業務委託を辞めるときはどういう手順を踏めばいい?辞めるときの注意点をわかりやすく解説

業務委託契約しているフリーランス(個人事業主)の中には、「業務委託契約を途中で辞めたい」「契約を更新したくない」と考えている人もいるのではないでしょうか?業務委託は契約途中でも辞めることが可能です。しかし、リスクが伴うことを忘れてはいけません。

本記事では、業務委託の辞め方と辞め方の注意点について、解説します。また辞めるときのポイントなどについても解説しますので、参考にしてください。

本記事の結論
・業務委託の辞め方は「更新月に辞める」「契約途中で辞める」の2つがある
・業務委託を辞めるときは、雇用契約書を確認し、解約合意書を締結する
・契約を途中で辞めた場合「損害賠償」や「解約金」のリスクがある

業務委託の辞め方は2つ

業務委託の辞め方は以下の2つです。

  • 更新月に辞める
  • 契約途中で辞める

それぞれについて解説します。

更新月に辞める

更新月で辞める場合は、更新手続きを取らなければ自動的に更新が終わります。そのため、契約満了日が近い場合は、その日が来るまで待っておくといいでしょう。ただし、業務委託契約の内容によっては自動で契約が継続する場合もあるので、業務委託契約を確認しましょう。

業務委託契約が自動で継続する場合は、契約が更新する前にクライアントへ連絡しましょう。業務委託契約を辞めたい事情を話せば契約を辞められます。

契約途中で辞める

契約途中で辞める場合はいくつかのパターンが考えられます。例えば、「契約違反がある」「双方の合意がある」「やむを得ない事業がある」などです。それぞれについて解説します。

契約違反があった場合

「報酬が少なすぎる」「契約内容と業務内容が異なる」など、契約違反があった場合、すぐに業務委託契約を解除することが可能です。ただし、契約者が契約違反をした場合も、契約解除の対象となります。またこの場合は、違反内容によって損害賠償などを請求される可能性がありますので、注意しましょう。

双方の合意があった場合

双方に合意がある場合も契約の途中であっても業務委託契約を解除できます。もし何らかの理由で業務委託契約を辞めたくなったときは、クライアントに相談しましょう。理由を説明し、クライアントが合意すれば契約途中でも辞められます。

やむを得ない事業があった場合

急にケガや病気になってしまったり、災害により業務ができなくなってしまったりなど、やむを得ない事業がある場合も業務委託契約を解除できます。この場合も、クライアントに相談してください。クライアントによっては、違約金を請求してくる可能性があります。

しかし、やむを得ない事業がある場合は、民法第415条に以下のように記載されています。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用元:民法 | e-Gov 法令検索

違約金を請求されたとしても必ずしも支払う必要はありません。状況によっては支払う必要がないため、本当に支払う必要があるのか確かめた上で対応しましょう。

業務委託の契約形態と辞めるときのポイント

業務委託契約は、以下の2種類があります。

  • 請負契約
  • 委任契約

契約の種類によって解除のしやすさが異なるため、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

請負契約

請負契約は、クライアントから依頼を受け、成果物を納品することで契約が成立する契約形態です。一般的に、受託者から契約解除を申し出られないため、契約不履行となってしまいます。しかし、クライアントと交渉し、双方合意のもとであれば契約解除が可能です。

クライアント側から請負契約の解除がある場合、受託者が違約金を請求できる可能性があります。例えば、成果物が完成しているにもかかわらず、クライアントが一方的に契約解除した場合、民法第634条において報酬を請求することが可能です。

ただし、契約書の内容や契約解除のタイミングなど、さまざまな要素によって請求できるか変わるため、一概に判断できません。自分で判断が難しい場合は、法律に詳しい弁護士などに相談してみましょう。

委任契約

委任契約は、請負契約とは異なり成果物を納品することを約束されていません。そのため、受託者とクライアントのどちらも、好きなタイミングで契約解除を申し出ることが可能です。ただし、契約解除を申し出るときは、契約書に定めた内容(契約期間など)を考慮し、相手に十分配慮した上で申し出ましょう。

明らかに配慮が欠けている、相手に不利益が生じる、といった場合は、違約金が発生する恐れもあるため注意しましょう。そのため、タイミングによっては無理に契約解除を申し出るのではなく、契約満了日まで待ってから申し出るほうが得策といえるケースもあります。なるべくトラブルが生じないように、立ち回ることを意識しましょう。

業務委託の辞め方(手順)

業務委託の辞め方は、以下の4つの手順です。

  • 手順1:業務委託契約書・自身の契約形態を確認する
  • 手順2:業務委託を辞める理由を考える
  • 手順3:クライアントに相談する
  • 手順4:解約合意書を締結する

それぞれについて解説します。

手順1:業務委託契約書・自身の契約形態を確認する

業務委託を辞めるときは、業務委託契約書・自身の契約形態を確認してください。自分の契約形態によって、解除のしやすさが異なります。上記で説明したように、請負契約であれば、解除に値する明確な理由がなければ契約解除が難しいです。

また契約形態にかかわらず、業務委託契約を解除するときには、契約内容をしっかりと把握しておくことが重要です。業務委託契約書に記載されている詳細条項によって、契約解除の難易度や対応が異なります。

手順2:業務委託を辞める理由を考える

業務委託を辞めるためには、正当な理由が必要です。業務委託を契約途中で辞める場合であっても、正当な理由(やむを得ない理由)があれば、業務委託契約を辞めやすくなります。逆を言えば、正当な理由がなければ、違約金などのリスクがあります。

また業務委託を辞めたいからといって、ウソをついてはいけません。業務委託は、信頼関係で成り立っている契約です。ウソがばれた場合は、今後の仕事に支障をきたします。もちろん、ウソがバレれば損害賠償がさらに増える可能性もありますので、ウソはつかないようにしましょう。

手順3:クライアントに相談する

業務委託契約を辞めるときには、双方の同意が必要なためクライアントとの交渉が必須です。まずはクライアントに誠意を持って業務委託契約を辞めたい理由を伝えましょう。クライアントが快諾してくれれば、問題ありません。しかし、同意が得られない場合は、法的手段も視野に入れておきましょう。

まずはトラブルにならないように、穏便に話を進め、解決に至らない場合は弁護士などに協力を仰ぎましょう。

手順4:解約合意書を締結する

解約合意書は「契約解除を通知したこと」を証明する書類です。契約を解除したい相手に送る書類ですが、受託者、クライアントのどちらが作成しても構いません。解約合意書があれば、解約日や解約理由、双方の署名・捺印などが記載され、双方が契約解除に同意したことを証明できます。

送付するときは、公的に証拠が残る「内容証明郵便」を利用するといいでしょう。解約合意書は、法律上、必須ではありません。そのため、作成しなくても構いませんが、無用なトラブルを避けるためにも作成しておくことをおすすめします。

業務委託の辞め方についての注意点

業務委託を辞めるときの注意点は、以下の5つです。

  • 途中で辞めた場合は報酬が支払われない可能性がある
  • クライアントとのやりとりは証拠に残す
  • 合意解約を目指す
  • 評価が下がる
  • 解約金や損害賠償のリスクもゼロではない

それぞれについて解説します。

途中で辞めた場合は報酬が支払われない可能性がある

請負契約を結んでいる場合、成果物の納品は必須です。成果物をある程度、作成していたとしても納品する前に業務委託を辞めてしまえば、報酬が支払われない可能性があります。

クライアントによる一方的な都合であればともかく、自己都合であれば仕事に従事した期間にかかわらず、報酬は支払われないでしょう。ただし、業務委託の契約内容によって異なります。途中解約時に関する内容をしっかりと確かめておきましょう。

もし、契約内容に途中解約時は「報酬をゼロとする」といった文言が記載されている場合は、クライアントに交渉したとしても、報酬が支払われない可能性が高いです。

クライアントとのやりとりは証拠に残す

業務委託契約の辞めるときは、クライアントからのメールや書類などを保管し、証拠として残しておくことが大切です。話し合いで双方が合意していても、後に認識のずれが生じる可能性があります。このときに、証拠となる書類などがあれば、無用なトラブルを避けられます。

とくに解約合意書は、双方が解約に合意したことを示す重要な書類です。トラブルになったときに、有力な証拠となるので、しっかり保管しておきましょう。

合意解約を目指す

業務委託を辞めるときは、できる限り合意解約を目指しましょう。自己都合で辞めたい場合でも、クライアントが納得できるように誠意を持って説明すれば、理解してもらえる可能性があります。合意解約であれば、双方の関係性に傷がつくことなく、業務委託を辞められます。

良好な関係であれば、別の契約を結んだり、他の仕事で関わったりすることも可能です。裁判まで発展しないように、注意しましょう。

評価が下がる

業務委託契約は、双方の信頼関係があってこその契約です。自己都合による途中解約は、信頼関係を悪化させる要因となり、受託者の評価が下がる可能性があります。受託者の口コミや評判の評価が下がれば、他案件へも影響が及びます。

「すぐに契約を解除する」「成果物を納品してもらえない」といった悪い評価が目立ってしまうと、今後の業務にも影響を及ぼすことは間違いありません。

解約金や損害賠償のリスクもゼロではない

請負契約の契約期間中に契約解除したい場合は、解約金や損害賠償が発生する恐れがあります。とくに自己都合で契約解除したい場合は、注意しましょう。クライアントに成果物を納品していれば、問題ありません。

しかし、未納品の状態で契約解除する場合は、クライアントに不利益が生じる可能性があります。この場合は、正当な理由がない限り、解約金や損害賠償が発生する可能性が高くなります。

業務委託の辞め方【メールで伝えるときの例文】

業務委託を辞めるときには、適切な配慮と誠意を持って手続きを進めることが大切です。クライアントにどのように伝えればいいか悩んでいる人は、以下の例文を参考にしてください。

件名:【重要】業務委託契約の解除についてのご連絡

〇〇株式会社 (担当者の名前)様

いつもお世話になっております。電気会社の記事を担当しております(自分の名前)です。

私は「ペルソナの作成、記事の構成・執筆・校正、入稿」などを2年ほど継続して担当致しました。契約書には、「執筆した記事数、実績などを考慮し文字単価を上げる」と記載がありますが、一向に文字単価が上がりません。

長期にわたり継続して契約していただいていたため、難しい決断ではありますが、契約を解除していただきたいと考えております。

つきましては、契約解除にあたり必要な書類や手続きがありましたら、ご連絡をお願い致します。

お手数をおかけしますがご理解の程、宜しくお願い致します。

(自分の名前)

業務委託の辞め方に関するよくある質問

業務委託の辞め方に関するよくある質問は、以下の通りです。

  • 何日前に辞めることを伝えればいい?
  • クライアントから業務委託を当然解除されたら?
  • 業務委託を辞めるときの理由は?
  • 仕事を引き受けてしまっても辞められるの?
  • 業務委託の辞め方:軽貨物編
  • 業務委託の辞め方:美容師編

それぞれについて解説します。

業務委託を辞めるときは何日前に辞めることを伝えればいい?

基本的に、業務委託契約の契約書に記載があるため、契約書を確認してください。例えば、「契約解除までの通知は2ヶ月前までに通知すること」などと記載がありますので、その指示に従いましょう。

もし、業務委託契約の契約書に記載がない場合は、クライアントに問い合わせてください。誤っても自分で判断して、一方的に解除しないように注意しましょう。

クライアントから業務委託を突然解除されたら?

クライアントから業務委託を突然解除された場合も、業務委託契約の契約書を確認してください。「〇〇の条件であれば、一方的に契約を解除できる」といった文言を記載しているケースがよくあります。基本的には、契約書の内容に沿って対応してください。

もちろん契約書に記載がなければ、直接クライアントに問い合わせましょう。また、クライアントから連絡がこない、自分では対処しきれない場合は、行政書士や司法書士、弁護士、法テラスなどに相談してください。

業務委託を辞めるときの理由は?

業務委託を辞めるときは、「正当な理由」が必要です。例えば、「交通事故や病気で業務を遂行できなくなった」「クライアントの要望に対し対価が見合っていない」などです。どのような理由であれ、双方の合意があれば契約を解除できるため、誠意を持って対応するよう心がけましょう。

業務委託を辞める理由が自己都合であっても、クライアントが理解すれば損害賠償などは発生しません。

仕事を引き受けてしまっても辞められるの?

仕事を引き受けてしまった場合は、業務委託契約の契約書を確認してください。途中解約に関する規定を探しましょう。規定があればその内容に従ってください。規定がなければ、クライアントに交渉しましょう。

業務委託の辞め方:軽貨物編

長期労働や賃金の安さなどを理由に、軽貨物の業務委託を辞めたいと思う人は少なくありません。とくに出来高制の報酬体系であれば、長期労働になりやすく、健康被害も懸念されます。また収入が不安定になりやすく、生活リズムが崩れることもあります。

業務委託の辞め方としては、本記事の流れに相違ありません。「業務委託の辞め方(手順)」を参考にしてください。

業務委託の辞め方:美容師編

業務委託契約を結んで美容師として働く人は少なくありません。しかし、「労働時間が長すぎる」「パワハラがひどい」といった理由で業務委託を辞めたい人も多くいます。美容室は、大型店舗でなければ1~2人で経営しているケースが多いです。

そのため、オーナーとの人間関係が上手くいかないと、継続して働けません。また、人数が少ないこともあり、一人当たりの仕事量も多くなります。入れ替わりが激しくなってしまうため、「業務委託を辞めたい」と考える人も多いのではないでしょうか。

美容師であっても基本的な流れは、本記事で説明した通りです。まずは、オーナーと話し合って合意解約を目指しましょう。

まとめ

業務委託を辞め方としては、業務委託契約書の契約内容を参考にクライアントと交渉しましょう。途中解約するときの報酬の有無や何日前に通知が必要かなど、おおむね契約書に書かれています。もちろん、記載がない場合は、クライアントに問い合わせてください。

自己都合であっても、クライアントが理解すれば損害賠償などは、発生しません。トラブルなく円満に解約するためにも、誠意を持って解約理由を伝えましょう。

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