退職証明書は、退職後に転職先から提出を求められることが多い書類です。労働基準法で会社に発行義務があるため、労働者から求められれば提出しなければなりません。
しかし、中には会社が発行を渋るケースや、そもそも「いつ・どこでもらえるのか分からない」という人も少なくありません。
本記事では、退職証明書を出してもらえないときの対処法を紹介します。いつもらえて、何に使うのか、会社に請求して受け取るまでの流れなども紹介しますので、参考にしてください。
・退職証明書は退職後に発行され、転職や各種手続きで前職の在籍実績を証明するための書類として使用する
・退職証明書を受け取るまでの流れは、退職意思を伝える、退職証明書の発行を会社に依頼する、申請手続きを行う
・退職証明書を出してもらえないときの対処法は、もらえない理由を会社に求める、別の書類で代替する、労働基準監督署や弁護士に相談する
・退職証明書を出してもらえないのは、労働基準法第22条に違反する
目次
退職証明書とは?
退職証明書とは、労働者が会社を退職した事実を証明する書類です。労働者の希望に応じて、在職期間や職務内容、退職理由などを会社が記載します。
主に転職先での入社手続きや、雇用保険・年金の申請時に必要となることがあります。法律上は労働者が請求した場合、会社には発行義務があり、拒否することはできません。
- 退職証明書はいつもらえる?
- 退職証明書は何に使う?
- 退職証明書と離職票の違い
- 退職証明書の記載事項
退職証明書はいつもらえる?
退職証明書は、退職日以後に請求すればすぐに発行されるのが原則です。労働基準法第22条では、労働者が求めたときは「遅滞なく」交付しなければならないと定められています。
つまり、会社は理由なく発行を引き延ばすことはできません。
発行までの期間は会社によって異なりますが、一般的には請求から1週間以内に受け取れるケースが多いです。
ただし、退職証明書は退職後に作成されるため、退職前に申請しておいても発行は退職日以降になります。
また、会社によっては総務部や人事部での確認作業に時間がかかることもあります。急ぎで必要な場合は、申請時にいつまでに必要か明確に伝えることが大切です。
退職証明書は何に使う?
退職証明書は、転職や各種手続きで前職の在籍実績を証明するための書類として使われます。最も多いのは、転職先での入社手続き時です。
前職の在籍期間や退職理由を確認する目的で提出を求められる場合が多いです。
また、雇用保険や年金の手続きでも使用されます。
離職票が届くまでに時間がかかる場合、ハローワークで失業手当の手続きを行う際に退職証明書を提示すれば、退職日や勤務実態を確認する書類として代用できます。
その他にも、社会保険の切り替えや住宅ローン・クレジットの審査など、公的・民間を問わず本人確認の補足資料として提出を求められるケースもあります。
退職証明書と離職票の違い
退職証明書と離職票はどちらも退職したことを証明する書類ですが、目的と発行元が異なります。
退職証明書は、労働者の請求に応じて会社が発行する任意の証明書です。在籍期間や職務内容、退職理由など、労働者が希望する項目を会社が記載します。
主に転職先への提出や、雇用保険・社会保険の手続き補助に使われます。
一方、離職票は、会社がハローワークを通じて発行する公的書類です。退職後に雇用保険(失業手当)の申請を行う際に必須となり、退職理由や賃金支払い状況などが記載されています。
労働者からの請求がなくても、雇用保険の加入者が退職した場合には自動的に発行されます。
退職証明書の記載事項
退職証明書に記載される内容は、労働基準法第22条第1項で定められています。主な記載事項は次の通りです。
- ① 使用期間(入社日・退職日)
- ② 業務の種類(担当していた職務内容)
- ③ 地位や役職(例:主任・課長など)
- ④ 賃金(基本給・手当などの内容)
- ⑤ 退職の事由(自己都合・会社都合など)
上記の項目すべてを記載する必要はなく、労働者がどの情報を証明したいか自由に選べます。なお、会社は退職証明書を作成する際、事実と異なる内容を記載してはいけません。
虚偽の記載があった場合、労働基準法違反(第120条)として30万円以下の罰金を科される可能性があります。
退職証明書を会社に請求して受け取るまでの流れ
まず退職の意思を上司に伝え、その後会社に退職証明書の発行を正式に依頼します。会社が内容を確認したうえで申請手続きを行い、発行が完了すれば受け取るのが一連の流れです。
それぞれについて詳しく紹介します。
- 退職意思を上司に伝える
- 退職証明書の発行を会社に依頼する
- 退職証明書の申請手続きを行う
- 退職証明書を受け取る
退職意思を上司に伝える
退職証明書は退職後に発行されるため、まずは上司に退職の意思を明確に伝えることが必要です。
退職の申し出は、直属の上司に口頭で行うのが一般的ですが、場合によってはメールや書面でも構いません。
「〇月〇日をもって退職したい」と具体的な日付を添えることで、会社側も手続きの準備をしやすくなります。
法律上は、退職日の2週間前までに申し出れば退職可能ですが、急な申し出は会社側の処理が間に合わず、退職証明書の発行が遅れる原因にもなります。
そのため、就業規則で定められた手順や申告期限を確認し、余裕をもって退職手続きを進めることが重要です。
関連記事:退職は何日前までに伝えるべき?法的ルールと正しい辞め方を解説します
退職証明書の発行を会社に依頼する
退職意思を伝え、会社に退職が認められたら、退職証明書の発行を正式に依頼しましょう。発行までの期間は会社によって異なりますが、一般的には申請から1週間前後で交付されるケースが多いです。
退職証明書は、労働者からの請求があって初めて会社が作成・交付する書類ですが、会社との関係が円満な場合は、会社側から退職証明書の発行について案内されることもあります。
しかし、労働者からの申請がなければ会社に発行義務はないため、トラブルを避けるためには自分から依頼しておく方が安全です。
また、トラブルが起きそうな職場では、口頭ではなくメールや書面で申請し、証拠を残しておくことをおすすめします。
退職証明書の申請手続きを行う
退職証明書の発行を依頼したら、次は正式な申請手続きを行います。
会社によっては申請書の提出が必要な場合や、指定のフォーマットが用意されているケースもありますので、事前に人事部や総務部に申請方法を確認しましょう。
退職証明書は、労働者が求めた項目だけを記載する仕組みになっているため、記載してほしい内容(例:在籍期間、退職理由など)を明確に伝えることが大切です。
ただし、退職者のなかには「何を記載してもらえばいいのか分からない」という人も少なくありません。そのため、とくに指定がない場合は、在籍期間・職務内容・退職理由の3項目を記載してもらいましょう。
これらは転職先やハローワークで確認されることが多く、どんな用途にも対応しやすい内容といえます。
退職証明書を受け取る
申請手続きが完了したら、会社から退職証明書を受け取ります。受け取り方法は会社によって異なり、直接手渡し・郵送・メール送付(PDF形式)のいずれかで対応してもらうケースが一般的です。
発行されたら、まず記載内容に誤りがないか確認しましょう。在籍期間や退職理由、氏名の誤字などがあると、転職先や公的機関での手続きに支障が出るおそれがあります。
誤りを見つけた場合は、早めに会社へ修正を依頼してください。
また、退職証明書は再発行が可能とはいえ、会社によっては保管期間が限られている場合もあります。そのため、受け取った書類はコピーやPDFで保存し、紛失や破損に備えておくことが大切です。
退職証明書を出してもらえないときの対処法
会社に退職証明書の発行を依頼しても、なかなか対応してもらえないケースがあります。しかし、退職証明書の交付は労働者の権利であり、会社の任意ではありません。
発行を拒否された場合や、引き延ばされている場合でも、正しい手順で対応すれば受け取ることが可能です。退職証明書を出してもらえないときの対処法を紹介します。
- 退職証明書を出してもらえない理由を会社に求める
- 転職先やハローワークに別の書類で代替できないか聞いてみる
- 労働基準監督署に相談する
- 弁護士や労働問題の専門家に相談する
- 退職代行サービスを利用する
退職証明書を出してもらえない理由を会社に求める
まずは、なぜ会社が退職証明書を発行しないのか理由を求めましょう。発行が遅れている場合、単なる手続き上のミスや担当部署の混乱によるケースも少なくありません。
そのため、最初から感情的に訴えるのではなく、「なぜ発行されないのか」「いつ発行される予定か」を冷静に確認することが大切です。
多くの企業では、退職証明書の発行を総務部や人事部が担当していますので、担当部署に直接確認すればよいですが、難しい場合は直属の上司などに問い合わせても問題ありません。
もし「退職証明書は発行できない」と言われた場合は、その理由を文書またはメールで明示してもらいましょう。
会社が正当な理由なく交付を拒む場合、労働基準法第22条違反に該当する可能性があります。その後の相談(労基署・弁護士など)に備えて、やり取りの記録を残しておくことが大切です。
転職先やハローワークに別の書類で代替できないか聞いてみる
会社が退職証明書をすぐに発行してくれない場合は、一時的に別の書類で代替できないか確認するのも有効です。
退職証明書は便利な書類ですが、すべての場面で「絶対に必要」というわけではありません。
たとえば、転職先で在職期間を確認するだけなら、離職票・源泉徴収票・給与明細・雇用契約書などで代替できる場合があります。
また、ハローワークでの失業手続きでも、離職票が届く前であれば退職証明書の代わりに会社名と退職日が確認できる書類を提出すれば対応してもらえるケースがあります。
転職先やハローワークの担当者によって判断が異なることもあるため、提出前に必ず確認することがポイントです。
ただし、代替書類で済ませるのはあくまで一時的な対応です。
最終的には、会社に正式な退職証明書を発行してもらい、今後の転職や公的手続きに備えて保管しておくことが大切です。
労働基準監督署に相談する
会社が正当な理由もなく退職証明書の発行を拒む場合は、労働基準監督署(労基署)に相談しましょう。
労基署は、労働基準法に基づいて企業を指導・監督する行政機関であり、退職証明書の未交付は労働基準法第22条違反にあたる可能性があります。
相談の際は、これまでのやり取りをまとめたメール・申請書の控え・会社との会話記録などを持参するとスムーズです。
労基署では、状況を確認したうえで会社に対して是正勧告や指導を行うことがあり、行政からの指摘を受けることで多くの会社は発行に応じます。
なお、相談は無料で、匿名でも受け付けてもらえる場合があります。
弁護士や労働問題の専門家に相談する
労働基準監督署に相談しても会社が退職証明書を発行しない場合は、弁護士や労働問題の専門家へ相談しましょう。
弁護士であれば、法的な観点から会社に対して内容証明郵便による請求や交渉を行うことが可能です。会社側が法的リスクを意識することで、迅速に対応するケースも少なくありません。
また、弁護士以外にも、社会保険労務士(社労士)や労働組合。法テラスなどの相談窓口を利用する方法もあります。
たとえば、社労士は労務トラブルに詳しく、書類作成や企業対応に関するアドバイスを受けられ、法テラスは収入要件を満たせば、無料相談や費用立替制度を利用できます。
関連記事:労働組合にはどんなことまで相談できる?相談事例や流れを解説
退職代行サービスを利用する
自分で会社とやり取りするのが難しい場合は、退職代行サービスを利用する方法もあります。とくに、会社との関係が悪化していたり、直接交渉することに強いストレスを感じる場合に有効です。
退職代行サービスの中でも、弁護士が運営するサービス(弁護士型退職代行)であれば、退職証明書の発行を含めた法的な交渉が可能です。
弁護士でない業者の場合は、書類の交付を求めるなどの交渉行為は法律上できないため、注意してください。
弁護士型の退職代行なら、退職届の提出から退職証明書の請求まで一貫して依頼でき、会社とのトラブルを避けながら確実に退職手続きを進められます。
退職証明書を出してもらえないのは違法?
結論から言うと、労働者が請求しているのに会社が発行を拒むのは、労働基準法違反となる可能性があります。
- 労働基準法第22条で会社には発行義務があると定められている
- 退職証明書は退職日以後に発行されるのが原則
- 退職証明書の使用目的は労働者の自由
労働基準法第22条で会社には発行義務があると定められている
労働基準法第22条では、「労働者が退職する際に、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職理由について証明書を請求した場合、会社は遅滞なく交付しなければならない」と定められています。
つまり、労働者が退職証明書の発行を求めたにもかかわらず、会社が拒否したり、発行を引き延ばしたりする行為は法令違反です。
会社が発行を拒んだ場合は、30万円以下の罰金を科される可能性もあります。ただし、会社には「発行する義務」はありますが、「自動的に交付する義務」はありません。
そのため、労働者からの申請がない場合に退職証明書を発行していなくても、違法とはなりません。
退職証明書は退職日以後に発行されるのが原則
退職証明書は、退職日以後に発行されるのが原則です。労働基準法第22条でも「退職の場合において請求があったとき」と明記されており、在職中の発行は想定されていません。
そもそも退職証明書は、退職したという事実を証明する書類であり、在職中は退職が確定していません。
そのため、事前に申請することは可能でも、実際に受け取れるのは退職日を過ぎてからになります。
ただし、退職日がすでに確定している場合や、転職先の入社手続きなどで早急に必要な場合は、会社の判断で退職日前に作成されるケースもあります。
この場合でも、証明書に記載される発行日は退職日以降となるのが一般的です。
退職証明書の使用目的は労働者の自由
退職証明書の使用目的や記載内容は労働者の自由です。労働基準法第22条第2項では、「労働者の請求しない事項を記入してはならない」と定められています。
つまり、労働者がどのような目的で退職証明書を使うのか、会社が確認したり制限したりすることはできません。
退職証明書を出してもらえないに関するよくある質問
退職証明書を出してもらえないに関するよくある質問を紹介します。
- 退職証明書と離職証明書・解雇理由証明書の違い
- 退職証明書はいつ必要になるの?
- 退職証明書はパートやアルバイトも出してもらえるの?
- 退職証明書を紛失したら再発行は可能?
- 退職証明書の代わりになるものって何?
- 退職証明書を退職前に発行してもらうことはできる?
- 退職証明書を自分で作成してもいいの?
退職証明書と離職証明書・解雇理由証明書の違い
退職証明書と離職証明書・解雇理由証明書の違いは、以下の表を参考にしてください。
| 退職証明書 | 離職証明書(離職票) | 解雇理由証明書 | |
|---|---|---|---|
| 発行主体 | 会社(労働者の請求により発行) | 会社がハローワークを通じて発行 | 会社(労働者の請求により発行) |
| 発行時期 | 退職後 | 退職後(自動的に発行) | 解雇時または退職時 |
| 主な目的 | 退職の事実・在籍期間などの証明 | 雇用保険(失業手当)手続き用 | 解雇理由を明確化するため |
| 使用先・提出先 | 転職先・ハローワークなど | ハローワーク | 労働者本人・紛争時など |
離職証明書(離職票)は雇用保険の失業手当を申請するための公的書類であり、会社がハローワーク経由で自動的に発行します。
また、解雇理由証明書は解雇の正当性を確認するための証明書で、特に不当解雇が疑われる場合に重要な役割を果たします。
退職証明書はいつ必要になるの?
退職証明書が必要になるタイミングは、主に転職や公的手続きの場面で、もっとも多いのは、転職先の入社手続きの際です。
新しい会社では、前職の在籍期間や退職理由を確認する目的で、退職証明書の提出を求めるケースがあります。
また、雇用保険(失業手当)や年金の手続きでも、離職票が届くまでの間に一時的に退職証明書で代用することがあります。
退職証明書はパートやアルバイトも出してもらえるの?
退職証明書は、正社員だけでなくパート・アルバイトなどすべての労働者が請求できる書類です。労働基準法第22条は、労働者が請求した場合と定めており、雇用形態による制限はありません。
パートやアルバイトの場合でも、転職活動・再就職・各種手続きで在籍期間を証明する場面はあります。そのため、必要なときに遠慮せず請求しましょう。
退職証明書を紛失したら再発行は可能?
退職証明書を紛失してしまった場合でも、再発行は可能です。労働基準法には再発行に関する明確な規定はありませんが、退職の際に労働者が請求すれば発行してもらえます。
ただし、退職から数年経過していると会社によっては人事データや勤務記録を破棄している場合もあります。
そのため、処理に時間がかかったり、過去の記録を復元できない可能性があるため、早めに再発行してもらいましょう。
退職証明書の代わりになるものって何?
退職証明書をすぐに発行してもらえない場合は、他の書類で代用できるケースがあります。目的によって代替できる書類は異なりますが、以下のようなものが代表的です。
- 離職票
- 源泉徴収票
- 給与明細書・雇用契約書
- 社会保険資格喪失証明書
提出先に他の書類でも代用できるか確認した上で、提出しましょう。
ただし、退職証明書は退職の事実を正式に証明する唯一の書類であるため、最終的には必ず会社から受け取っておくことが望ましいです。
退職証明書を退職前に発行してもらうことはできる?
結論から言うと、退職前に退職証明書を発行してもらうことはできません。退職証明書は「退職したという事実」を証明するための書類であり、退職が確定していない在職中は発行の対象外です。
この点は、労働基準法第22条においても「退職の場合において請求があったとき」と定められています。
退職証明書を自分で作成してもいいの?
退職証明書は、自分で作成することはできません。退職証明書は会社が労働者に対して発行する公的な証明書であり、労働者本人が作成した書類は法的効力を持たないためです。
自分で退職証明書を作成したとしても、会社印や担当者印が押されていなければ、転職先やハローワークで正式な証明書として認められません。
まとめ
退職証明書は、退職の事実を証明する重要な書類です。労働基準法第22条で会社に発行義務が定められており、労働者が請求すれば正当な理由なく拒否することはできません。
転職先への提出や雇用保険の手続きなど、幅広い場面で必要になるため、退職時には必ず発行を依頼しておきましょう。
万が一、会社が退職証明書を出してくれない場合でも、労働基準監督署や弁護士などに相談して発行してもらうことが重要です。
また、退職に関する悩みや不安がある場合は、退職代行サービスを利用するのも一つの選択肢です。会社と直接やり取りする必要がなくなるため、少ない負担で退職できます。
退職に関する質問や相談がある方は、ぜひ退職代行ほっとラインまでご相談ください。

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