労働組合にはどんなことまで相談できる?相談事例や流れを解説

「労働問題のことを労働組合に相談できるの?」「労働組合に相談できるのは何?」といった悩みを持っている人は、少なくありません。労働組合とは、労働者が主体となり労働条件の維持・改善を図る組合です。労働者の味方になってくれる存在ではありますが、具体的にどのようなことをしているのか知らない人は多いのではないでしょうか。

本記事では、労働組合とは何か、どのようなことを相談できるのか解説します。相談の手順や相談するメリットなども紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

本記事の結論

・労働組合とは、労働者が主体となって労働条件の維持・改善を図る組合
・労働組合に相談できることは、労働契約・賃金・労働時間・雇用・退職・差別など幅広い
・労働組合に相談すれば、会社に要件定義し、交渉して成立すれば労働協約を結ぶ
・労働組合は誰でも加入しやすく、団体交渉権を使って会社と交渉できる

労働組合とは何?目的や種類

まずは労働組合とは何か、目的や種類など労働組合について見ていきましょう。

  • 労働組合とは?
  • 労働組合の目的と活動
  • 労働組合の種類

労働組合とは?

冒頭でも紹介しましたが、労働組合とは労働者が主体となって労働条件の維持・改善を図る組合です。労働組合法第2条では、労働組合のことを以下のように定義しています。

「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。
引用元;労働組合法 | e-Gov 法令検索

労働組合は複数人集まれば自由に結成できます。また、行政機関の許可や届け出なども必要ありません。令和5年6月30日時点における労働組合数は22,789組合、労働組合員数は993万8,000人です。労働組合数・組合員数のどちらも年々減少しています。

労働組合の目的と活動

労働組合の目的は、労働条件の維持・改善です。その他にも不当解雇やハラスメントの防止など、雇用の安定を図ったり、団体交渉権を利用して会社と交渉したりなども行っています。

個人では立場が弱く会社と交渉できないことがほとんどです。そこで立場の弱い労働者同士で団結し、集団として交渉することで労働条件を有利できるようにします。

労働組合の主な活動は、会社との団体交渉です。労働者が労働組合に相談すると、労働組合が会社に団体交渉を申し入れます。

労働組合の種類

労働組合は大きく分けて5つの組織形態があります。

形態 範囲 対象 強み 弱み
企業別組合 一企業内 企業に属する全労働者 具体的な問題に対応しやすい 企業依存が強くなりやすい
産業別組合 業界全体 同じ産業の労働者 業界全体の影響力が大きい 企業間調整が難しい
職業別組合 職種・専門職 特定の職種や資格を持つ労働者 専門的課題に対応できる 他職種との連帯が弱くなることもある
一般労働組合 全国的 各種労働組合の連合体 政策提言や国際連携が可能 現場感覚が乏しくなることもある
合同労組・ユニオン 特定地域 小規模事業所や非正規労 地域密着型で支援が手厚い 組織規模が小さくなりやすい

日本で一番多く一般的な組合が、企業別組合です。同じ企業に勤務する労働者が集まって結成しています。産業別や職業別などの労働組合もあります。非正規労働者や勤務先に労働組合がない人が加入する組合が、一般労働組合や合同労組・ユニオンです。

基本的には「企業別組合」と「合同労組・ユニオン」に加入している人が多いので、労働組合といえばこの2つをイメージしてもらっても構いません。

労働組合に相談できることは?

労働組合に相談できることはさまざまです。日本労働組合総連合会が発表した「2023年の労働相談報告」を基に詳しく見ていきましょう。なお、ここで紹介する調査結果は、相談件数が一番多い「電話相談」についての結果を紹介しています。

  • 労働組合に相談できること:差別に関する悩みが多い
  • 労働組合に相談する媒体:電話での相談が多い
  • 労働組合に相談する性別・年齢:女性・50代の相談が多い
  • 労働組合に相談する業種:医療・福祉

労働組合に相談できること:差別に関する悩みが多い

労働組合に相談できることを大項目・小項目でわけると以下の通りです。

形態 範囲
労働組合関係 組合結成・組合運営・不当労働行為・労使関係など
労働契約関係 雇用契約・就業規則・雇用形態・配置転換・出向・転籍など
賃金関係 賃金未払い・不払い残業・休日手当・割増賃金未払い・一時金・最低賃金など
労働時間関係 休日・休憩・年次有給休暇など
雇用関係 解雇・退職強要・契約打切・倒産・閉鎖・解雇予告手当・休業補償など
退職関係 定年・退職手続き・再雇用など
保険・税関係 雇用保険・労災保険・健康保険・年金・税金など
安全衛生関係 労働災害・職業病・安全衛生・メンタルヘルスなど
差別関係 男女差別・母性保護(マタハラ)・セクハラ・パワハラ・嫌がらせなど
その他 経営問題・労務管理など

上記を見てわかる通り、さまざまな問題に対して相談ができます。例年、相談内容として多いのが「差別関係」です。2023年では18.7%の人が差別についての相談をしています。差別の中でも多い相談が「パワハラ・いやがらせ(16.8%)」です。

上司からのパワハラや同僚からの嫌がらせなどに、多くの労働者が悩んでいます。基本的に相談内容が多い項目は決まっています。過去5年間で相談内容が多い項目は「パワハラ・嫌がらせ」「雇用契約・就業規則」「解雇・退職強要・契約打切」の3つです。ちなみに差別に関する相談は、2018年以降6年連続で一番多い相談となっています。

労働組合に相談する媒体:電話での相談が多い

労働組合への相談は、電話・メール・LINEの3つです。相談件数が一番多いのは電話で、過去5年間の相談件数は以下の表を参考にしてください。

電話 メール LINE 合計
2023年 15,887件 2,053件 738件 18,678件
2022年 16,738件 2,099件 810件 19,647件
2021年 15,735件 1,566件 306件 17,607件
2020年 18,455件 1,615件 758件 20,828件
2019年 14,252件 694件 314件 15,260件

相談件数は年ごとに異なりますが、例年電話での相談が一番多いです。相談件数が多い月は、6月が一番多く、次いで2月、12月となっています。この3ヶ月は、全国一斉集中相談キャンペーン開催月であり、広報活動に力を入れているため相談件数が多くなっています。

電話相談が多い理由としては、すぐに対応してもらえるからです。メールやLINEは返答までに時間がかかり、相談解決までの期間が長くなってしまいます。

労働組合に相談する性別・年齢:女性・50代の相談が多い

労働組合に相談する男女比の割合は、「男性:女性=46.1:53.6」です。2023年~2020年の期間は女性からの相談が多くなっています。また、一番相談件数の多い年齢は、50代(29.6%)です。次いで、40代(25.3%)・30代(16.7%)・60代(13.5%)となっています。

40代以上の割合が7割を超えており、若年層からの相談は多くありません。これまでの結果を踏まえると、比較的高い年齢層(40~50代)でパワハラ・いやがらせなどの相談が多いことがわかります。

労働組合に相談する業種:医療・福祉

労働組合に相談する業種で最も多いのは、「医療・福祉関係(21.7%)」です。こちらも過去5年間の数値をまとめました。

1位 2位 3位 4位 5位
2023年 医療・福祉 サービス業 製造業 棚卸・小売業 運輸業
2022年 医療・福祉 サービス業 製造業 棚卸・小売業 運輸業
2021年 医療・福祉 サービス業 製造業 棚卸・小売業 運輸業
2020年 サービス業 医療・福祉 製造業 棚卸・小売業 飲食店・宿泊業
2019年 医療・福祉 サービス業 製造業 棚卸・小売業 運輸業

例年、相談の多い業種は「医療・福祉」「サービス業」「製造業」の3つです。基本的に毎年相談の多い業種は決まっています。

労働組合に相談する手順

労働組合に相談する手順は、以下の通りです。

  • 1.労働組合に相談する
  • 2.相談内容に応じて会社と交渉する
  • 3.交渉成立すれば労働協約を作成する

1.労働組合に相談する

労働組合に相談する方法は、電話・メール・LINEの3つです。先ほど紹介した通り、さまざまな問題について相談できます。労働組合に相談すると、相談内容をまとめて「要求事項」という形で会社に提出します。いわゆる団体交渉の申し入れです。

2.相談内容に応じて会社と交渉する

会社は労働組合の団体交渉に応じることが義務付けられていますので、交渉の場が設けられます。団体交渉は書面で申し入れますが、交渉は対面です。一般的には、相談者も交渉の場に出席します。

会社は労働組合が提出した要求事項について回答しなければなりません。また、ただ回答するだけでなく、根拠や適切に交渉することが義務付けられています(誠実交渉義務)。誠実交渉義務があるため、会社は容易に交渉を打ち切ることができません。しっかりと説明責任を果たさなければいけないのです。

3.交渉成立すれば労働協約を作成する

交渉が成立すればその内容を書面に記した「労働協約」を作成します。労働協約は、会社と労働組合が署名しますが、場合によっては相談者も署名することがあります。なお、労働組合法第16条によって、会社は労働協約に反する行為はできません。そのため、労働協約を締結できれば、労働問題が解決したといえます。

労働組合の相談事例

実際にどのようなことが労働組合に相談されるのか、相談事例を見ていきましょう。相談項目として多い「パワハラ・嫌がらせ」「雇用契約・就業規則」「解雇・退職強要・契約打切」についていくつか紹介します。

  • パワハラ・嫌がらせに関する相談事例
  • 雇用契約・就業規則に関する相談事例
  • 解雇・退職強要・契約打切に関する相談事例

パワハラ・嫌がらせに関する相談事例

パワハラ・嫌がらせに関する相談事例は、以下の通りです。

  • 他の同僚に比べて自分だけだひどく叱られる・怒鳴られる
  • 職場の宴会で上司がしつこく隣に座ってくる
  • ベテラン社員から「仕事が遅い」「のろま」「要領が悪いなど」仲間外れにされる
  • 上司からの暴言がひどくうつ病のような症状が発生してしまった

パワハラ・嫌がらせに関する相談の多くは、上司からの被害です。とくに暴言に関する相談が多く見受けられました。パワハラ以外にもセクハラやモラハラなど、ハラスメントに関する相談は多くあります。

雇用契約・就業規則に関する相談事例

雇用契約・就業規則に関する相談事例は、以下の通りです。

  • 社長面談で採用され労働条件は口約束で書面を交わしていない。従業員も10人未満の小さい会社で就業規則も作られていない。労働時間や休日など労働条件が何に基づいて決められているのかわからない。
  • 経営状況が悪化したため、賃金を10%カットしたいと施設長から言われた。仕方ないことのか知りたい。
  • 従業員15人程度の小さい会社で遅刻の多い同僚が懲戒処分を受けた。就業規則が開示されていないため、社長に聞くと金庫にしまってあるため見せられないと断られた。どう対応すればいいのか知りたい。

雇用契約・就業規則に関する相談で多いのは、会社の理不尽な要求です。上記のように急に賃金をカットしたい、就業規則が開示されていないのに懲戒処分を科すなどです。とくに規模の小さい会社では、就業規則が作られていないまたは、開示されておらず従業員が認知していないなどあります。

解雇・退職強要・契約打切に関する相談事例

解雇・退職強要・契約打切に関する相談事例は、以下の通りです。

  • 業績不振のため解雇を言い渡されたのに、離職票を見ると自己都合になっている。
  • 会社を務めて5カ月目の4月20日に突然、解雇通達を受けた。4月末で解雇といわれたが解雇予告手当はもらえるのか。
  • 突然社長から経営不振のため退職してもらえないかと退職勧奨された。どう対応すればいいかわかりません。
  • 就業規則に退職願を提出し、承諾を得られなければ辞められないと記載されているが、承諾を得られないと辞められないのか。
  • 退職時に「退職時機密事項誓約書」の提出を求められた。競合会社に5年間就職しないことと記載されているがサインしなければならないのか。

解雇・退職強要・契約打切に関する相談で多いのは、急に解雇宣告されることです。予期せぬ解雇や退職勧奨を迫られると、どう対応すればいいかわからず相談する人が多くいます。

労働組合に相談するメリット

労働組合に相談するメリットは、以下の通りです。

  • 労働組合の団体交渉権によって会社と交渉できる
  • 相談できる内容が幅広い
  • 基本的に誰でも入れる

それぞれについて見ていきましょう。

労働組合の団体交渉権によって会社と交渉できる

個人的に会社に交渉しても、要求を受け入れてもらえないケースが多くあります。しかし、労働組合には団体交渉権があります。労働組合法第7条により、会社は労働組合から団体交渉の申し入れがあった場合、原則断れません。そのため、労働組合に相談すれば、会社と交渉できる機会が生まれます。

また、先に説明した通り、誠実交渉義務がありますので、交渉を簡単に打ち切ることもできません。

相談できる内容が幅広い

労働組合に相談できる内容は幅広くあります。例えば、労働契約・賃金・労働時間・解雇・退職・差別などです。ほとんどのケースに対応しているので、相談内容に応じて窓口を変える必要がありません。

基本的に誰でも入れる

労働組合は、比較的誰でも加入できます。労働組合によっては加入条件があります。例えば、企業別組合の場合は、その企業に勤めていることが条件です。また、非正規労働者は加入できない場合があります。

しかし、合同労組・ユニオンであれば非正規労働者でも加入できます。つまり、1つの労働組合に加入できなかったとしても、最終的にはどこかの労働組合に加入することが可能です。

ただし、多くの労働組合では組合費が発生しますので、注意しましょう。組合費については、後ほど詳しく紹介します。

労働組合への相談に関するよくある質問

労働組合への相談に関するよくある質問を見ていきましょう。

  • 労働組合の春闘って何?
  • 労働組合は土日も相談できますか?
  • 労働組合にパワハラ・退職に関する相談はできますか?
  • 労働組合法と労働三権とは何ですか?
  • 労働組合以外に相談窓口がありますか?
  • 労働組合に加入するには組合費が必要ですか?

労働組合の春闘って何?

春闘(春季生活闘争)とは、新年度に向けて労働組合が会社に労働条件について交渉し、決定することです。2月頃に労働組合が会社へ要件定義し、3月頃に会社から回答が得られるため「春闘」と呼ばれています。春闘の多くは、月給や賞与など賃金に関するものです。しかし、労働時間の短縮や働きやすい環境づくりなどもテーマとしてあります。

労働組合は土日も相談できますか?

相談できる曜日や時間帯は、各労働組合によって異なります。土日に相談できる労働組合があれば、できない場合もあるので注意しましょう。相談できる時間帯については、相談先の労働組合のホームページを確認してください。

労働組合にパワハラ・退職に関する相談はできますか?

労働組合にパワハラ・退職に関する相談することは可能です。パワハラや退職以外にも、労働契約・賃金・労働時間・解雇・差別など、幅広く相談できます。

労働組合法と労働三権とは何ですか?

労働組合法とは、労働組合の権利や活動を保障し、その運営に関する基本的なルールを定めた法律です。労働組合法は、以下の権利を労働者に保障します。

  • 団結権:労働者が労働組合を結成・加入する権利。
  • 団体交渉権:労働者が使用者と労働条件について交渉する権利。
  • 団体行動権:労働者がストライキなどの行動を取る権利。

上記の3つが労働三権です。

労働組合以外に相談窓口がありますか?

労働組合以外の相談窓口としては、以下の相談窓口がおすすめです。

セクハラに関する相談窓口は、「セクハラの相談先はどこ?12つの無料相談窓口と被害の対策法を紹介 – 退職代行ほっとライン」で詳しく紹介しております。

労働組合に加入するには組合費が必要ですか?

労働組合によって異なりますが、一般的には組合費が必要です。組合費は、労働組合の活動を運営するための資金として用いられます。組合費の金額も労働組合によってまちまちです。給与に連動して月給の1~2%程度を徴収する場合もあれば、毎月定額(例えば1,000円~数千円)を徴収する場合もあります。

まとめ

労働組合に相談できることはさまざまです。例えば、労働契約・賃金・労働時間・解雇・退職・差別などがあります。比較的どのような質問にも対応できるのが特徴です。労働組合に相談すれば、団体交渉権がありますので、会社と交渉できます。悩んでいることがあれば、相談しましょう。

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