就業規則を見せてもらえないのは違法!対処法や会社の義務を解説

就業規則は、会社と従業員の労働条件や職場ルールを定めた重要な文書です。本来、従業員は就業規則の内容を自由に確認できる権利があります。

しかし、「就業規則を見せてもらえない」「存在すら知らされていない」といったケースも少なくありません。

本記事では、本記事では、就業規則の閲覧義務や会社側の責任、見せてもらえないときの具体的な対処法をわかりやすく解説します。

ブラック企業の見分け方も紹介するので、トラブルを防ぐための参考にしてください。

本記事の結論

・就業規則を見せてもらえないのは、労働基準法第106条に違反する
・就業規則を作成する義務、労働基準監督署に届け出る義務、労働者に周知する義務、意見聴取する義務などがある
・就業規則を見せてもらえない理由は、管理体制が整っていない、存在しない、従業員からの権利行使に使われたくないなど
・就業規則を見せてもらえないときの対処法は、就業規則を見せるように要求する、人事・総務に確認する、労働基準監督署や弁護士に相談する

目次

就業規則を見せてもらえないのは違法

結論から言うと、会社が就業規則を従業員に見せないのは違法です。

労働基準法第106条では、「各作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける、もしくは書面を交付することで労働者に周知させなければならない」と定められています。

つまり、口頭で説明するだけでは不十分で、誰でも自由に確認できる状態でなければなりません。

実際に厚生労働省も、就業規則は労働者がいつでも閲覧できるようにしておく必要があると公式に示しています。

この規定に反して就業規則を非公開にしている場合、労働基準監督署から指導や是正勧告を受ける可能性があります。ただし、常時10人未満の事業場には就業規則を作成する義務がありません。

そのため、従業員数が少ない会社で「就業規則を見せられない」と言われた場合でも、そもそも作成義務がないケースであれば違法には当たりません。

就業規則に関する主な6つの義務

就業規則に関して、会社が守らなければならない6つの義務があります。それぞれについて具体的に紹介します。

  • 就業規則を作成する義務
  • 就業規則を労働基準監督署に届け出る義務
  • 就業規則を労働者に周知する義務
  • 就業規則を変更する際の意見聴取する義務
  • パート・契約社員にも適用範囲を明示する義務
  • 労働者に不利益な変更は原則できない

就業規則を作成する義務

労働基準法第89条では、常時10人以上の労働者を使用する事業場に対して、就業規則の作成を義務付けています。ここでいう「常時10人以上の労働者」には複数のルールがあり、たとえば以下の通りです。

  • 正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も含まれる
  • 派遣社員は、派遣元の労働者として扱われるためカウントされない
  • 各事業所単位で10人以上が条件(例:本社7人・支社5人の場合はそれぞれ対象外)
  • 社長や取締役、会長などの経営者は労働者に含まれない

就業規則を作成する義務があるにもかかわらず作成していない場合は、労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

なお、常時10人未満の会社は義務の対象外ですが、トラブル防止や信頼関係の構築のために任意で作成することは可能です。

就業規則を労働基準監督署に届け出る義務

労働基準法第89条では、就業規則を作成した際には所轄の労働基準監督署へ届出を行う義務が定められています。

単に就業規則を作成・提出するだけではなく、労働者の意見を反映させたうえで届け出ることが必要です。

具体的には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見書を添付しなければなりません。

意見書には賛否のどちらを記載しても問題ありませんが、労働者の意見を聞かずに会社独自のルールで作成した就業規則は無効です。

就業規則を労働者に周知する義務

労働基準法第106条では、会社が就業規則を作成・変更した場合には、その内容を労働者に周知することが義務付けられています。

就業規則は、単に作成して労働基準監督署へ提出すれば終わりではありません。従業員が自由に確認できる状態にしてこそ、初めて効力を発揮するものです。

周知の方法としては、以下のような手段が認められています。

  • 事業場の見やすい場所への掲示または備え付け
  • 書面の交付
  • パソコンや社内ネットワークでの閲覧

これらのいずれかの方法で、労働者がいつでも内容を確認できる状態を整えておく必要があります。なお、口頭で伝えるだけ、あるいは一部の社員しか閲覧できない状態では、周知とは認められません。

就業規則を変更する際の意見聴取する義務

就業規則を変更する場合、会社は労働者の意見を聴く義務があります。これは労働基準法第90条で定められており、内容が労働者にとって有利か不利かに関係なく、必ず実施しなければなりません。

就業規則の作成時と同様に、労働者の過半数が加入する労働組合、または労働者の過半数を代表する者の意見が必要です。

実際には、就業規則が古くなった場合に見直すケースもありますが、中には会社が不利な状況を避けるために勝手に内容を変えることもあります。

たとえば、未払いの残業代を請求されたり、懲戒処分を有利に進めたい場合などです。

このようなとき、就業規則が勝手に変更されたかどうかを見極めるには、労働基準監督署で届出済みの就業規則を閲覧しましょう。

労基署には会社が届け出た最新版の就業規則が保管されているため、労働者本人であれば閲覧や写しの交付を求めることが可能です。

パート・契約社員にも適用範囲を明示する義務

前述の通り、常時10人以上の労働者を使用する事業場には就業規則の作成が義務付けられています。この「労働者」には、正社員だけでなくパートタイムや契約社員などの非正規労働者も含まれます。

そのため、パート・契約社員に適用される就業規則が存在しない場合、会社は労働基準法違反です。

就業規則は、正社員用と非正規社員用を分けて作成しても、一つにまとめても問題ありません。

ただし、雇用形態によって有給休暇・賞与・退職金・昇給基準などの取り扱いが異なる場合には、その違いを明確に示すことが必要です。

労働者に不利益な変更は原則できない

就業規則の変更は、労働者にとって不利益となる内容であれば原則として無効です。

労働契約法第9条では、「労働者と合意することなく、就業規則を変更する場合は、労働者の不利益になるような労働条件に変更することはできない」と定められています。

たとえば、賞与の支給条件を厳しくする、退職金の金額を減らす、休憩時間を短縮するといった変更などです。

これらは会社の都合で行うことはできず、労働者の同意なしに一方的に実施すれば無効と判断される可能性があります。

ただし、会社の経営状況や社会的背景から見てやむを得ない事情がある場合や、変更内容を事前に丁寧に説明し、労働者の理解を得る努力をしている場合などには、有効と認められることもあります。

就業規則を見せてもらえない理由

就業規則を見せないのは違反ですが、何かしらの理由で見せてもらえない可能性があります。就業規則を見せてもらえないの理由について解説します。

  • 就業規則の管理体制が整っていない
  • 就業規則が存在していない
  • 就業規則が古くて見せられない
  • 従業員からの権利行使に使われたくない

就業規則の管理体制が整っていない

規模の小さい会社では、人事・総務の専門部署がなく、就業規則の保管や更新を担当する人がいないケースも少なくありません。

その結果、「どこにあるのか分からない」「古いまま放置している」といった状況になり、従業員から閲覧を求められてもすぐに対応できないことがあります。

このような、単なる管理ミスであっても、労働基準法第106条に違反する可能性があります。常時10人以上の労働者を使用する事業場である以上は、就業規則を管理する義務があるのです。

就業規則が存在していない

会社によっては、そもそも就業規則が存在していないケースもあります。

本来、労働基準法第89条では「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に就業規則の作成義務が定められていますが、義務のある会社でも未整備のまま放置していることがあるのです。

とくに規模の小さい会社や家族経営の事業所では、「人数が少ないから必要ない」「昔からの慣習でやっている」といった理由で、就業規則を作らずに運営している場合も見られます。

就業規則が古くて見せられない

会社が就業規則を見せてくれない理由の一つに、内容が古く、現状と合っていないというケースがあります。

たとえば、数年前に作成したまま更新されておらず、現在の労働環境や法改正に対応していない場合です。

近年は、働き方改革関連法や育児・介護休業法の改正などにより、労働条件をめぐるルールが頻繁に変わっています。

にもかかわらず、就業規則を長年更新していない会社では、最新の法令に違反する内容がそのまま残っている可能性もあります。

そのような場合、従業員から就業規則を見せてほしいと言われても、不備を指摘されたくないために開示を避けるのです。

従業員からの権利行使に使われたくない

従業員からの権利行使に使われたくないという理由で、就業規則を見せてもらえないケースは少なくありません。

就業規則には、残業代の支払い基準・有給休暇の取得条件・退職手続きの流れなどが記載されています。

そのため、会社としては内容を知られると自社に不都合が生じる、就業規則を根拠に請求されると対応が面倒になる、といった考えから意図的に開示を避けることがあるのです。

とくに、未払い残業代の請求や不当な減給・懲戒処分が争点となる場合、就業規則の内容が会社側にとって不利な証拠になることがあります。

就業規則を見せてもらえないときの対処法

会社が就業規則を見せてくれない場合でも、労働者には閲覧を求める正当な権利があります。就業規則を見せてもらえないときの対処法について、具体的に紹介します。

  • 勤続年数の長い人に聞いてみる
  • 労働者の権利として就業規則を見せるように要求する
  • 人事・総務などにも確認する
  • 労働基準監督署に相談する
  • 労働組合がある場合は、団体交渉を通じて開示を求める
  • 弁護士に相談する

勤続年数の長い人に聞いてみる

まずは、勤続年数の長い社員に話を聞いてみることから始めましょう。長く勤めている社員であれば、就業規則の内容や過去の変更点、会社の方針などをある程度把握していることが多いです。

とくに、過去に人事・総務、または管理職の立場にいた人であれば、「以前は就業規則を紙で配っていた」「昔は掲示板に貼り出していた」など、情報の入手経路や保管場所のヒントを知っている可能性があります。

また、中には古い就業規則を個人的に保管している社員がいるケースもあり、変更前の内容を確認する手がかりになることもあります。

誰かに聞いて就業規則を見せてもらえれば、会社とのトラブルも避けられるので、最もリスクの少ない初動対応といえるでしょう。

労働者の権利として就業規則を見せるように要求する

労働基準法第106条では、会社に対し「就業規則を常時労働者が閲覧できる状態にしておくこと」が義務付けられています。

そのため、労働者が就業規則を見せてほしいと求める行為は、何ら不当な要求ではありません。

まずは口頭で依頼し、それでも拒否された場合は、メールや書面など記録が残る方法で正式に請求するのが効果的です。要求する際は、感情的にならず、冷静かつ丁寧に伝える姿勢を意識しましょう。

証拠として残しておけば、のちに労働基準監督署や弁護士へ相談する際の有力な資料になります。また、一人で交渉するのが不安な場合は、同僚や信頼できる社員と協力して行動するのも有効です。

複数人での申し出であれば、会社側も軽視しづらく、誠実な対応を取らざるを得ません。

人事・総務などにも確認する

上司に就業規則の閲覧を求めても対応してもらえないときは、人事・総務などの就業規則を管理している部署に直接確認するのが効果的です。

一般的に、労働条件や就業規則の管理・届出は人事・総務部門が担当しています。

問い合わせる際は、角が立たないように、「就業規則を確認したいのですが、どちらで閲覧できますか?」といった形で、丁寧に依頼することがポイントです。

それでも管理部署で対応してもらえない場合や、「見せられない」「場所が分からない」といったあいまいな回答しか得られない場合は、労働基準法第106条に違反している可能性が高いです。

そのようなときは、早めに労働基準監督署へ相談または申告し、指導を受けられるようにしましょう。

労働基準監督署に相談する

会社が就業規則の閲覧を拒否し続ける場合は、労働基準監督署に相談するのが最も確実な手段です。

労働基準監督署(労基署)は、労働基準法をはじめとする労働関連法令の遵守状況を監督する行政機関で、会社が法律に違反している疑いがある場合に指導や是正勧告を行う権限を持っています。

「会社が就業規則を見せてくれない」「閲覧を求めても拒否された」と伝えれば、担当官が会社側の法令違反の有無を確認し、必要に応じて会社へ是正勧告を出してくれます。

また、就業規則は労基署に届出が義務付けられているため、労基署で会社の届け出済み就業規則を閲覧することも可能です。

労働組合がある場合は、団体交渉を通じて開示を求める

会社に労働組合がある場合は、団体交渉を通じて就業規則の開示を求める方法も有効です。

労働組合法第2条および第7条では、労働者が労働条件の改善や職場環境の整備を目的として団体交渉を行う権利(団結権・団体交渉権)が保障されています。

そのため、会社が就業規則を非公開にしている場合でも、労働組合を通じて正式に開示を要求することが可能です。

団体交渉では、就業規則の閲覧だけでなく、内容の説明や変更理由の開示を求めることもできます。

労働組合を介して申し入れることで、個人で交渉するよりも会社が軽視しにくく、法的拘束力のある手続きとして対応を迫ることができるのがメリットです。

もし会社が団体交渉の申し入れを拒否した場合、それ自体が不当労働行為(労働組合法第7条違反)にあたるおそれがあります。

関連記事:労働組合にはどんなことまで相談できる?相談事例や流れを解説

弁護士に相談する

会社に何度申し出ても就業規則を見せてもらえない場合や、労働基準監督署に相談しても改善されない場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。

労働問題に詳しい弁護士であれば、就業規則の非公開が労働基準法違反にあたるかどうかを法的に判断し、必要に応じて会社への請求書面の作成や交渉の代理を行ってくれます。

また、弁護士に依頼することで、会社とのやり取りをすべて任せられるのもメリットの一つです。

費用面が気になる場合は、法テラス(日本司法支援センター)を利用すれば、一定の条件を満たすことで無料相談や費用立替制度を利用できることもあります。

就業規則を見せてもらえない会社はブラック企業?

就業規則を見せてもらえない会社は、ブラック企業である可能性が高いといえます。

法律上、就業規則は従業員がいつでも閲覧できる状態にしておくことが義務付けられているため、合理的な理由なく非公開にしている時点で、法令遵守意識が低い会社と判断できます。

  • 労働時間・残業の管理がずさん
  • 給与・手当の支払い基準があいまい
  • 有給休暇や育休などが取得できない
  • 懲戒や退職などのルールが不透明

労働時間・残業の管理がずさん

就業規則を見せてもらえない会社では、労働時間や残業の管理がずさんな傾向があります。

本来、就業規則には始業・終業時刻、休憩時間、残業命令のルールなどが明記されており、従業員はそれに基づいて働くことになります。

しかし、規則を非公開にしている会社では、その基準自体があいまいで、実際の労働時間が適正に管理されていないケースが多いです。

たとえば、タイムカードを打刻した後も仕事を続けさせる、残業申請を認めないといった行為が行われやすくなります。

また、労働基準法第32条では「1日8時間・1週40時間」を超える労働を原則禁止しており、残業を命じる場合は36協定(時間外・休日労働に関する協定)の締結と届出が必要です。

就業規則を隠すような会社では、このような法的手続きすら適切に行っていないことが多いため注意しましょう。

給与・手当の支払い基準があいまい

就業規則には基本給の計算方法、昇給・賞与の支給基準、通勤手当や住宅手当といった各種手当のルールなどが定められています。

就業規則を見せてくれない会社では、従業員ごとに待遇や支給額に差が生じるおそれがあります。

たとえば、同じ職務内容にもかかわらず「手当がつく人とつかない人がいる」「昇給の基準がわからない」「賞与の支給条件が曖昧」といったケースです。

また、就業規則を非公開にしている会社では、未払い残業代や固定残業代制度の運用にも不備がある場合が少なくありません。

給与に残業代が含まれていると説明しながら、実際には明確な根拠を示さないケースも多く見られます。

有給休暇や育休などが取得できない

就業規則には年次有給休暇の付与日数・取得方法や、育児休業・介護休業の申請手続きなどが明記されており、従業員が自分の権利を把握できるようになっていなければなりません。

しかし、就業規則を非公開にしている会社では、「誰に申請すればいいのか分からない」「取得したら不利益を受けるかもしれない」といった不安を従業員に与え、結果的に権利を行使しづらい雰囲気をつくり出している場合があります。

また、会社側が制度の存在を知られたくないために、意図的に説明を省いたり、「人手が足りない」「今は忙しいから」などの理由で取得を制限するケースも見られます。

懲戒や退職などのルールが不透明

就業規則には、懲戒の種類や処分の手続き、退職・解雇の条件などが明記されており、従業員が不当な処分を受けないよう保護するための仕組みが定められています。

しかし、就業規則を非公開にしている会社では、懲戒処分を恣意的に行ったり、退職手続きを不当に引き延ばすといった不正な対応が行われることがあります。

就業規則を見せてもらえないに関するよくある質問

就業規則を見せてもらえないに関するよくある質問を紹介します。

  • 就業規則が一方的に不利益変更されたときは?
  • 就業規則で定められている内容は?
  • 就業規則は退職後でも見ることは可能?
  • 就業規則のコピーをもらうことは可能?
  • 就業規則を見せてもらえない会社は退職すべき?

就業規則が一方的に不利益変更されたときは?

会社が就業規則を労働者の合意なしに不利益な内容へ変更した場合、その変更は原則として無効になります。

労働契約法第9条では、会社が労働者の不利益となる形で労働条件を変更することを禁じており、労働者の同意を得ずに一方的に改定することはできません。

もし就業規則が一方的に変更された疑いがあるときは、労働基準監督署に届け出された最新版の就業規則を閲覧することで、内容を確認できます。

就業規則で定められている内容は?

就業規則には、会社と従業員の間で守るべき労働条件や職場ルールが定められています。

労働基準法第89条では、就業規則に必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」と、会社が定める場合に記載する「相対的必要記載事項」が規定されています。主な内容は以下の通りです。

【絶対的必要記載事項】

  • 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の有無
  • 賃金(計算・支払方法、締切日・支払日、昇給に関する事項)
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

【相対的必要記載事項】

  • 退職金、賞与、手当などの制度
  • 食費・通勤費などの負担に関すること
  • 安全衛生、職業訓練、災害補償に関する事項
  • 表彰や懲戒に関する事項
  • その他、全労働者に適用する事項

これらの項目は、会社の規模や業種にかかわらず明記しなければならない内容です。

もし就業規則にこれらの項目が欠けている場合や、労働条件が曖昧なままになっている場合は、法令違反の可能性があります。

就業規則は退職後でも見ることは可能?

結論から言うと、退職後に会社へ就業規則の閲覧を請求する権利は原則ありません。

労働基準法第106条で定められている就業規則の周知義務は、在職中の労働者および採用予定者(内定者)を対象としており、すでに退職した元従業員はその範囲に含まれません。

そのため、退職後に「就業規則を見せてほしい」と会社へ請求しても、会社には開示義務がないのが実情です。

ただし、退職金の支給条件や懲戒・解雇の妥当性など、法的な争点が発生している場合には、証拠として就業規則が必要になることがあります。

そのような場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

就業規則のコピーをもらうことは可能?

結論から言うと、会社に就業規則のコピーを請求しても、必ずしも交付してもらえるわけではありません。

労働基準法第106条は「就業規則を労働者がいつでも閲覧できる状態にしておくこと」を義務付けていますが、コピーの交付までは義務付けていません。

つまり、会社には「見せる義務」はありますが、「渡す義務」はないということです。そのため、就業規則の写しを希望する場合は、会社に対して任意で交付をお願いする形になります。

会社がコピーの交付を拒否した場合でも、管轄の労基署で届出済みの就業規則を閲覧・写しの交付を受けることが可能です。

就業規則を見せてもらえない会社は退職すべき?

結論から言うと、就業規則を見せてもらえない会社は早めに退職を検討すべきです。

労働基準法第106条で定められた「就業規則の周知義務」を守っていない会社は、法令遵守意識が低く、労働環境に問題を抱えている可能性が高いといえます。

また、就業規則を非公開にする会社では、未払い残業や不当な減給、パワハラなどのトラブルが起きても、会社の責任をあいまいにして逃れようとする傾向があります。

まとめ

就業規則は、労働条件や職場のルールを定めた労働者の権利を守るための重要な文書です。会社には、労働基準法第106条に基づき、従業員がいつでも閲覧できる状態にしておく義務があります。

そのため、「見せられない」「場所が分からない」といった対応は明確な違法行為にあたる可能性があります。

もし会社が就業規則を見せてくれない場合は、人事・総務部門に確認し、それでも解決しない場合は、労働基準監督署への相談や弁護士・労働組合を通じた交渉を検討しましょう。

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