休職中に「復帰が難しい」「休職中のまま退職したい」と思う人は少なくありません。自分の体調の問題だけでなく、職場に問題がある場合は、転職して職場環境を変えたいと思う人もいるでしょう。
休職中は会社との連絡回数が減っているため、退職の伝え方に注意しなければなりません。伝え方を誤ってしまうと、会社とトラブルになる可能性があります。本記事では、休職中の退職の伝え方を例文で紹介します。また休職中に退職するときの注意点や退職方法も紹介しますので、参考にしてください。
・休職中の退職の伝え方はメールか電話
・休職中は有給消化できない
・休職中は勤務年数に加算されない
休職中の退職の伝え方
まずは休職中の退職の伝え方について解説します。
- 休職中に退職を伝える相手
- 休職中に退職を伝えるタイミング
- 休職中の退職の伝え方はメールor電話
それぞれについて見ていきましょう。
休職中に退職を伝える相手
休職中に退職を伝える相手は、基本的には直属の上司です。普段からお世話になっている上司に、メールか電話で退職意思を伝えましょう。もし、直属の上司が原因で退職を検討している場合は、直属の上司以外の上司でも構いません。
または、人事権のある人に伝えもいいでしょう。人事部や経営者など連絡が取れそうな相手を選択しましょう。
休職中に退職を伝えるタイミング
休職中に退職を伝えるタイミングはいくつかあります。想定されるタイミングをいくつか見ていきましょう。
【休職期間が満了になるタイミング】
休職期間は人により異なりますが、満了となるタイミングで退職を伝えましょう。休職期間が満了になり、復帰が難しい場合は「退職」または「解雇」のどちらかになります。
場合によっては解雇を宣告されるケースがありますが、休職理由によっては不当解雇に当たる場合があります。そのため、解雇を宣告されたときは、解雇内容が合理的であるか確かめましょう。
【復帰ができないとわかったタイミング】
医師の診断結果や自分の体調を考慮し、復帰が難しいと判断したタイミングで退職を伝えましょう。復帰の目途が立たない場合は、休職期間満了を待たずとも退職を伝えてください。会社としても、休養に専念してもらいたいため、退職に応じてもらえます。
【転職先が決まったタイミング】
休職中であっても転職活動は可能です。現職よりも良い条件の転職先が見つかったタイミングで退職を伝えましょう。転職先が見つかったのであれば、休職せずに働いている方がメリットがあります。ただし、自分の体調が優れない場合、しっかり休養しましょう。
【職場環境に問題がある】
長時間残業やハラスメントなど、職場環境に問題がある場合は、タイミングを気にせず退職を伝えましょう。たとえ、体調がよくなったとしても会社の職場環境に問題があれば、また体調を崩してしまう恐れがあります。そのような会社は、すぐに縁を切り新しい転職先を見つけましょう。
休職中の退職の伝え方はメールor電話
本来は対面で退職を伝えるのがマナーです。しかし、休職中は会社に出勤していないため、対面で伝えることが困難です。そのため、退職の伝え方としては、メールか電話で伝えましょう。どちらの手段を用いても構いません。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
【メールで退職を伝えるメリット】
- やりとりが記録として残る
- 考えながら返事ができる
- (会社側が)通常業務をしながら返事しやすい
【メールで退職を伝えるデメリット】
- メールに気がつかない場合がある
- メールアドレスのスペルミスや送信忘れなどの送りミスがある
- 感情が汲み取りにくい
【電話で退職を伝えるメリット】
- 相手も連絡に気づきやすく確実に伝わる
- 声のトーンなどで感情や体調が伝わりやすい
- タイムラグがなくやりとりできる
【電話で退職を伝えるデメリット】
- 応対できる時間の調整が必要
- 相手が目の前にいないため感情的になりやすい
- 会社が原因で退職する場合は、精神的な負担になる
メールでも電話でもどちらでも構いませんので、自分に合った伝え方を選んでください。なお、会社とは連絡を取りたくない場合は、退職代行を利用することも選択肢の1つとして念頭に置いておきましょう。
休職中の退職の伝え方を例文付きで紹介
次は、休職中の退職の伝え方について、例文を交えながら具体的に見ていきましょう。
- 【メール編】休職中の退職の伝え方
- 【電話編】休職中の退職の伝え方
【メール編】休職中の退職の伝え方
お世話になっております。営業部の〇〇(自分の名前)です。休職期間が長くなっておりますが、配慮していただき、誠にありがとうございます。また、職場の皆様からの温かいサポートにも日々感謝しております。
この度、誠に勝手ではございますが、20〇〇年〇〇月〇〇日をもちまして、退職いたします。休職期間をいただいておりましたが、なかなか体調が回復せず、復帰が困難だと判断いたしました。このまま休職していても、職場の皆様に迷惑をおかけすることになるため、退職を決意いたしました。業務の引き継ぎや返却物への対応に関しましても、素早く対応いたします。
〇〇さん(上司の名前)をはじめ職場の皆様には、長い間お世話になりました。心より感謝申し上げます。最後になりましたが、会社の益々のご活躍を心からお祈り申し上げます。
【メールでの伝え方のポイント】
件名は、簡潔に内容がわかるように設定してください。丁寧な言葉遣いとビジネスマナーを意識しながら、言葉を選んでいきましょう。メールだと文章だけになってしまうので、感情面が伝わりにくくなります。そのため、感謝やお詫びの言葉を交えながら、温かみのある文章を目指しましょう。
メールで送信する場合は不要な拡散を避けるためにも、CCやBCCの扱いに注意してください。また全体的な注意点として、誤字脱字がないように送信前には必ずチェックしましょう。
【電話編】休職中の退職の伝え方
〇〇さん(上司の名前)には、多くのご指導をいただき大変感謝しております。しかし、私の退職の意志は強く変わることがありませんので、退職手続きの方よろしくお願いいたします。
【電話での伝え方のポイント】
電話であっても感謝の言葉やお詫びが必要です。電話では上司から引き止めにあう可能性があります。そのため、退職意思が強いことをアピールしましょう。電話をかけるときは、時間帯やタイミングに配慮してください。
忙しい日や時間帯を避けるために、事前にいつ電話するかメールで打ち合わせしておくことが無難です。
休職中に退職する方法・手順
休職中に退職する方法・手順は、以下の通りです。
- 1.退職意思を会社に伝える
- 2.退職届を会社に提出する
- 3.会社からの支給品を返却・私物を郵送してもらう
- 4.退職に伴う必要書類を受け取る
1.退職意思を会社に伝える
自分の体調や会社との関係性などを考慮しながら、復帰できるか見極めましょう。自分一人で考えてもいいですし、家族や友達などに相談してもいいでしょう。復帰が困難だと判断すれば、会社に退職を伝えます。退職の伝え方は先ほど紹介したように、メールや電話で伝えましょう。
退職意思は、法律上2週間前であれば問題ありません。ただし、基本的には会社の就業規則に定められている期間を守ってください。また後日、退職届を郵送にて提出する旨を伝えておきましょう。
2.退職届を会社に提出する
会社に退職意思を伝えた後に退職届を提出します。郵送する場合は、内容証明郵便で送りましょう。万が一トラブルになった場合に、退職届を提出したことが証拠として残ります。また、相手が受け取ったかどうかもわかります。
3.会社からの貸与物を返却・私物を郵送してもらう
本来であれば、出勤時に貸与物の返却や私物を回収しますが、休職中はできません。そのため、会社に私物を郵送してもらいましょう。会社から貸与物は返却する義務があります。そのため、以下のような貸与物は返却してください。
- 健康保険証
- 制服
- 名刺
- 社員証
- パソコン
パソコンやスマホなどを会社から借りていた場合、まとめて郵送しても問題ないか会社に聞いておきましょう。トラブルを避けるためには、普通郵便ではなく一般書留などがおすすめです。また、送り先についても会社に確認しておきましょう。勤務先でいいのか、部署や誰宛てに送るのかなどを確認してください。
4.退職に伴う必要書類を受け取る
退職手続きが完了すると、今後に必要な書類を受け取ります。主に以下のような書類です。
- 離職票(転職する場合は発行されないケースが多い)
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 退職証明書
- 健康保険の資格喪失証明書など
転職するときなどで必要になる書類ですので、必ず大切に保管してください。
休職中に退職するときの注意点
休職中に退職するときの注意点は、以下の通りです。
- 休職中は有給消化できない
- 休職中に退職した場合は失業保険がもらえない場合もある
- 健康保険や国民年金の切り替え手続きが必要
- 休職中は勤務年数に加算されない
- 傷病手当金や休業補償給付を忘れず受け取っておく
それぞれについて見ていきましょう。
休職中は有給消化できない
休職中は有給消化できません。有給休暇は労働義務のある日しか適応されません。休職期間は労働義務を免除されている期間なので、有給消化できないのです。そのため、休職期間に入る前に取得しておきましょう。
もし、休職中に有給消化したい場合は、会社との交渉が必要です。休職中は有給消化できませんが、一度復帰扱いにしてもらえれば、有給消化が可能です。復帰扱いにいしてもらえるかは、会社次第ですので会社に相談しましょう。
休職中に退職した場合は失業保険がもらえない場合もある
休職中の退職には「自己都合退職」と「自然退職」の2種類があります。休職中の退職した場合は、基本的に自己都合退職にあたるため、失業保険がもらえます。
しかし、休職期間満了で退職した場合は、自然退職になる場合がありますので注意しましょう。
自然退職とは、会社や退職者の意思とは関係なく自動的に労働契約が終了することをいいます。休職期間満了後も体調が回復しないことを理由に退職した場合は、失業扱いにならないのです。
失業保険は名前の通り失業した人が対象になるため、自然退職の場合は受け取れません。ただし、自然退職と認められるには就業規則に具体的な条件が書かれている場合のみです。
健康保険や年金の切り替え手続きが必要
前提として転職先が決まっている場合は、各種手続きを転職先でしてもらえますので、切り替え手続きなどをする必要はありません。転職先が決まっていない人は、各種の手続きが必要です。退職後は健康保険が使えません。任意継続するか、国民健康保険に切り替える必要があります。
また年金も同様に手続きが必要です。これまでは厚生年金でしたが、退職後は国民年金への切り替えが必要です。どちらも手続きを放置しておくと、自分に不利益な状態になってしまうので注意しましょう。
休職中は勤続年数に加算されない
休職中は原則、勤続年数に加算されません。例えば入社5年目の人が1年間休職した場合、勤続年数は6年ではなく5年となります。転職するときに履歴書が必要です。履歴書に休職期間を記載するかどうかは自由です。休職期間を書かなかったとしても法律上まったく問題ありません。
企業によっては、休職期間があるとマイナスの印象を持つ場合があります。選考で不利にならないためにも休職期間を隠す人もいます。しかし、休職していたことがバレた場合は、信頼を失う可能性があるので注意しましょう。
傷病手当金や休業補償給付を忘れず受け取っておく
休職期間中は、ほとんどの企業で給料・ボーナスが支給されません。しかし、条件を満たせば「傷病手当金」や「休業補償給付」などが受け取れます。傷病手当金は、仕事中や通勤中以外のときに、ケガや病気をした場合にもらえる手当です。休業補償給付は、仕事中や通勤中にケガや病気をした場合にもらえる手当です。
それぞれについてもらえる条件と金額について見ていきましょう。
【傷病手当金】
【条件】
- 業務外にケガや病気になり、療養を理由に休業すること
- 仕事ができない状態であること
- 3日連続で休んでも回復せず、4日目以降も仕事ができない状態であること(支給対象期間は4日目以降)
- 休職中は給料が発生しないこと
【金額】
(支給開始日より前の12カ月間の各月の標準報酬月額の平均)÷30日×2/3
※最大1年6ヶ月間は支給されます。
参考元:全国健康保険協会
【休業補償給付】
【条件】
- 業務中にケガや病気になり、療養を理由に休業すること
- 仕事ができない状態であること
- 休職中は給料が発生しないこと(支給対象期間は4日目以降)
【金額】
給付基礎日額(平均賃金)×60%+給付基礎日額(平均賃金)×20%
※最大1年6ヶ月間は支給されます。
参考元:厚生労働省
休職中の退職についてよくある質問
休職中の退職についてよくある質問は、以下の通りです。
- 休職中でも退職金を受け取れますか?
- 休職から復帰せずに退職するのは違法ですか?
- 休職中に解雇されることはありますか?
- 休職中に退職しても引き止められる場合がありますか?
それぞれについて見ていきましょう。
休職中でも退職金を受け取れますか?
休職中であっても退職金は受け取れます。ただし、退職金に関しては法律で定められていませんので、会社の就業規則によって異なります。そのため、退職金が受け取れるかどうかは、就業規則を確認しましょう。
休職から復帰せずに退職するのは違法ですか?
休職から復帰せずに退職するのは違法ではありません。休職から復帰・退職・転職するのは自由ですので、自分の体調に合わせて決めましょう。
休職中に解雇されることはありますか?
休職中に退職勧奨や解雇することは可能です。しかし、休職中に解雇されることは、ほとんどケースでありません。なぜなら、しっかりと配慮がなされていない場合は、労働契約法第16条に違反することになるからです。
休職中は心身の疲労により精神的に衰弱している可能性があります。もちろん労働者も好きで休んでいるわけではありません。そのような中で、配慮もなく退職勧奨や解雇すると病状が悪化する場合があります。
その場合、会社は安全配慮義務違反になるため、労働者から損害賠償を請求される可能性があります。
休職中に退職しても引き止められる場合がありますか?
休職中であっても、引き止められる可能性があります。引き止めにあった場合でも、復帰が難しいことを伝えるか、退職意思が強いことをアピールしましょう。
まとめ
休職中の退職の伝え方は、電話またはメールで伝えましょう。もし、体調がよければ直接伝えても構いません。退職を伝えるタイミングとしては、復帰が難しいときや、転職先が決まったタイミングで、退職を伝えましょう。
退職の伝え方に悩んだときは、本記事で例文を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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