退職時に有給消化できない時の対処法は?有給の消化方法と違法について解説

「会社から有給消化できないといわれたらどうしよう」「退職前に有給消化する方法は?」といった悩みや疑問を抱えている人は多くいます。退職前に残っている有給を消化したいものです。

しかし、会社によっては有給消化できない場合があり、事前に対策を学んでおくことが重要です。本記事では、退職時に有給消化できないときの対処法や違法について紹介します。

本記事の結論
・退職時に有給消化できないのは、労働基準法違反になる
・退職時は「時季変更権」が認められない
・有給消化できないといわれたときの対処法は、「買い取ってもらう」「交渉する」「労働基準監督署などへ相談する」

退職時に有給消化できない!?違法?

退職時に有給消化することは可能です。具体的に以下の3つについて、詳しく解説します。

  • 退職時でも有給消化は可能!時季変更権は使えない
  • 有給消化できないのは違法?有給休暇の取得条件を再確認!
  • 退職時に有給消化できる日数は?

退職時でも有給消化は可能!時季変更権は使えない

退職時でも有給消化は可能です。基本的に有給休暇は労働者が希望するタイミングで取得できます。ただし、会社の繁忙期や労働者が有給消化することで、会社の事業に支障をきたす場合には、「時季変更権」が認められます。

時季変更権とは、簡単にいえば労働者が有給消化する時期を変更できる会社の権利です。しかし、時季変更権は退職時に認められません。退職日以降は、労働者が会社に在籍していないため、時期を変更できる日がないからです。

会社は有給消化を原則断れませんので、退職時に有給消化することは可能です。

有給消化できないのは違法?有給休暇の取得条件を再確認!

上記で説明した内容を踏まえると、退職時に有給消化できないことは違法にあたります。有給休暇は労働基準法によって以下のように定められています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

引用元:労働基準法 | e-Gov 法令検索

「①入社して6ヶ月以上勤務している」「②その内の8割以上出勤している」この2つの条件を満たしていれば、労働者は有給を取得できる権利があるのです。そのため、退職時に有給消化できないことは、労働基準法違反にあたります。

退職時に有給消化できる日数は?

退職時に有給消化できる日数に決まりはありませんので、何日消化しても構いません。まずは自分に何日有給が残っているか、確かめましょう。有給休暇が付与される日数は、勤務年数によって異なります。以下の表を参考にしてください。

勤務年数 休暇日数
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ月 16日
5年6ヶ月 18日
6年6ヶ月以上 20日

有給休暇は発生日から2年経過すると消滅します。つまり1年目に使わなかった有給は翌年に繰り越されます。翌年に使わなかった場合は、時効となり消滅しますので注意しましょう。

2年で時効になりますので、最大40日分しか保有できません。

退職時に「有給消化できない」といわれたときの6つの対処法

退職時に「有給消化できない」といわれたときの6つの対処法は、以下の通りです。

  • 1.退職日を遅らせて有給消化する
  • 2.有給消化の正当性を主張する
  • 3.有給消化できるように交渉・言い方を工夫する
  • 4.有給消化できないなら買い取ってもらう
  • 5.労働組合や労働基準監督署などに相談する
  • 6.解決が難しい場合は弁護士に相談する

それぞれについて見ていきましょう。

1.退職日を遅らせて有給消化する

退職日が決まっている場合であっても、会社側の同意があり合意退職する場合は退職日の変更が可能です。退職日を遅らせて有給消化できないか、会社と交渉しましょう。会社の合意がない場合は、退職日を変更できません。

転職先の入社日が決まっている場合は、転職先に迷惑がかかりますので、退職日を遅らせるのは控えましょう。

2.有給消化の正当性を主張する

先に述べたように労働者には、有給を消化する権利があります。有給消化できないといわれた場合は、有給消化の正当性を証明できる証拠を集め、主張しましょう。具体的には雇用契約書・給与明細・勤怠管理表などを用意しましょう。

自分に有給休暇が残っていることを伝え、「労働基準法第39条により有給消化できないことは不当にあたります」と主張すれば、有給消化できる可能性が高くなるでしょう。

有給消化の正当性を主張しても頑なに断る場合は、有給消化を不当に拒否された証拠を集めてください。例えば、有給消化したい旨を伝えたメール・書面を保管したり、有給消化できない理由を書面で提出してもらったりしましょう。

これらの証拠がしっかり集められていると、後に必要となった場合でも有利に立ち回れます。

3.有給消化できるように交渉・言い方を工夫する

有給消化できないときは、会社と交渉することも1つの手です。「退職日を遅らせて有給消化する」でも述べたように、退職日を遅らせる代わりに、有給消化させてほしいと交渉する方法があります。

その他にも、「引継ぎをしっかりするので有給消化させてほしい」といった交渉のやり方もあります。本来は交渉せずとも有給消化できる権利があるので、交渉の必要はありません。しかし、円満退職するためにこちらからお願いすることも大切です。

4.有給消化できないなら買い取ってもらう

有給休暇の買取は原則認められていません。しかし、退職時であれば有給休暇の買取が認められています。ただし、有給休暇の買取は義務ではないため、買い取るかどうかは会社の自由です。

有給休暇の買取については、会社の就業規則に記載されている場合がありますので、事前に確認しておきましょう。記載のない場合は上司に確認するか、直接交渉してください。

円満退職のために会社が買い取りに応じてくれるケースは少なくありません。会社としても退職時にトラブルを拡大したくありません。そのため、「引継ぎをしっかりするので有給休暇の買い取ってもらえないか」と交渉してみてもいいでしょう。

5.労働組合や労働基準監督署などに相談する

会社と交渉しても有給消化できない場合は、労働組合や労働基準監督署に相談することをおすすめします。労働組合や労働基準監督署は無料で相談可能です。労働組合は、労働者が主体となった団体ですので、中立の立場ではなく労働者側の立場になってアドバイスをもらえます。

労働基準監督署は公的機関ですので、中立の立場でアドバイスがもらえるだけでなく、労働基準法に違法する行為があれば会社へ直接指導や勧告してくれます。

労働基準監督署へ相談する前に、上司や会社の上層部に労働基準監督署へ相談に行く旨を伝えてもいいでしょう。会社は労働者が労働基準監督署へ相談・通報することを恐れている可能性が高いです。

労働基準監督署へ報告されると有給休暇を不当に拒否していることがバレるからです。

6.解決が難しい場合は弁護士に相談する

会社に交渉しても有給消化できない場合は、弁護士に相談することも視野に入れておきましょう。弁護士を利用すれば法的手段が可能です。有給休暇を不当に拒否されている証拠を集めておけば、法的手段をとったときに有利になります。

有給休暇は、会社の承諾なく取得することが可能です。そのため、強硬手段としては会社に有給消化する旨を伝え、会社を休む方法もあります。この場合、会社が欠勤扱いとし、給料を支払わない可能性が高いです。

このような場合でも、弁護士であれば対応できます。弁護士への依頼は無料ではありませんので、最終手段として考えてもよいでしょう。

退職前に有給消化しやすくなる方法

退職前に有給消化しやすくなる方法は、以下の4つです。

  • 有給消化したいことを早めに伝える
  • 連休にこだわらず細かく有給消化する
  • 引き継ぎ準備を整えておく
  • 退職意思は2ヶ月前に伝えておく

有給消化できない、といったことにならないためにもポイントを押さえておきましょう。

有給消化したいことを早めに伝える

会社の承認なしに有給消化できますが、会社にも都合があります。繁忙期や人手不足、シフトの関係などにより有給消化させにくい状況があるのです。そのため、早めに有給消化したい旨を伝えておき、予定を開けてもらうことがポイントです。

また、退職前にまとめて有給消化できなさそうであれば、事前に何日か消化しておきましょう。1週間であれば有給消化できても1ヶ月は厳しい、という場合もあります。可能であれば日ごろから少しずつ有給消化していくように心がけましょう。

連休にこだわらず細かく有給消化する

まとめて5日分消化できないなら、2日分と3日分に分けて有給消化することもポイントです。会社側としてもまとめて有給消化されると業務に支障をきたすことがあっても、分割すれば対応できる場合があります。

連休にこだわらず細かくてもいいので、有給消化できるように交渉しましょう。細かく分割するほうが、引継ぎ作業の進行にも影響を及ぼしにくく、会社も許可しやすくなります。

引き継ぎ準備を整えておく

有給消化させたくない理由として、「引継ぎ作業が疎かになるのではないか」と会社は懸念しています。その不安を払拭するためにも、引継ぎ準備を整えておくことが重要です。

引継ぎするときのポイントとしては、後継者の疑問を払拭し「自分でもやれそうだ」と思える程度まで引き継ぐことです。場合によっては、後継者が用意できていないこともあります。後継者が用意できていないときは、マニュアルを作成しておきましょう。

引き継ぎの際に心がけるポイントは、以下の通りです。

  • 自分の請け負っていた業務の全体像を説明する
  • 業務内容はパソコンなどにまとめておき、いつでも確認できるようにする
  • 後継者の疑問がなくなるまで、わからないところを説明する
  • まずは自身でやって見せて、少しずつ後継者に業務を任せる

退職意思は2ヶ月前に伝えておく

法律上は2週間前に退職意思を伝えれば辞めることが可能です。ただし、退職前に有給消化したい場合は、2ヶ月前には退職意思を伝えておきましょう。いつまでに退職意思を伝えるかは、会社の就業規則に記載されていますので、確認してください。

早く伝えておけば引き継ぎ作業も円滑に進めることができ、有給消化しやすくなります。有給休暇の日数が多く残っている人は、とくに早めに伝えておきましょう。

退職時の有給消化に関するよくある質問

退職時の有給消化に関するよくある質問、は以下の通りです。

  • 退職時に有給消化するとき公休は足しますか?
  • 退職時に有給消化するのは義務ですか?
  • バイトやパートも退職時に有給消化できますか?
  • 退職時に40日間連続で有給消化してもいいのですか?
  • 退職時に有給消化した給料の計算方法は?
  • 退職時に有給消化できる平均日数は?

それぞれについて見ていきましょう。

職時に有給消化するとき公休は足しますか?

公休は足してOKです。公休は会社が休みの日なので、社員も休みの日となります。例えば、週休2日の会社であれば、1週間に5日分の有給消化が可能です。土日休みの会社であれば月曜~金曜までが有給休暇となります。

場合によっては、「公休日も有給休暇にしろ」という会社もあります。しかし、公休を有給休暇にすることはできません。労働基準法第35条では、少なくとも週に1回労働者に休みを与えることが定められています。

つまり1週間で有給消化できる最大日数は、6日分です。退職日までに有給消化したいからといって、公休日を潰して有給消化できませんので、注意してください。

退職時に有給消化するのは義務ですか?

退職時に有給消化する義務はありませんが、年10日以上の有給休暇が付与された社員は、付与された日から1年以内に年5日以上の有給休暇を消化しなければならないことが義務付けられています。

もし、年10日以上の有給休暇が付与されており、退職時までに一度も有給消化していない場合は、少なからず5日分は消化する義務があります。

バイトやパートも退職時に有給消化できますか?

バイトやパートであっても、退職時に有給消化することは可能です。有給休暇は雇用形態に関係なく、「①入社して6ヶ月以上勤務している」「②その内の8割以上出勤している」この2つの条件を満たしている労働者に付与されます。

正社員と同様に有給休暇が何日残っているか確かめておきましょう。バイトやパートは正社員とは付与される日数が異なります。具体的には以下の表を参考にしてください。

週所定労働日数 1年間の
所定労働日数
継続勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5
付与日数(日) 1日 48日~72日 1 2 2 2 3
2日 73日~120日 3 4 4 5 6
3日 121日~168日 5 6 6 8 9
4日 169日~216日 7 8 9 10 12

退職時に40日間連続で有給消化してもいいのですか?

退職時に40日間連続で有給消化しても問題ありません。長期休暇になりますので、退職日の2~3ヶ月前には退職意思を伝え、40日間連続で有給消化できるか会社側と相談しましょう。

退職時に有給消化した給料の計算方法は?

退職時に有給消化した給料の計算方法については、法律で定められていませんので、会社が合理的な方法で算出します。一般的には2つの計算方法があります。

1つ目は「通常通り勤務したとみなした場合の計算方法」です。例えば、時給計算の場合は「時給×所定労働時間数」、日給計算の場合は「日給の額面通りの給料」となります。この方法では、残業が発生しないものとして考えます。

2つ目は「給料の平均値から計算する方法」です。過去3カ月間の給料を出勤日数で割り、給料の平均値を求めます。「給料の平均値×取得した有給休暇」で算出します。

こちらの方法では、残業代が含まれていますので、1つ目の方法よりも給料が高くなることが多いです。

退職時に有給消化できる平均日数は?

退職時に残っている有給休暇を消化できますが、実際に働いてる人は何日分消化しているのでしょうか。株式会社マイナビのアンケート調査によれば、以下のような結果になりました。

取得日数 割合
0~4日 54.9%
5~8日 14.4%
9~12日 9.2%
13~16日 7.0%
17日以上 14.4%

出典元:退職時の有給消化をスムーズに取るには?よくあるトラブルと対処法も解説 – マイナビ転職

半分以上の人は0~4日しか有給消化できていません。退職意思を伝える前に計画的に有給消化した人もいれば、有給消化をあきらめる人もいるでしょう。

「退職時に有給消化できない」と悩む人が多いように、実際、退職前に有給消化する人は少ないようです。この結果を踏まえると、退職する前から計画的に有給消化することをおすすめします。

まとめ

退職時に有給消化することは可能です。会社が有給消化を拒否する場合、労働基準法第39条に違反します。会社に交渉するか、労働基準監督署へ相談するなど、有給消化できるように対策しましょう。

退職時に有給消化するには、早めに退職意思を示し、有給消化したいことを伝えましょう。退職前は引き継ぎ作業などもありますので、退職前から計画的に有給消化することが大切です。

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