少子高齢化が進み、介護を必要とする人は年々増え続けています。その一方で、介護施設の数は十分とはいえず、自宅で親を介護する状況に追い込まれる人も少なくありません。
その結果、親の介護を理由に退職を選ぶケースが増加傾向にあります。しかし、いざ会社に退職の意思を伝えると、「働きながら介護を続けられないか」「部署を変えて対応できないか」と引き止められることも多いのが現実です。
本記事では、退職理由が親の介護は引き止められるのか解説します。また、退職を検討する際の適切な伝え方や、退職前に活用したい介護支援制度についても紹介していますので、参考にしてください。
・親の介護を理由に退職する人の割合は、約27,050人(2023年)
・親の介護を理由に退職する原因は、仕事と介護の両立が難しい、自分しか介護できる人がいない、介護によって体調を悪化したなど
・親の介護を理由に退職するときに引き止められない伝え方は、代替がきかない、勤務継続が難しい、制度を利用しても解決できないことを伝える
・親の介護を理由に退職する前に活用したい介護支援制度は、介護休業・介護休暇・所定外労働の制限・フレックスタイム制など
目次
親の介護を理由に退職する人の割合
厚生労働省の「令和5年 雇用動向調査結果の概要」によれば、介護・看護を理由に退職した人は約27,050人です。割合でいえば0.5%と多くはありません。
転職理由 | 割合 |
---|---|
その他の理由 | 36.7% |
個人的なその他の理由 | 17.3% |
職場の人間関係が悪い | 9.1% |
収入が少ない | 8.2% |
労働条件が悪い | 8.1% |
仕事内容に興味がない | 7.4% |
会社の将来が不安 | 5.2% |
能力・個性・資格を生かせなかった | 5.1% |
介護・看護 | 0.5% |
出産・育児 | 0.3% |
結婚 | 0.3% |
冒頭でも述べましたが、少子高齢化の影響により介護が必要な人は増えています。そのため、親の介護を理由に退職する人は今後も増えると予想されます。
親の介護を理由に退職する原因
親の介護を理由に退職する人はいますが、原因は人それぞれです。しかし、多くの人が仕事と介護の両立が難しいと感じています。ここでは、親の介護を理由に退職する原因について具体的に紹介します。
- 仕事と介護の両立が難しいから
- 親を介護できる人が自分しかいないから
- 親の介護によって体調を悪化したから
- 親の介護に専念したかったから
- 施設へ入所できずに介護の負担が大きくなったから
- 会社の両立支援制度や介護サービスを知らなかったから
参考元:厚生労働省|仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業
仕事と介護の両立が難しいから
厚生労働省の調査によれば、「仕事と介護の両立が難しい」ことを理由に退職する人は59.4%と最も多いです。
親の介護は時間的にも体力的にも大きな負担がかかり、日常生活の細かなサポートから医療対応まで幅広い対応が求められます。
とくに仕事を続けながら介護を行う場合、出勤や残業、急な呼び出しへの対応でスケジュールが圧迫され、心身の疲労が蓄積しやすくなります。
例えば、親の体調が急変したときに勤務先に相談して早退することは可能ですが、業務への支障や他のメンバーへの負担は避けられません。
また、介護と仕事を同時に行うことで、十分な休息が取れず体調を崩してしまう人も少なくありません。そのため、多くの人は両立の困難さから退職を選び、介護に専念せざるを得ない状況に追い込まれるのです。
親を介護できる人が自分しかいないから
親の介護を理由に退職した人のうち、17.6% は「親を介護できる人が自分しかいない」という理由で退職しています。仕事と介護の両立が難しい理由に比べると割合は低いものの、退職理由としては2番目に多い理由です。
兄弟姉妹がいる家庭でも、それぞれが住んでいる地域や仕事の状況によって介護に参加できる人が限られる場合があります。とくに一人っ子の場合は、介護を担当するのが自分しかおらず、負担がすべて自分にのしかかります。
複数人で分担できれば負担は軽くなりますが、自分一人で対応せざるを得ない場合は、退職して介護に専念する選択をせざるを得ないことが多いです。
親の介護によって体調を悪化したから
親の介護を理由に退職した人の中には、自分自身の体調が悪化したために退職を決断したケースも少なくありません。
介護は時間的な拘束だけでなく、身体的な負担や精神的なストレスも大きく、長期間続くと疲労や睡眠不足、腰痛や肩こりなどの身体的不調につながります。
また、親の体調が急変した際の対応や通院の付き添いなど、突然の対応を求められる場面も多く、心身にかかる負担は大きいです。
こうした状況が続くと、仕事のパフォーマンスや集中力にも影響し、体調を崩したまま働き続けることが困難になってしまいます。そのため、自分の体調を回復させるために退職して介護に専念することになるのです。
親の介護に専念したかったから
親の介護を理由に退職する人の中には、仕事を続けながらでは十分な介護ができないため、退職して介護に専念したいと考える人もいます。仕事をしながら介護を行うと、どうしても介護に充てられる時間が限られてしまいます。
その結果、十分なケアができず、親に負担をかけてしまうことも少なくありません。また、親の体調が不安定な場合には、簡易的な介護だけでは対応が難しく、急な変化に対して適切に対応することが遅れてしまうことがあります。
退職して介護に専念することで、親の生活の質を維持しつつ、介護者自身も無理のないペースで対応できます。
施設へ入所できずに介護の負担が大きくなったから
高齢化に伴い、介護施設を利用する人は増えています。しかし、介護施設が不足していることが原因で、希望の施設に入居できないことも少なくありません。
とくに自分の住んでいる地域の周りに施設が少ない場合は、在宅での介護を選ぶしかないケースが増えます。施設と比べると自宅では介護の設備やサポートが十分に整っていないことが多く、長期間の在宅介護は負担が非常に大きくなります。
会社の両立支援制度や介護サービスを知らなかったから
親の介護を理由に退職する人の中には、会社の介護支援制度や利用できる介護サービスがあることを知らない人もいます。
厚生労働省の調査によると、介護のための勤務先の制度を利用しなかったと回答した人が最も多いです。
利用しない背景としては、介護休業制度などの両立支援制度が整備されていなかったり、会社が介護者を支援する体制が不十分であることです。その結果、介護者は制度を十分に活用できず、退職に追い込まれてしまうこともあります。
制度を活用するためには、会社側からの働きかけも大切ですが、介護者自身も介護負担を減らすための制度や地域の相談窓口があることを事前に把握しておくことが重要です。
退職理由が親の介護だと引き止められるのか
親の介護を理由に退職を申し出ると、企業によって対応は異なります。介護は家庭の事情として重要視される一方で、業務への影響や人材確保の観点から、企業側が引き止めるケースもあります。
会社が退職者を引き止めるケースと引き止めないケースを詳しく見ていきましょう。
- 会社が引き止めるケース
- 会社が引き止めないケース
会社が引き止めるケース
引き止められやすいケースは、以下の通りです。
- 職場で重要なポジションに就いている
- 専門的なスキルを持っている
- 引き継ぎが難しい業務を担当している
- 人手不足で退職すると業務に大きな支障が出る
- 退職時期が繁忙期やプロジェクトの最中である
- 会社が柔軟な勤務形態や介護制度を提示してくれる余地がある
企業が引き止める場合は、社員が会社にとって必要不可欠と判断されるケースが多いです。
とくに、専門的なスキルや知識を持っている社員や、重要なプロジェクトに関わっている社員は、退職されると業務に大きな支障が出るため、引き止められる可能性が高くなります。
また、人手不足の部署や繁忙期に退職を申し出る場合も、会社側は代替人材を確保できないことを理由に引き止めを行う可能性が高いです。
さらに、会社が介護休業制度や時短勤務などの両立支援制度を提示できる場合、制度を利用して働き続ける選択肢を示すことで退職を思いとどまらせるケースもあります。
引き止められやすい人の特徴を以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
関連記事:退職を引き止められる人の特徴とは?引き止められた際の上手な断り方を解説します
会社が引き止めないケース
- 退職する意思が揺るがない
- 仕事と介護の両立が難しいことがしっかり伝わっている
- 業務の引き継ぎが容易で代替人材が確保できる
- 人手が十分にあり、退職による業務への影響が少ない
- 社員の家庭事情を尊重する社風や制度が整っている
- 退職時期が繁忙期以外で柔軟に対応できる
企業が引き止めない場合は、社員の退職が業務に大きな影響を与えないと判断されるケースが多くあります。
たとえば、業務の引き継ぎが簡単で代替人材がすぐに確保できる場合や、特定のスキルが必須でない業務に従事している場合は、退職を受け入れやすいです。
また、社員の家庭事情を尊重する社風や介護支援制度が整っている企業では、退職の意志を尊重する傾向があります。
親の介護を理由に退職するときに引き止められない伝え方
親の介護を理由に退職する際、企業から引き止められる可能性があります。しかし、伝え方を工夫することで、退職の意思を尊重してもらいやすくなります。
重要なのは、介護の必要性や自身の状況を具体的かつ誠実に伝えることです。ここでは、退職理由を明確にしつつ、会社に納得してもらいやすい伝え方のポイントを紹介します。
- 介護の必要性が高く、代替がきかないことを明確に伝える
- 勤務継続が難しい具体的な理由を示す
- 制度を利用しても解決できない旨を事前に整理して伝える
- 今後も介護の負担が増える見込みであることを説明する
介護の必要性が高く、代替がきかないことを明確に伝える
退職を申し出る際は、自分しか介護できない状況であることを会社に明確に伝えることが大切です。介護の必要性や状況を具体的に説明することで、会社側も退職の不可避性を理解しやすくなります。
曖昧な表現では引き止められる可能性が高くなるため、誰がどのように介護しているか、また代替手段がないことを正確に伝えることがポイントです。例えば以下のように伝えるといいでしょう。
「私の親は介護が必要な状態で、同居している私以外に介護できる家族がいません。介護施設もすぐに利用できず、今後も私が介護を担当する必要があります。そのため、仕事を続けることが難しい状況です。」
勤務継続が難しい具体的な理由を示す
退職を伝える際には、なぜ現在の勤務を続けることが困難なのかを具体的に示すことが重要です。単に「介護のため」とだけ言うよりも、具体的なスケジュールや負担の内容を説明することで、会社も納得しやすくなります。
例えば、通院の付き添いや介護時間が勤務時間と重なっていること、残業や繁忙期に対応できないことなど、実際の状況を明確に伝えるのがポイントです。例えば以下のように伝えるといいでしょう。
「親の通院や日常生活の介助が、平日の日中に必要で、勤務時間内に対応することができません。また、残業や突発的な対応も困難な状況です。現状では仕事と介護を両立させることが非常に難しいため、退職をお願いしたいと考えています。
」
制度を利用しても解決できない旨を事前に整理して伝える
会社の介護休業制度や時短勤務などの制度を利用しても介護と仕事の両立が難しい場合は、その理由を整理して伝えることが大切です。
制度があることを前提に話すことで、会社側も制度を検討した上での退職したいという理解が得られ、無用な引き止めを避けやすくなります。
具体的には、利用できる制度を確認したうえで、どの制度では対応できないかを明確にし、今後の介護負担や対応時間を示すと説得力が増します。例えば以下のように伝えるといいでしょう。
「会社の介護休業制度や時短勤務について確認しましたが、親の介護には平日の日中や夜間の対応も必要で、制度を利用しても十分に対応できません。制度を検討しましたが、現状では退職して介護に専念する以外に選択肢がない状況です。
」
今後も介護の負担が増える見込みであることを説明する
退職を申し出る際には、今後も介護の負担が増える見込みであることを会社に説明することが効果的です。
親の健康状態や介護の必要度は時間とともに変化するため、現状だけでなく今後の介護計画やリスクも含めて伝えると、退職の不可避性が理解されやすくなります。
例えば、介護施設への入所が難しい場合や、介護の必要度が今後さらに高まることが予想される場合は、具体的に説明することで会社側も納得しやすくなります。例えば以下のように伝えるといいでしょう。
「現在は日常生活の介助が中心ですが、親の健康状態が不安定なため、今後は通院や介護対応の時間がさらに増える見込みです。今後の負担を考えると、仕事を続けながら十分な介護を行うことは難しい状況です。そのため、退職して介護に専念したいと考えています。
」
親の介護を理由に退職したいと伝えると引き止められた場合の対処法
親の介護を理由に退職を申し出たとき、会社から強く引き止められることがあります。引き止められた場合の対処法を紹介します。
- 退職の意思を明確にする
- 感情的にならず冷静に対応する
- 引き止めがしつこい場合は労働基準監督署に相談する
- 退職代行サービスを利用する
退職の意思を明確にする
引き止められた場合でも、まずは退職の意思をはっきりと伝えることが重要です。
会社側は「制度を活用してはどうか」「定時退社できるように調整する」といった条件を提示して、退職を思いとどまらせようとすることが多いです。
ここで気持ちが揺らいでしまうと、まだ考え直す余地があると受け取られ、話し合いが長引く原因になります。退職の意思を強く示すためには、退職届を提出するといった行動を取るのも効果的です。
関連記事:退職届を出すタイミングはいつ?書き方や出し方、提出時期を徹底解説します
感情的にならず冷静に対応する
引き止められた際には、感情的にならず冷静に対応する姿勢が大切です。引き止め方は会社によって異なりますが、中には罵倒されたり、強い言葉で引き止められるケースもあります。
とくにブラック企業の場合、「辞めるなんて根性がない」「他の従業員に迷惑がかかるから辞めるな」といった言葉を投げかけられることも少なくありません。
ここで強い口調で反論したり、感情的な言葉を使ったりすると、話し合いがこじれてしまう恐れがあります。相手の土俵に立たず、自分と家族の生活を守るために淡々と退職の意思を伝えることが、冷静な対応のポイントです。
引き止めがしつこい場合は労働基準監督署に相談する
退職は労働者の権利であり、会社がその意思を妨げることはできません。それにもかかわらず、引き止めが執拗だったり、退職届を受け取らなかったりする場合は、労働基準監督署に相談することが有効です。ここまで事態がこじれてしまうと、自分一人の力では解決しにくいでしょう。
労働基準監督署は、労働者の権利を守るための公的機関です。相談することで、会社とのやり取りをどう進めるべきかのアドバイスを受けられるほか、場合によっては会社への指導が入ることもあります。
ただし、労働基準監督署への相談が多いため小さい案件は後回しにされる可能性があります。そのため、違反行為と思われる発言や対応は、録音や書面で証拠を残しておくと動いてもらいやすいです。
退職代行サービスを利用する
引き止めがしつこい場合は、退職代行サービスを利用するのがおすすめです。退職代行サービスは、労働者に代わって会社へ退職の意思を伝え、手続きを進めてくれるサービスです。
会社と直接やり取りをせずに退職できるため、精神的な負担を大きく軽減できます。退職代行には一般業者・労働組合・弁護士の3種類があり、対応できる範囲やサポート内容が異なります。
トラブルを避けるためにも、事前に対応範囲や料金をしっかり確認し、自分の状況に合ったサービスを選ぶことが大切です。
退職に関する悩みがある人は、退職代行ほっとラインへご相談ください。
関連記事:退職代行でよくあるトラブル事例15選!リスクを避けて確実に辞めるにはどうしたらいい?
親の介護を理由に退職するメリット・デメリット
親の介護を理由に退職することには、メリットとデメリットの両面があります。介護に専念できる安心感が得られる一方で、収入がなくなることによる生活への影響や、再就職が難しくなるリスクも避けられません。
ここでは、退職によるメリットとデメリットを紹介します。
- 親の介護を理由に退職するメリット
- 親の介護を理由に退職するデメリット
親の介護を理由に退職するメリット
- 介護に十分な時間を確保できる
- 親の体調変化や緊急時にすぐ対応できる
- 親との時間を多く過ごせる
- 介護によるストレスを家族で分担しやすくなる
親の介護に専念できることで、仕事をしながらでは難しい細やかなケアや突発的な対応が可能です。
とくに、親の病状が不安定な場合や、在宅介護が中心の場合には大きな安心感を得られます。また、親との時間を大切にできるのも退職の大きなメリットです。仕事と介護の両立による心身の疲労が軽減され、家族全体で介護に向き合いやすくなる点も見逃せません。
親の介護を理由に退職するデメリット
- 収入が途絶えることで生活への影響が出る
- 社会保険や年金などの手続きに影響が出る場合がある
- 再就職が難しくなる可能性がある
- キャリアやスキルの継続が難しくなる
退職すると収入がなくなるため、生活費や将来の貯蓄に影響が出る可能性が高いです。また、健康保険や年金などの社会保険の手続きも必要となる場合があります。
長期間仕事を離れることで、再就職が難しくなったり、キャリアやスキルの維持が難しくなることもデメリットです。
とくに介護期間が長引く場合は、退職による影響を十分に考え、生活計画や再就職の見通しも踏まえて判断することが重要です。
親の介護を理由に退職する前に活用したい介護支援制度
親の介護を理由に退職を検討する前に、勤務先で利用できる介護支援制度を確認することが大切です。これらの制度を活用することで、仕事を続けながら介護に対応できる場合があります。
- 介護休業制度
- 介護休暇制度
- 所定外労働の制限(残業免除)
- 短時間勤務制度(短時間勤務等の措置)
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
介護休業制度
介護休業制度とは、従業員が家族の介護を理由に、一定期間仕事を休める制度です。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業可能。連続でも分割でも取得できる |
対象者 | 介護が必要な家族(配偶者、父母、子、祖父母、孫など)がいること |
条件 | 勤続年数1年以上、本人が介護担当であること |
申請方法 | 休業開始予定日の2週間前までに必要書類を会社に提出すること |
介護休業制度を利用した場合、給料は発生しません。ただし、休業期間中に社会保険や雇用保険の給付が受けられる場合もあり、経済的な負担をある程度軽減できます。
休業扱いになるため、主に長期間の在宅介護が必要な場合に役立ちます。
介護休暇制度
介護休暇制度とは、従業員が家族の介護のために、短期間・有給または無給で仕事を休むことができる制度です。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 年に5日まで、1日または半日単位で取得できる |
対象者 | 介護が必要な家族(配偶者、父母、子など) |
条件 | 勤続年数に応じた会社規定に準拠 |
申請方法 | 事前に上司や人事部に申請。必要に応じて介護対象者の状況を示す書類を提出(口頭でも可能) |
介護休暇制度を利用することで、急な介護や通院への付き添いなどに柔軟に対応できます。短期間で取得できるため、長期休業の必要がない場合でも、仕事を続けながら介護に対応できる点が大きなメリットです。
介護休暇の場合、有給か無給かは会社の判断になります。そのため、会社次第では経済的な負担が軽減されるでしょう。労働基準法の年次有給休暇とは扱いが別になるので、有給休暇がない人でも取得できます。
所定外労働の制限(残業免除)
所定外労働の制限とは、介護を理由に、残業を免除してもらえる制度です。介護と仕事を両立させるために、時間外労働を制限できる点が特徴です。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 所定労働時間を超える残業を免除できる制度。残業を断っても不利益な扱いを受けない |
対象者 | 介護が必要な家族を持つ従業員 |
条件 | 事前申請を行い、介護の必要性が認められていること |
申請方法 | 開始予定日の1か月前まで所定の書類を会社に提出し、残業免除の希望期間を明記する |
所定外労働の制限は、回数が決まっていませんので何回でも利用できます。ただし、必ずしも許可されるわけではなく、事業の正常な運営を妨げる場合は労働者の申請を拒否することが可能です。
短時間勤務制度(短時間勤務等の措置)
短時間勤務制度とは、介護を理由に通常より短い勤務時間で働ける制度です。介護時間を確保しながら、収入やキャリアを維持しやすい点が特徴です。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 1日の勤務時間を6時間など短縮できる |
対象者 | 介護を必要とする家族を持つ従業員 |
条件 | 事前に会社へ申請し、介護の必要性が確認されること |
申請方法 | 所定の書類を提出し、勤務時間の短縮希望を申請する |
この制度を使えば、フルタイム勤務の負担を減らしながら働き続けられる点が大きなメリットです。介護に合わせたスケジュールを組めるため、心身への負担を軽減できます。
ただし、勤務時間が減る分、給与が減る場合があるため、生活設計とあわせて利用を検討する必要があります。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度とは、出社や退社の時間を柔軟に調整できる勤務制度です。介護の時間帯に合わせて働き方をカスタマイズできる点が特徴です。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 1日の始業・終業時間を従業員が調整できる制度 |
対象者 | 基本的に全従業員(会社の規定による) |
条件 | 会社がフレックスタイム制度を導入していることが前提 |
申請方法 | 上司・人事部に利用を申請し、勤務スケジュールを調整する |
フレックスタイム制を利用するには、会社が導入していなければなりません。また会社によって、対象者となる範囲が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
フレックスタイム制を利用できれば、親の通院や訪問介護の時間に合わせて働けるため、介護と仕事の両立がしやすくなります。
時差出勤制度
時差出勤制度とは、出勤・退勤時間をずらして働ける制度です。介護の時間帯に合わせて勤務時間を調整できるため、介護と仕事の両立をしやすくする仕組みです。概要を以下の表にまとめました。
内容 | 通常の始業・終業時間を前後にずらして勤務できる制度 |
対象者 | 本的に全従業員(会社の規定による) |
条件 | 会社が時差出勤制度を導入していることが前提 |
申請方法 | 所定の書類を提出し、希望する勤務時間を申請する |
時差出勤制度を活用すれば、朝の介護を終えてから出勤したり、夕方早めに帰宅して介護にあたるといった柔軟な対応が可能です。
収入を維持しながら介護の負担を軽減できる点がメリットですが、制度を導入していない企業もあるため、事前に確認が必要です。
まとめ
退職理由が親の介護であっても、会社から引き止められる可能性は高いです。そのため、退職意思を固めて退職の必要性を冷静に伝えましょう。
また、退職する前には介護休業制度や短時間勤務制度、残業免除などの両立支援制度を活用できないか確認することが大切です。
会社によっては強い引き止めにあうこともあります。その場合は、退職代行サービスを利用しましょう。退職代行サービスを利用すれば、会社と直接連絡を取らずに退職できるため、引き止めに合うことはありません。
退職に関する悩みや不安がある人は、ぜひ退職代行ほっとラインまでご相談ください。
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