夜残業などは含まない)、割増賃金率が1.25倍だった場合を例に計算してみましょう。
1時間あたりの賃金は、200,000円÷140時間=1,429円
残業代は、1,429円×1.25倍×15時間=26,794円
タイムカード打刻後に残業して違法になった判例はある?
タイムカード打刻後に残業して違法になった判例としては、プロッズ事件(東京地判平24・12・27)があります。プロッズ事件では、タイムカード記録された時間以外にも働いていたとして、女性グラフィックデザイナーが割増賃金を求めた事件です。
この事件では、基本的にタイムカードの記録をもとに労働時間を推定しますが、他により客観的かつ合理的な証拠が存在する場合は、労働時間と認定すると判示しています。この事件では、タイムカードに記録がなかったとしても、以下のように認められています。
- パソコン上にデータが保存されていたことから出勤したと認める
- 最初にデータ保存した時間から2時間前を出勤時間と認める
- 最後に保存したデータの時間やメール送信時刻を退勤時間と認める
このように、タイムカードに記録されていなかったとしても、パソコン上に残されたデータをもとに労働時間と認定されたのです。
まとめ
タイムカード打刻後に残業を要求された場合は、きっぱりと断わるか、残業代を請求しましょう。残業代が発生しないサービス残業は、違法です。タイムカード打刻後に残業を要求されたにもかかわらず、残業代を支払ってもらえないときは、労働基準監督署や弁護士に相談して、未払いの残業代を請求しましょう。
また、残業代を支払わないような会社は労働環境が悪いため、転職をおすすめします。たとえ会社が退職を認めなかったとしても、退職代行サービスを利用すれば、会社と関わることなく退職できます。退職について悩みがある方は、ぜひ退職代行ほっとラインへご相談ください。
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