セクハラの相談先はどこ?12つの無料相談窓口と被害の対策法を紹介

セクハラ被害を受けて悩んでいる人は、非常に多くいます。厚生労働省が発表した「令和5年度雇用環境・均等部(室)における法施行状況について」によれば、セクハラの相談件数は7,414件と男女雇用機会均等法の中でも最も多い相談です。セクハラで悩んでいる人は、どこに相談すればいいか迷ってしまうのではないでしょうか。

本記事は、セクハラの無料の相談窓口12選と被害の対策法について紹介します。自分の状況に合わせて、相談窓口を選びましょう。

本記事の結論

・セクハラの無料相談窓口は、社内の相談窓口・労働基準監督署・労働組合・女性の人権ホットライン・弁護士など
・セクハラを相談する前には、証拠を集めたり、時系列に内容をまとめたりしておく
・セクハラされたら、毅然とした態度で抵抗し、誰かに相談する

セクハラの無料相談窓口【早見表】

相談窓口 メリット デメリット
同僚 ・気軽に話やすい ・問題解決につながりにくい
上司 ・気軽に話しやすい
・軽度のセクハラなら注意できる
・上司が加害者のパターンが多い
社長 ・どのようなセクハラでも指導や処罰を下せる ・社長が加害者のパターンがある
・セクハラ防止に関心がない場合がある
社内の相談窓口 ・相談しやすい
・問題解決につながる
・会社ごとに対応してくれる範囲が異なる
・相談のみで対応してくれない場合がある
労働基準監督署 ・状況に応じて指導や是正勧告してくれる
・プライバシーが保護される
・軽度なセクハラは対応してくれない場合がある
労働局 ・状況に応じて指導や是正勧告してくれる
・セクハラに特化している
・軽度なセクハラは対応してくれない場合がある
労働組合 ・労働者の立場に立って対応してくれる
・会社と団体交渉できる
・強制力はない
・労働組合へ加入が必要
みんなの人権110番 ・気軽に相談しやすい ・ボランティアなので能力や知識に差が出る
女性の人権ホットライン ・女性の悩みを相談しやすい ・ボランティアなので能力や知識に差が出る
警察 ・刑事問題なら解決できる ・性犯罪しか対応できない
法テラス ・無料で3回まで弁護士に相談できる
・裁判の費用を抑えられる
・利用条件がある
・弁護士を好きに選べない
弁護士 ・軽度から重度まで幅広く対応できる
・問題解決しやすい
・初回以降は費用が発生しやすい

各相談窓口のメリット・デメリットをまとめましたので、早見表として参考にしてください。

セクハラの無料相談窓口12選

セクハラ被害を受けた人が、無料で相談できる窓口は以下の通りです。

  • 1.同僚に相談する
  • 2.上司に相談する
  • 3.社長に相談する
  • 4.社内の相談窓口に相談する
  • 5.労働基準監督署(総合労働相談コーナー)に相談する
  • 6.労働局(雇用環境・均等部(室))に相談する
  • 7.労働組合に相談する
  • 8.みんなの人権110番に相談する
  • 9.女性の人権ホットラインに相談する
  • 10.警察に相談する
  • 11.法テラスに相談する
  • 12.弁護士に相談する

それぞれについて見ていきましょう。

1.同僚に相談する

身近で気軽に相談しやすい相談先が同僚です。信頼できる同僚であれば、セクハラの悩みを聞いてくれるため、ストレスの緩和になります。同僚に相談するときは、日常会話や愚痴と取られないように事前に相談事があると伝えておきましょう。悩みを聞いてもらい、一緒に解決策を考えてもらえます。

ただし、同僚には権限がないため解決には導きにくいです。また、場合によっては同僚に話した内容が周りに広がってしまう恐れもあるので注意しましょう。

2.上司に相談する

上司は社員をまとめる立場にいますので、軽度のセクハラであれば注意してもらえる可能性があります。場合によっては上司もセクハラの現場を見ていることがあるでしょう。行動力のある上司の場合、さらに上の上司などに掛け合ってくれるため、解決につながりやすいです。

ただし、悪質なセクハラであれば、上司の注意だけでは収まらない可能性があります。また、上司はセクハラの加害者になりやすいため、相談先として選ばないことが多くあります。

3.社長に相談する

規模の小さい会社であれば、直接社長に相談することも可能です。社長は会社のトップの存在ですので、どのようなセクハラに対しても指導や処罰を下せる権限があります。社長に相談しても解決できないようなセクハラであれば、社内で解決することはありません。

規模の大きい会社では社長と話せません。また、セクハラへの理解が乏しい社長や社長が加害者の場合は、社外の相談窓口に相談しましょう。

4.社内の相談窓口に相談する

会社には、労働者の悩みを聞くための相談窓口が設置されています。会社は、労働者が安全・安心に働ける環境を整える義務(安全配慮義務)があるからです。とくにセクハラに関しては、男女雇用機会均等法第11条で義務付けられているため、セクハラを防止する措置がなされています。

事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

引用元:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 | e-Gov 法令検索

上記のように、社内に相談窓口を設置することが、義務付けられました。しかし、設置することがゴールになっている会社もあります。そのため、相談しても何も対処してもらえないことも少なくありません。社内の相談窓口は、会社ごとに相談できる内容や対処が異なります。相談までしか対応してもらえない会社も多くありますので、注意しましょう。

5.労働基準監督署(総合労働相談コーナー)に相談する

労働基準監督署(総合労働相談コーナー)は、セクハラやパワハラ、いじめ、解雇など、あらゆる分野の労働問題を対象に相談できる窓口です。各都道府県に設置されており、全国で379か所あります。相談する際は、自分の管轄の労働基準監督署に相談しましょう。

多様な言語に対応し、面談もしくは電話で相談可能です。予約は不要で土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)以外は開庁しています。相談者のプライバシーの保護に配慮しながら相談できるので、労働基準監督署に相談したからといって会社にバレることはありません。

労働基準監督署に相談し、労働基準法違反があれば助言指導、是正勧告などを行ってもらえます。ただし、労働基準監督署は相談件数が多いこともあり、重度な違反しか対応してもらえない可能性もあります。相談には乗ってもらえますが、対応が後回しにされることもあるので注意しましょう。

6.労働局(雇用環境・均等部(室))に相談する

労働局の雇用環境・均等部(室)は、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、パートタイム労働法等に関する相談が可能です。基本的には上記で紹介した労働基準監督署と同じだと考えてください。その中でも男女雇用機会均等法、育児介護休業法、パートタイム労働法の3つに特化しているため、セクハラの相談に適しています。

労働局は各都道府県に1か所ずつ配置されています。こちらも予約不要で土・日・祝日・年末年始(12月29日から1月3日)以外は開庁しており、相談は無料です。セクハラ相談に特化している点を除けば、デメリットも労働基準監督署と変わりません。

そのため、労働基準監督署に相談するつもりの人は労働局(雇用環境・均等部(室))に相談しましょう。

7.労働組合に相談する

労働組合は、労働者が主体となり労働条件などを改善するために働きかける団体です。セクハラやパワハラ、解雇、賃金未払いなど、さまざまな労働問題について相談できます。労働組合に相談すれば、会社と団体交渉を行うことが可能です。

団体交渉する場合は、一般的にセクハラの被害者本人も参加します。会社の対応や再発防止の取り組み、場合によっては賠償金などについて交渉します。交渉がまとまれば労働協約を作成し、団体交渉は終了です。

労働組合に相談するのは無料です(一部有料の場合もあります)が、組合に加入していることが条件です。自社に労働組合がない場合は、ユニオンや合同労組であれば誰でも加入できます。

8.みんなの人権110番に相談する

みんなの人権110番は、法務省が管轄する人権一般の相談窓口です。セクハラやパワハラ、いじめなどの相談が可能です。相談は、法務局職員または人権擁護委員が担当し、秘密は厳守されます。一般的には電話で相談しますが、法務局及びその支局の窓口では、面談での相談も可能です。

みんなの人権110番に相談すれば、任意により調査が行われ、人権被害があったかどうかを判断します。調査結果に応じて、法律上の助言や当事者同士の関係調整などが行われます。

人権擁護委員は民間のボランティアなため、労働問題に関する知識やアドバイスに個人差が出ることがデメリットです。また、基本的には自主的な改善を促すことが目的ですので、解決に至らない場合もあります。

9.女性の人権ホットラインに相談する

女性の人権ホットラインも、みんなの人権110番と同じ法務省が管轄する人権一般の相談窓口です。セクハラやストーカー行為、パートナーからの暴力など、女性をめぐる問題に関する相談が可能です。法務局職員または人権擁護委員が担当しますが、より女性の人権問題に詳しい人が担当します。そのため、女性の方はみんなの人権110よりも女性の人権ホットラインに相談しましょう。

デメリットは、上記のみんなの人権110番と変わりません。

10.警察に相談する

警察に相談する場合は、刑法違反の疑いがあるセクハラだった場合です。具体的には不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)が当てはまります。これらは労働違反ではなく、性犯罪として扱われるため警察の管轄内です。

性犯罪と認められれば、加害者を逮捕・送検してもらえます。よほど悪質なセクハラでなければ、相談する機会は少ないでしょう。警察が対応するのは性犯罪ですので、軽度なセクハラや労働基準法違反に当てはまるようなセクハラでは、対応してもらえませんので注意しましょう。

11.法テラスに相談する

法テラスは、国が設立した法的トラブル解決のための「総合案内所」です。セクハラを含め賃金や退職、解雇などあらゆる法的トラブルの相談が可能です。法テラスは、メールや電話、面談での相談ができます。日曜日・祝日・年末年始以外は営業しています。

法テラスは、弁護士との相談を3回まで無料でできるのがメリットです。セクハラ被害を受けて、法的手段を検討している方に向いてます。3回目以降は有料になりますので、注意しましょう。また、弁護士の費用を立て替えてもらえることもメリットの1つです。法テラスを利用すれば、少ない費用で裁判の手続きが進められます。

ただし、無料の法律相談を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。審査に時間がかかり、弁護士を指定できない、といったデメリットもありますので、注意しましょう。

単に相談したい人や現在の状況を改善したい人であれば、他の相談窓口がおすすめです。

12.弁護士に相談する

弁護士は軽度なセクハラから悪質なセクハラまで、幅広く対応できます。法的手段も取れますので、慰謝料の請求も可能です。労働基準監督署などは、相談だけで終わってしまう可能性があるので、しっかりと対応してもらいたい人は弁護士に相談しましょう。

無料で相談できる弁護士もありますが、基本的に2回目以降の相談は有料になるケースがほとんどです。また、弁護士によって得意不得意な分野がありますので、労働問題を得意とし、実績がある弁護士を選びましょう。

セクハラを相談する前に準備しておきたいこと

セクハラを相談する前に以下の2つを準備しておくと、相談した際にスムーズに対応してもらえます。

  • セクハラの証拠を集めておく
  • 時系列に沿ってセクハラ被害をまとめておく

セクハラの証拠を集めておく

相談する前にセクハラの証拠を集めておきましょう。労働基準監督署などは、ある程度の証拠がなければ動いてもらえないケースがあります。また、法的手段を講じてときも、証拠があれば裁判で有利になります。これらを踏まえて、セクハラの証拠は重要です。セクハラの証拠として有効なものは、以下のとおりです。

  • セクハラの音声の録音
  • セクハラ行為をしている動画
  • セクハラにあたるメールやチャットの履歴
  • セクハラ被害を書き留めた日記やメモ
  • セクハラの現場を目撃した人の証言
  • セクハラによって心身に被害を受けたことを示す医師の診断書

セクハラは証拠を残さないように行われることが多いので、セクハラの動画やメールの履歴などの証拠は難しいでしょう。音声の録音であれば、スマホなどをポケットに入れておけばバレないためおすすめです。音声を録音する場合は、加害者の名前をいったり、何をされたのか言葉にしたりして、わかりやすいようにしましょう。

日記やメモに書き留める場合は、継続的に記録することが大切です。場所や状況、何をされたのかなどを忘れないうちに記録しておきましょう。

時系列に沿ってセクハラ被害をまとめておく

相談窓口によっては、相談時間を限定している場合があります。限られた時間の中で的確に伝えるために、時系列で詳細をまとめておきましょう。上手く説明できない場合は、メモした内容をそのまま読み上げても構いません。メモにまとめる場合は、以下の項目をまとめましょう。

  • セクハラされた日時と場所
  • 加害者の名前や役職
  • セクハラの内容(何をされたのか、回数や頻度)
  • セクハラによって受けた身体のダメージ
  • 診療を受けた人は、日時や病院の名前、診断書、通院の回数など
  • 会社に相談した日や会社の対応

被害の状況だけでなく、どのように改善したいかも考えておきましょう。

セクハラされたらときの対策法

セクハラされたときは、行動に移すことが重要です。何もせず受け入れているだけでは、セクハラがエスカレートする可能性があります。セクハラされたときは、以下の対策法を参考にしてください。

  • 毅然とした態度をとる
  • 相談窓口に相談する
  • ハラスメント差し止め要求書を会社に送る

毅然とした態度をとる

セクハラされたときは、毅然とした態度で「やめてください」と断りましょう。何も抵抗しないと、相手は抵抗しないことをいいことに、セクハラを辞めません。セクハラ行為に対して拒否している態度を示すことが大切です。

ただし、相手に歯向かうような態度は避けましょう。返ってセクハラがエスカレートする恐れがあります。

相談窓口に相談する

セクハラされたときは、一人で抱え込まず誰かに相談することをおすすめします。「やめてください」といって辞めるような相手であればよいですが、何度も繰り返しセクハラするようであれば、一人で対処しきれません。本記事で紹介した相談窓口を参考に相談して、アドバイスをもらいましょう。

そのうち辞めてくれるだろう、といった甘い考えでは被害が大きくなりかねません。セクハラされたときは、早めに対処すべきです。

ハラスメント差し止め要求書を会社に送る

会社の対応が悪い場合は、「ハラスメント差し止め要求書」を会社に送りましょう。ハラスメント差し止め要求書は、名前の通り、会社にハラスメントを辞めるよう訴える書面です。ハラスメント差し止め要求書は、以下のように記載します。

〇〇〇〇株式会社

代表取締役社長 〇〇〇〇殿

ハラスメント差し止め要求書

私は令和6年5月ごろより、営業部〇〇課の〇〇氏より、何度もセクハラ行為を受けております。

会議室や事務室などで周りに誰もいないときを狙って、肩や胸などを触られ、心身ともに苦痛を受けております。また、業務とは関係のないプライベートなメールが多く、何度断ってもセクハラ行為を辞めてもらえません。

つきましては、〇〇氏に対しセクハラ行為を早急に中止させ、適切な指導・処罰をなさるよう要求いたします。

令和6年11月11日

営業部〇〇課
〇〇〇〇(自分の名前)印

書面を送るときは内容証明郵便がおすすめです。内容証明郵便で送れば、誰がいつ何を送ったのか郵便局が証明してくれます。そのため、証拠があるため会社はごまかすことができません。

法的手段をとる

セクハラにより退職せざるを得なかった、心身に深い傷を負い会社に出勤できない、など状況に応じて法的手段を検討しましょう。法的手段をとる場合は弁護士に相談してください。労働組合や社内の相談窓口などは、強制力がないので法的手段に対応できません。

セクハラ相談に関するよくある質問

セクハラ相談に関するよくある質問は、以下の通りです。

  • どこからセクハラ行為になりますか?
  • セクハラを友達や後輩に相談されたらどうすればいいですか?
  • 上司からメールが多いのはセクハラになりますか?

それぞれについて見ていきましょう。

どこからセクハラ行為になりますか?

セクハラに明確な定義はありませんので、線引きが難しいです。厚生労働省では、次のように説明しています。職場におけるセクハラは、「職場」において、「労働者」の意に反する「性的な言動」によって、被害者が労働条件について不利益を生じたり、就業環境が害されたりすることです。

例えば以下のような事例がセクハラに当てはまります。

  • 上司が部下の女性に対して腰や胸を触る
  • 女性の従業員に対して性的な話をする
  • 性的な話題を断ったら不利益な配置転換された
  • 仕事に関係のないメールが毎日届く
  • 従業員に性的な噂を流される
  • 執拗にデートを誘われる

一般的には加害者が「男性」、被害者が「女性」であることが多いですが、男性が被害者の場合もあります。セクハラ行為か迷ったときは、社内の相談窓口などに相談してみましょう。

セクハラを友達や後輩に相談されたらどうすればいいですか?

セクハラを友達や後輩、同僚などに相談されたときは、真剣に話を聞いてあげることが重要です。また、精神的に傷ついている可能性がありますので、体調を気遣ってあげましょう。セクハラの内容はプライバシーにかかわるため、むやみやたらに他の人に話してはいけません。相談者との信頼関係を失う可能性や被害がさらに悪化する場合もあります。十分に気を付けましょう。

上司からメールが多いのはセクハラになりますか?

仕事に関係のないプライベートな内容であればセクハラになります。上司に仕事に関係のないメールは控えるように、伝えましょう。

まとめ

セクハラの相談ができる無料の窓口は、以下の12つです。

  • 1.同僚に相談する
  • 2.上司に相談する
  • 3.社長に相談する
  • 4.社内の相談窓口に相談する
  • 5.労働基準監督署(総合労働相談コーナー)に相談する
  • 6.労働局(雇用環境・均等部(室))に相談する
  • 7.労働組合に相談する
  • 8.みんなの人権110番に相談する
  • 9.女性の人権ホットラインに相談する
  • 10.警察に相談する
  • 11.法テラスに相談する
  • 12.弁護士に相談する

状況に応じてどの相談窓口を利用するか考えましょう。また、相談する前はセクハラの証拠を集めたり、時系列にまとめたりすることも大切です。セクハラを一人で抱え込まずに、すぐに誰かに相談することをおすすめします。

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