転職活動において、求人情報と実際の労働条件が異なることがあります。しかし、求職者側の立場からすると、応募先に申し出ることに気が引ける人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、求人情報と労働条件が違うとき、どのように対処すればいいのか解説します。また、転職時の注意点も紹介しますので、参考にしてください。
・求人情報と労働条件が違うときは、応募先の会社に説明を求めること
・求人情報と労働条件が違ったとしても、すべて違法にはならない(状況によりけり)
・採用担当者の経験・知識不足や求人広告を誇張しすぎているなどの理由により、求人情報と労働条件に差異が生じる
・労働条件について無料で相談できる窓口は「総合労働相談コーナー」「労働条件ほっとライン」「よりそいホットライン」など
目次
求人情報と労働条件が違うときの対処法
求人情報と労働条件が違うときの対処法は、入社前・入社後で異なります。
- 入社前に求人情報と違うと気づいたとき
- 入社後に求人情報と違うと気づいたとき
それぞれについて見ていきましょう。
入社前に求人情報と違うと気づいたとき
面接時や内定時に求人情報と労働条件の内容が違うことに気づいたときは、会社に説明を求めましょう。このときに、会社が回答をうやむやにしたり、明確な回答をもらえなかったりしたときは、転職先を見直すことをおすすめします。たとえ応募先に転職できたとしても、不満を抱えたまま働くことになります。
内定を承諾した後であっても退職は可能です。内定承諾に法的な拘束力はありません。ただし、応募先に迷惑をかけることになりますので、できるだけ早く伝えましょう。
また、万が一、内定承諾後は退職できないなどのトラブルに発展したときは、退職代行サービスや弁護士を利用しましょう。
入社後に求人情報と違うと気づいたとき
入社後は労働契約の手続き状況によって対応が異なります。
会社が労働条件についてしっかりと説明していた場合
求人情報と労働条件が違うことについて説明を受けていたり、求人情報と違うことが明記されていたりした場合、労働者は会社が提示した内容に合意したとみなされます。そのため、特別な事情がない限りは、求人情報と違うことに対して異議を唱えることはできません。
会社が労働条件の手続きを曖昧にしていた場合
会社が労働条件の手続きを曖昧にしており、口頭などで簡単に済ませる場合があります。求人情報以外に何も説明を受けていない場合は、求人情報通りの契約とみなされます。入社後も会社から求人情報と違うことに関して説明を受けていない場合は、求人情報に応じた労働条件に変更してもらうよう申し出ましょう。
なお、求人情報通りの契約をしており、実際の労働時間や勤務場所、賃金などの労働条件が異なる場合は、すぐに退職しても法的に問題ありません(労働基準法第15条)。
求人情報と労働条件が違う場合は違法になるのか
求人情報と労働条件が違う場合は、違法になるのか見ていきましょう。
- 「求人情報と労働条件が違う=違法」とはいえない
- 求人情報と労働条件が違うと違法になる場合
「求人情報と労働条件が違う=違法」とはいえない
求人情報と労働条件が違ったとしても、必ず違法になるわけではありません。求人情報は、労働者を募集するための広告です。確定した労働条件を記載しているのではなく、見込みの労働条件が記載されています。
正式な労働条件は、内定承諾時に雇用契約書を締結することで決定されます。求職者は、求人情報と労働条件が異なることを理由に内定を断ることが可能です。そのため、求人情報が実際の労働条件と違う場合でも、違法と断言できません。
求人情報と労働条件が違うと違法になる場合
基本的には求職者の同意があれば違法になりません。だからといって、どのような条件を提示してもよいわけではありません。変更ありきで実際の労働条件と大きくことなる求人情報を提示している場合は、違法になります。求職者を呼び込むために嘘の求人情報を提示し、入社後に求人情報を変更することは詐欺行為です。
職業安定法第65条では、虚偽の広告・条件を提示し、職業紹介や労働者の募集をした場合、6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金を科すことを定められています。実際に求人情報と労働条件が違い違法になった事例を見ていきましょう。
「日新火災海上保険事件」では、労働条件の変更ありきで求人情報が提示されており、虚偽の内容を記載したとして慰謝料が命じられました。求人広告には「89年卒の方なら、89年に入社した社員の現時点での給与と同等の額を約束します」と記載されており、それを見た求職者(81年卒)が転職しました。
しかし、実際には新卒同年次定期採用者を下回る位置づけに設定されていたのです。
結果としては、労働基準法第15条(労働条件の明示)の違反や、雇用契約締結に至る過程における信義則違反という判決が下されました。
求人情報と労働条件に違いが生じるのは?
求人情報と労働条件に違いが生じてしまう原因は、会社側の問題がほとんどです。どのような問題があり、求人情報と労働条件に違いが生じてしまうのか見ていきましょう。
- 応募者への説明が不足している
- 会社の採用実績が少ない
- 会社が求人広告を誇張しすぎている
- 会社が故意に労働条件と異なる求人情報を提示している
応募者への説明が不足している
面接時や入社時などに応募者に対して説明が不足していることも、求人情報と労働条件に違いが生じてしまう原因の一つです。求人情報には労働条件が記載されていますが、すべてを書ききることはできません。そのため、不足している部分を会社側が説明で補う必要があります。とくに雇用契約書を締結する際には、細かな説明が必要です。
説明が不足していると、会社側と求職者側で意見の相違が生まれてしまいトラブルの原因になります。もちろん求職者側も書類にしっかり目を通し確認することが重要です。また、疑問点やわからないことがあれば、うやむやにせずその場で採用担当者へ質問しましょう。
会社の採用実績が少ない
会社の採用実績が少ない場合、採用担当者のスキルや実績が乏しい可能性があります。採用担当者の知識・経験が不足していると、求人情報と労働条件の違いが生じやすくなります。例えば、知識や経験が不足している採用担当者が求職者から質問されたとき、曖昧な回答をしてしまいトラブルになるなどです。
また、起業したばかりや新事業を立ち上げたばかりでは、採用方針が定まっていないことあります。人手不足を補うために見切り発車で求人募集を始めてしまうと、労働時間や賃金の相違が発生してしまうのです。
会社が求人広告を誇張しすぎている
求人広告を目立たせるために、求人広告のキャッチフレーズなどを誇張しすぎている場合があります。目を惹くキャチフレーズも強すぎる場合は、求人情報と労働条件の違いが生じやすくなる原因です。例えば、「入社1年目で月収80万円も可能!」「ほぼ残業なし」などです。条件次第では月収80万円が可能であっても、条件が厳しすぎて実際はごく一部の社員しか当てはまらない場合があります。
このような求人広告は、景品表示法違反の可能性があります。求職者は目先の好条件ですぐに判断せず、求人情報が正しいか会社に説明を求めましょう。
会社が故意に労働条件と異なる求人情報を提示している
会社が意図的に労働条件と異なる求人情報を提示している場合があります。すぐに人手を集めたい、実際の労働条件を提示すると人が集まらないなど、理由はさまざまですが悪質な行為です。求職者は自分に合った好条件を探していますので、このような悪質な求人情報に応募してしまいます。
もちろん、故意に労働条件と異なる求人情報を提示することは違法になる可能性が高いです。明らかに好条件な求人情報には注意しましょう。
求人情報が労働条件と違うときの無料相談窓口
求人情報が労働条件と違うとき、無料で相談できる窓口を紹介します。
- 応募先の会社に相談する
- 総合労働相談コーナー
- 労働条件相談ほっとライン
- よりそいホットライン
- ハローワーク
それぞれについて見ていきましょう。
応募先の会社に相談する
まずは応募先の会社に相談してください。会社の単なるミスで労働条件が見直される場合もあります。会社との話し合いで解決すれば、問題ありませんので、新しい環境でスタートが切れるでしょう。会社によっては、「内定時に説明をした」「雇用契約書を締結したから変更できない」など、意見を聞き入れてもらえない場合があります。この場合は、外部の相談窓口を利用しましょう。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、募集・採用以外にも解雇、雇止め、賃金の引下げなどあらゆる分野の労働問題に対応しています。予約する必要はなく、電話や面談での相談が可能です。土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)は閉庁しています。開庁時間は各都道府県労働局により異なりますの、ホームページから確認してください。
労働基準法などの法律に違反する場合は、行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次いでもらえます。違法性がなかったとしても、助言・指導・あっせんなど対応は可能です。
労働条件相談ほっとライン
労働条件相談ほっとラインは、平日17:00〜22:00、土・日・祝日9:00〜21:00(12月29日~1月3日を除く)まで相談可能です。総合労働相談コーナーでは対応できない時間帯をカバーしています。厚生労働省が委託している「株式会社東京リーガルマインド」が受託して運営しています。
専門知識を持つ相談員が、法令・裁判例をふまえた相談が可能です。労働条件相談ほっとラインは、電話相談のみです。また匿名で相談できます。
よりそいホットライン
よりそいホットラインは、24時間対応している相談窓口です。仕事の悩みだけでなく、生活の悩みや将来のことなど、さまざまな悩みに対応しています。電話だけでなくFAXやチャット、SNSでも相談可能です。いつでも相談できることが特徴ですので、まずは悩みを聞いてほしい人におすすめです。
ハローワーク求人ホットライン
ハローワークが紹介している求人情報に応募した人は、ハローワーク求人ホットラインに相談しましょう。全日8:30~17:15(年末年始を除く)まで相談可能です。会社に事実確認を行った上で、会社に対して是正指導をしてくれます。ハローワークで紹介している求人募集しか対応できませんので、注意しましょう。
転職活動における7つの注意点!気をつけるのは求人情報だけではない
転職活動において注意するのは求人情報だけではありません。転職活動時には以下の7つのポイントに注意しましょう。
- 1.労働条件を細部までチェックする
- 2.企業研究など情報収集を徹底する
- 3.円満退職を目指す
- 4.転職活動していることを話さない
- 5.転職スケジュールを考えておく
- 6.内定の回答期限を守る
- 7.機密情報の取り扱いに気をつける
1.労働条件を細部までチェックする
求人情報の労働条件は、細部までチェックしましょう。給与や勤務時間などを見る人は多いですが、福利厚生や残業時間などを確かめきれていない人もいます。
また、募集してから期間が開いている場合は、求人情報が変更になっている可能性があります。採用担当者に求人情報に相違がないか確かめましょう。
2.企業研究など情報収集を徹底する
転職活動において企業研究は重要です。求人情報だけでは、自分に合った会社かどうかの判断が難しいです。そのため、会社のホームページをチェックし、企業理念や求める人物像、必要なスキルなどの情報を集めましょう。
また企業研究を深めることで、志望動機が深まったり、入社後のミスマッチを防げたりなどさまざまなメリットがあります。求人情報だけにとらわれず、企業研究で会社の情報を集めておきましょう。
3.円満退職を目指す
会社を転職・退職するときは、円満退職を目指しましょう。会社との間にトラブルを抱えたまま退職すると、転職活動に悪影響を及ぼす可能性があります。円満退職を目指すコツは、会社の就業規則に則って退職手続きを進めることです。法律上は退職日の2週間前に退職意思を伝えることで退職できます。しかし、円満退職を目指す場合は、就業規則に記載された期間までに退職意思を伝えましょう。
また、引継ぎ作業を徹底することも円満退職には必須です。会社に迷惑がかからないように配慮することを忘れてはいけません。円満退職のやり方については、こちら「円満な退職の伝え方を解説!上司や同僚に伝えるポイントや例文を紹介 – 退職代行ほっとライン」の記事を参考にしてください。
4.転職活動していることを話さない
転職活動していることを会社の人に話してはいけません。仲の良い同僚がうっかり話してしまう可能性もありますので、控えましょう。転職活動していることがバレてしまうと、上司に引き止められてしまいます。また、会社によっては希望する日に有給休暇がもらえなかったり、陰口をいわれたりするので注意しましょう。
転職活動に関するSNSの投稿も控えてください。SNSは匿名でアカウントが作れますので、会社の従業員があなたの情報を見ている可能性があります。不要なトラブルを避けるためにも、会社にバレないように転職活動を進めましょう。
5.転職スケジュールを考えておく
転職活動を始める前に転職スケジュールを考えておきましょう。おおよその入社日を設定し、逆算しながらスケジュールを立てます。有給休暇がある人は消化する期間を踏まえて、退職意思を伝える日を設定します。また、ボーナスを受け取ってから退職したい人は、ボーナスの支給日や支給の条件を確認しましょう。
転職活動は一般的に3~6ヶ月程度かかります。初めて転職する人は、余裕を持って行動できるように意識してください。会社が採用活動を活発にする時期や、現在所属している会社の繁忙期なども加味することも重要です。入社日までに退職できない、といったことがないように気をつけてください。
ボーナスをもらってから退職するスケジュールについては、こちら「ボーナス・賞与をもらって辞めるのは問題なし?逆算スケジュールやポイントを解説します – 退職代行ほっとライン」で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
6.内定の回答期限を守る
応募先から内定通知がくれば回答期限内に返事をしなければなりません。他の会社に応募していなければ、労働条件や入社日などをしっかりと確認してから内定承諾しましょう。他の会社の選考結果を待ちたい場合は、内定を保留したい旨を応募先に伝えます。内定保留は可能ですが、一般的に1週間程度で回答しなければなりません。
複数の会社に応募する場合は、応募する時期を統一することがおすすめです。同じペースで選考を進めていくと、内定結果も同じタイミングでもらえます。
選考の進み具合は会社ごとに異なるので、ズレが生じます。そのため、面接日程を調整して最終面接のタイミングを合わせるように心がけましょう。
7.機密情報の取り扱いに気をつける
転職するときは会社の機密情報を流出させてはいけません。退職時または入社時に誓約書へサインを求められる場合があります。誓約書には「競業避止義務」「機密守秘義務」「顧客情報の持ち出し禁止」などが記載されています。
前職で取引していた会社の情報や個人情報、データや技術などを持ち出すと損害賠償を請求される可能性が高いので注意しましょう。退職時に誓約書へのサインを拒否できるかについては、こちら「退職時に誓約書へのサインは拒否できる?効力や断り方について解説 – 退職代行ほっとライン」の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
まとめ
求人情報と労働条件が違う場合の対処法について紹介しました。求人情報と労働条件が違う場合は、応募先の会社に説明を求めましょう。会社の単なるミスの可能性も考えられます。
求人情報と労働条件が違ったとしても、一概に違法とはいいきれません。状況により違法かどうかが変わりますので、相談窓口に相談することをおすすめします。
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