会社を欠勤したときの給与計算のやり方は?欠勤控除や注意点を解説

会社を欠勤したときに、給与がどの程度減るのか気になる人は多いのではないでしょうか。また、給与が正しく支給されているか確かめるためにも、欠勤時の給与計算のやり方を知っておくと良いでしょう。

本記事では、会社を欠勤したときの給与計算のやり方や、欠勤控除について、注意点などを解説します。

本記事の結論

・会社を欠勤すると「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づいて減額対象になる
・欠勤したときの給与計算は「月平均の所定労働日数」「該当月の所定労働日数」「該当月の暦日数」などを用いて計算する
・欠勤控除を計算するときは、就業規則に規定があるかや、最低賃金を下回っていないか注意する

会社を欠勤したときの欠勤控除とは?

欠勤控除とは、会社を欠勤・遅刻・早退などをしたときに、給料から働けなかった時間分を差し引くことです。欠勤控除について、以下の3つを見ていきましょう。

  • 欠勤控除の考え方とは?「ノーワーク・ノーペイ」って何?
  • 欠勤控除に当てはまるケース
  • 欠勤控除に当てはまらないケース

欠勤控除の考え方とは?「ノーワーク・ノーペイ」って何?

欠勤控除は「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づいています。労働者が働かなかった時間は、会社が給与を支払う義務がない、という考え方です。欠勤だけでなく、早退や遅刻など労働者が働かなかった時間は、欠勤控除に当てはまります。

欠勤控除や欠勤については、法律で定められていません。そのため、就業規則に規定があるか確かめておきましょう。欠勤控除はすべてに該当するわけではなく、当てはまらないケースもあります。それぞれについて見ていきましょう。

欠勤控除に当てはまるケース

会社を欠勤したときに、欠勤控除に当てはまるケースは以下の通りです。

  • 体調不良で欠勤した場合
  • インフルエンザになった場合
  • 子どもの送迎で早退・遅刻した場合
  • 有給休暇を申請せずに休んだ場合

体調不良や風邪などで欠勤した場合は、欠勤控除に当てはまります。インフルエンザは、熱が下がったとしても一定期間は休んでおくのが一般的です。この場合でも、欠勤控除とされます。

ただし、会社から「感染拡大を防ぐために出勤しないでほしい」といった指示があった場合は、「自己都合」ではなく「会社都合」になるため、欠勤控除には当てはまりません。

なお、病気やケガによって4日間以上、会社を欠勤した場合は加入している健康保険から、傷病手当金が支給される可能性があります。

子どもが熱を出して早退する、もしくは病院にいってから出勤する場合も欠勤控除に当てはまります。有給休暇が残っている人は、できるだけ有給を消化し、欠勤控除に当てはまらないようにしましょう。

欠勤控除に当てはまらないケース

会社を欠勤したときに、欠勤控除に当てはまらないケースは以下の通りです。

  • 有給休暇を消化して休んだ場合
  • 慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの休暇制度を利用して休んだ場合
  • 会社の都合により休業した場合

労働基準法によって一定の条件を満たしたものには、有給休暇を与えなければならないという規定があります。有給休暇は、労働日に休んだとしても賃金が発生する休暇です。そのため、欠勤控除には当てはまりません。

体調不良や風邪で休む場合であっても、有給休暇が残っている場合は、有給休暇を消化できないか上司に相談してみましょう。

慶弔休暇やリフレッシュ休暇などの休暇制度は、会社が設定した休みなので、欠勤控除の対象外です。その他、急な休業など会社の都合や指示により欠勤となった場合は、「会社都合」の休みなので欠勤控除の対象外になります。

正社員が欠勤したときの給与計算のやり方

正社員が欠勤したときの給与計算のやり方は、全部で4つです。以下の計算方法を参考にしてください。

  • 月平均の所定労働日数を用いたときの計算方法
  • 該当月の所定労働日数を用いたときの計算方法
  • 該当月の暦日数を用いたときの計算方法
  • 遅刻・早退した場合の計算方法

月平均の所定労働日数を用いたときの計算方法

欠勤したときの給与計算のやり方は、以下の月平均の所定労働日数を用いた計算方法が一般的です。迷ったときは、こちらで紹介する計算方法を利用してください。手順を見ていきましょう。

  1. 1年間の所定労働日数を12ヶ月で割り、月間の平均所定労働日数を求める
  2. 月給を月間の平均所定労働日数で割り、1日あたりの給与を求める
  3. 1日あたりの給与に欠勤した日数を乗じた金額が欠勤控除額になる

年間の所定労働日数が240日で月給30万円の正社員が2日間、欠勤したと仮定して具体的に計算します。

  1. 240(年間の所定労働日数)÷12(ヶ月)=20(月間の平均所定労働日数)
  2. 300,000(月給)÷20(月間の平均所定労働日数)=15,000(1日あたりの給与)
  3. 15,000(1日あたりの給与)×2(欠勤日数)=30,000(欠勤控除額)

この方法は、月間の平均所定労働日数を用いるため、欠勤控除額が一定額になります。計算方法がシンプルで、月ごとに欠勤控除額が変わらないことが特徴です。

ただし、月ごとに労働日数が異なりますので、不平等感が生じてしまいます。そこで、労働日数に応じた給与計算のやり方を見ていきましょう。

該当月の所定労働日数を用いたときの計算方法

欠勤した該当月の所定労働日数を用いた計算方法です。月毎に労働日数が違ったとしても正確に求められます。手順は以下の通りです。

  1. 月給を該当月の所定労働日数で割り、1日あたりの給与を求める
  2. 1日あたりの給与に欠勤した日数を乗じた金額が欠勤控除額になる

月間の所定労働日数が23日で月給30万円の正社員が3日間、欠勤したと仮定して具体的に計算します。

  1. 300,000(月給)÷23(月間の平均所定労働日数)=13,043(1日あたりの給与)
  2. 13,043(1日あたりの給与)×3(欠勤日数)=39,130(欠勤控除額)

この方法では、月間の所定労働日数を用いるため、労働日数が異なったとしても不平等感なく正確にもとめることが可能です。

該当月の暦日数を用いたときの計算方法

次は、欠勤した該当月の暦日数を用いた計算方法です。手順を見ていきましょう。

  1. 月給を該当月の暦日数(28日、30日、31日など)で割り、1日あたりの給与を求める
  2. 1日あたりの給与に欠勤した日数を乗じた金額が欠勤控除額になる

当該月の暦日数が30日で月給30万円の正社員が4日間、欠勤したと仮定して具体的に計算します。

  1. 300,000(月給)÷30(暦日数)=10,000(1日あたりの給与)
  2. 10,000(1日あたりの給与)×4(欠勤日数)=40,000(欠勤控除額)

月給制の正社員であれば、出勤日数を計算することなく欠勤控除額を求められます。

遅刻・早退した場合の計算方法

遅刻や早退したときは、欠勤時間に応じて欠勤控除額を求めるのが一般的です。なお、遅刻や早退の計算方法は、会社の就業規則によって異なる可能性がありますので、確かめておきましょう。

計算方法としては、「1日あたりの給与÷実働可能時間×欠勤時間数」で求められます。例えば、日給が12,000円で、1日8時間労働の正社員が2時間遅刻した場合は、以下の通りです。

12,000(1日あたりの給与)÷8(実働可能時間)×2(欠勤時間数)=3,000(欠勤控除額)

これまでの計算方法は、一般的なものです。欠勤控除については、法律で定められていませんので、会社の就業規則を確かめましょう。これまでに紹介した4つの方法ではないときは、就業規則に従って計算してください。

会社を欠勤して給与計算するときの注意点

会社を欠勤して給与計算するときの注意点は、以下の通りです。

  • 欠勤控除について就業規則に規定があるか
  • 最低賃金を下回っていないか
  • 欠勤控除以外で賃金が引かれていないか
  • 給与明細に記載された欠勤控除を確認する

それぞれについて見ていきましょう。

欠勤控除について就業規則に規定があるか

繰り返しになりますが、欠勤控除については法律で定められていません。そのため、会社ごとの就業規則を確認することが重要です。仮に、就業規則で何も定めていない場合は欠勤控除が適用されません。

また、就業規則に記載されているだけでなく、その情報が周知されているかも重要なポイントです。企業は就業規則を従業員に周知させなければならない義務があります。周知されていない場合は、就業規則に規定があっても効力がありません。

会社によっては就業規則に具体的な内容が記載されている場合があります。例えば、無断欠勤と体調不良による欠勤は扱いが異なる、などです。欠勤した月の給与が思った以上に低い、いつもと変わらないなど、疑問に思ったときは就業規則を確認してください。

最低賃金を下回っていないか

地域によって最低賃金が設定されています。欠勤控除によって最低賃金を下回る場合は、違法になります。最低賃金を下回るケースはほとんどありませんが、チェックしておくことも大切です。最低賃金を下回るケースとしてあり得るのは、欠勤日数が多い月に「月平均の所定労働日数を用いた計算方法」を利用した場合です。

例えば、月平均の所定労働日数20日(1日の労働時間8時間)で基本給20万円の正社員が3日だけ出勤し、19日間欠勤した場合の欠勤控除額を計算してみましょう。

  1. 200,000(基本給)÷20(月平均の所定労働日数)×19(欠勤日数)=190,000(欠勤控除額)
  2. 200,000(基本給)−190,000(欠勤控除額)=10,000(当月の給与)
  3. 10,000(当月の給与)÷24(当月の労働時間)=417(時給)

上記の条件であれば、時給換算すると417円と最低賃金を下回ります。給与計算して最低賃金を下回る場合は、会社に未払い金額(最低賃金との差額)を請求することが可能です。

一般的には最低賃金を下回らないように、「一定の日数以上を欠勤した場合は欠勤日数ではなく、出勤日数で計算すること」といった規定が就業規則に定められています。

欠勤控除以外で賃金が引かれていないか

欠勤して給与計算するときに注意しておきたいのが「残業代」です。欠勤したとしても、その月に発生した残業代を受け取る義務があります。しかし、みなし残業代(固定残業代)を採用している会社の場合、欠勤した日数分の残業代を引かれる可能性があります。

就業規則に規定があれば、欠勤時にみなし残業代を控除することは可能です。しかし、規定もなく欠勤したからといって残業代を引かれるのは違法です。残業代がしっかり支払われているか確かめておきましょう。

また、端数の処理も確認してください。正社員の欠勤控除において、基本的に端数は切り捨てです。端数を切り上げた場合、実際に働いた分以上に控除される可能性があります。

給与明細に記載された欠勤控除を確認する

欠勤控除は給与明細に記載されています。自分で計算した金額と記載された金額が合っているか確かめましょう。控除した金額や日数、時間など詳しく書かれています。欠勤控除という名前から「控除欄」に書かれていると思う人が多いですが、金額は支給欄にマイナスで書かれているので注意しましょう。

欠勤したときの給与計算に関するよくある質問

欠勤したときの給与計算に関するよくある質問は、以下の通りです。

  • 欠勤すると給与は減額されますか?
  • 欠勤すると賞与に影響はありますか?
  • 公務員が欠勤したときの給与は?

それぞれについて見ていきましょう。

欠勤すると給与は減額されますか?

欠勤すると給与は減額されます。欠勤した日数や、遅刻・早退の時間に応じて欠勤控除額が算出され、給与から差し引かれます。欠勤控除額は、給与明細に記載されますので、どの程度差し引かれたのか確認しましょう。

欠勤すると賞与に影響はありますか?

1~2回欠勤した程度では、賞与に影響はありません。欠勤が賞与に影響する場合は、欠勤回数や欠勤の理由が原因です。欠席が多い、やむを得ない理由ではなくプライベートな理由ばかりで欠席するなどは、賞与に影響する可能性があります。

欠勤が賞与にどの程度影響するかは、会社により異なりますが、欠勤回数が増えないように気をつけましょう。会社によっては風邪やケガで休んだ場合、医師の診断書を提出すれば欠勤扱いにならない場合があります。しかし、賞与の評価基準は就業規則に規定されていないため、判断が難しいです。

公務員が欠勤したときの給与は?

公務員が欠勤した場合でも「ノーワーク・ノーペイの原則」に当てはまりますので、減額対象となります。公務員は、欠勤回数や状況に応じて、懲戒処分になる可能性があります。

例えば、「正当な理由がなく10日以内の欠勤がある場合は減給または戒告とする」「正当な理由がなく11~20日以内の欠勤がある場合は停職または減給とする」などです。

公務員の懲戒処分は、退職金がもらえなくなったり、昇格できなくなったりと、不利益が大きいため、欠勤しないように注意しましょう。

まとめ

会社を欠勤したときの給与計算のやり方は、以下の4つです。

  • 月平均の所定労働日数を用いたときの計算方法
  • 該当月の所定労働日数を用いたときの計算方法
  • 該当月の暦日数を用いたときの計算方法
  • 遅刻・早退した場合の計算方法

本記事で紹介した計算方法は、あくまで一般的な計算方法であって別の計算方法を用いている会社もあります。そのため、欠勤したときに給与計算する場合は、会社の就業規則を確認し、就業規則に則った方法で計算しましょう。

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