退職時にトラブルになるケースは少なくありません。退職時期が遅れたり、離職票・源泉徴収票などの書類を発行してくれなかったりといったトラブルが起きると、転職先にも迷惑がかかってしまいます。円満退職を目指すには、どのようなトラブルが起こりうるか事前に把握し、対策しておくことが重要です。
本記事では、退職時によくあるトラブルと対処法について紹介します。また、効率よく退職する方法も解説しますので、参考にしてください。
・退職時によくあるトラブルは、退職を引き止められる、有給休暇を消化できない、退職金を支払ってもらえない、退職意思を伝えると嫌がらせにあうなど
・トラブルに対する対処法は、退職意思を明確に示す、労働基準監督署に相談する、退職代行サービスを利用するなど
・退職時のトラブルを減らすポイントは、就業規則に従って退職意思を伝える、引き継ぎ作業を徹底する、信頼できる人に相談するなど
退職時によくあるトラブルと対処法
退職を決意しても、スムーズに進まないケースは少なくありません。企業によっては退職者に対して不当な扱いをする場合もあり、事前に対策を知っておくことが重要です。
- 退職を引き止められる・退職時期が遅れる
- 退職届を受け取ってもらえない
- 退職時に有給休暇を消化できない
- 退職金を支払ってもらえない
- 退職意思を伝えるとボーナスが支給されなかった
- 退職時の契約書へサインを求められる
- 離職票・源泉徴収票などの書類を発行してくれない
- 退職理由を自己都合退職にさせられた
- 退職意思を伝えると嫌がらせにあう
退職を引き止められる・退職時期が遅れる
退職の意思を伝えると、上司や人事担当者から「今辞められると困る」「もう少し待ってほしい」などと言われることは少なくありません。人手不足の職場や退職意思が弱いと、強く引き止められるケースが多いです。
しかし、法律上、退職の意思を伝えてから2週間が経過すれば退職できます。
就業規則に「1カ月前に申告すること」と記載されている場合でも、民法の規定が優先されるため、基本的には2週間後には退職可能です。
引き止められないようにするには、退職意思を明確に示すことです。退職理由が弱いと、考え直してもらえると思われ引き止められる可能性があります。退職する意思が強いことをアピールしましょう。退職を引き止められたときの断り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:退職を引き止められる人の特徴とは?引き止められた際の上手な断り方を解説します
退職届を受け取ってもらえない
退職届の受理を拒否するケースも少なくありません。人手不足の企業では、社員の退職を認めたくないために意図的に受け取りを拒むことがあります。しかし、退職届は会社の承認が必要なものではなく、労働者が提出すれば法的に有効とされます。もし会社が受け取りを拒否した場合は、退職届を内容証明郵便で送付する方法が有効です。
これにより、受け取りの事実が公的に証明され、会社側の対応に関係なく退職が成立します。そもそも退職届は、必ずしも必要ではありません。提出しなかったとしても退職できます。たとえ、就業規則に「退職時に退職届を出すこと」といったことが明記されていても、憲法で認められた職業選択の自由のほうが効力が強いため、辞められます。
もし、退職届を受け取ってもらえない場合は、口頭で退職する旨を伝えておけばよいでしょう。無駄なトラブルを避けたい人は、退職代行サービスを利用するとスムーズに退職できます。
また、退職届と退職願の違いを理解しておくことも重要です。退職願は会社に退職の許可を求める書類であり、撤回が可能です。一方、退職届は退職の意思を明確に示すものであり、受理されなくても効力が発生します。したがって、確実に退職を実行するためには、退職届を作成し、適切な手続きを踏むことが大切です。
退職時に有給休暇を消化できない
有給休暇の取得は労働者の権利ですが、退職時に「人手不足だから取らせられない」「有休消化すれば引き継ぎに支障が出るから取らないでほしい」などと会社側が制限する場合があります。しかし、法律上、有給休暇は労働者が自由に取得できるものであり、会社の都合で拒否できません。
また、会社には時季変更権があり有給休暇の取得する時期を変更できる権利があります。しかし、この権利は退職時には認められないケースがほとんどです。退職日が決まっているので、取得時期を遅らせられないからです。
退職前に有給休暇を消化することは、多くの裁判例でも認められており、労働基準法にも違反しません。有給休暇を取得する意向を事前に伝え、退職日までのスケジュールを明確にすることで、有休消化しやすくなります。
それでも会社が拒否する場合は、書面で有給休暇の取得を申請し、証拠を残しておくことが重要です。また、労働基準監督署に相談し、会社の対応が違法であることを指摘することも有効な手段となります。退職時に有休消化できないときの対処法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:退職時に有給消化できない時の対処法は?有給の消化方法と違法について解説
退職金を支払ってもらえない
退職金は、長年の勤労に対する感謝の意味を込めた重要な報酬です。しかし、退職の意思を伝えると、会社が退職金を支払わないと主張するケースも少なくありません。このような場合、まずは労働契約書や就業規則を確認しましょう。
一般的には、退職金の支給条件が就業規則に明記されています。支給条件を満たしているにもかかわらず、退職意思を伝えたことで退職金を支払ってもらえない場合は、労働基準法を違反している可能性が高いです。労働基準監督署や弁護士に相談して、退職金を支払ってもらいましょう。
退職金に関する規定が就業規則に記されていない場合、退職金を支払ってもらえないことがあります。そもそも、退職金は法律で定められていないため、会社が支払わなくても違法ではありません。そのため、就業規則に明確な規定が記されていなければ、会社は退職金を支払わなくても問題ありません。
退職意思を伝えるとボーナスが支給されなかった
退職金と同様のトラブルとして、退職意思を伝えるとボーナスが支給されないケースがあります。ボーナス支給のタイミングが退職の時期に重なると、会社が不利益な扱いをすることも少なくありません。
ボーナスについても退職金と同様に、就業規則に規定がないか確かめましょう。ボーナスも法律で定められていないため、会社に支払う義務がありません。そのため、就業規則に規定がなければ支給されなかったとしても違法ではないのです。
就業規則に規定があり、条件を満たしている場合は、ボーナスを受け取れます。退職意思を伝えたことで支給されないのは違法です。労働基準監督署や弁護士に相談して、会社を訴えましょう。なお、ボーナスをもらってから退職する方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
関連記事:ボーナス・賞与をもらって辞めるのは問題なし?逆算スケジュールやポイントを解説します
退職時の契約書へサインを求められる
退職時に契約書へのサインを求められる場合、契約書に記載された内容を十分に理解することが重要です。契約書には、競業避止義務や機密守秘義務などに関する内容が書かれているケースがあります。何も確認せずにサインすると、転職後に損害賠償を請求される可能性もあるので注意しましょう。
例えば、競業避止義務に関する制約が記されている場合、競合にあたる会社や組織に転職すると違法になってしまいます。労働者には職業選択の自由(憲法第22条)がありますので、すべてを制限できませんが、転職時に選択肢が減ってしまいます。
契約書へサインを求めらた場合、内容をしっかり確認し、不明な点があれば、納得できるまで説明を受けることが大切です。また、契約書の内容が不利なものであれば、サインを拒否することも可能です。サインを拒否しても違法になりませんので安心してください。
サインを拒否したことで会社とトラブルになる可能性もあります。無駄なトラブルを避けたい人は、退職代行サービスを利用しましょう。
また、退職時の誓約書へのサインについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
関連記事:退職時に誓約書へのサインは拒否できる?効力や断り方について解説
離職票・源泉徴収票などの書類を発行してくれない
退職後に離職票や源泉徴収票などの書類が発行されないトラブルも多く見られます。これらは、次の職場への転職や税務手続きにおいて重要な書類です。書類を発行してくれない場合は、会社に連絡して請求しましょう。
会社の勘違いや、手続きのミスによって発行されないケースも少なくありません。一方で、嫌がらせなどにより意図的に発行してもらえないケースもあります。この場合は、請求書に発行を求める理由を明記し、送付してください。
文面に残すことで請求したことが証拠に残りますので、訴えるときに役立ちます。もし、会社が応じない場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することが効果的です。詳しい対処法については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:離職票をもらえない時はどうするべき?対処法と理由、違法性について解説します
退職理由を自己都合退職にさせられた
退職理由を自己都合退職にされてしまうことは、気を付けたいトラブルの一つです。会社によっては、退職理由を勝手に変更しようとする場合があります。会社が意図的に退職理由を自己都合退職にしたことで、退職者に不利益が生じた場合、不法行為にあたります。
このような状況になった場合、まずは会社に連絡して自己都合退職になっていることを報告しましょう。会社のミスによる場合も考えられるからです。離職票の記載の訂正を求めても応じない場合、ハローワークに離職票を提出する際に「⑯離職者本人の判断」の「事業主が○を付けた離職理由に異議有り・無し」の「有り」に〇を付けて、異議を申し立てましょう。
会社都合退職を裏付ける証拠があれば、変更が認められやすくなります。会社とのメールなどを見直し、証拠になるものがないか確かめましょう。
退職意思を伝えると嫌がらせにあう
退職の意思を伝えたことで、会社から嫌がらせを受けることもあります。嫌がらせの内容によっては、労働基準監督署に相談することで是正申告してもらえます。ただし、労働基準監督署は労働基準法に違反する行為しか対応してもらえません。状況に応じて、労働組合や弁護士にも相談しましょう。
嫌がらせされたときは、嫌がらせの内容を記録し、証拠を残すことが大切です。メモやメール、録音など、証拠を集めることで後の対処がスムーズになります。嫌がらせやパワハラなどの被害に遭いたくない場合は、退職代行サービスがおすすめです。退職代行サービスを利用すれば、退職手続きを代行してもらえますので、直接会社とやり取りする必要がなくなります。
会社に出社したくない場合は、即日退職も可能です。即日退職のやり方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:即日で退職することは可能?即日退職の条件・やり方・注意点をわかりやすく解説!
退職時のトラブルを減らすポイント
退職をスムーズに進めるためには、トラブルを未然に防ぐことが重要です。適切な手続きやマナーを守ることで、会社との関係を良好に保ちながら退職できます。
- 就業規則に従って退職意思を伝える
- 退職するからといって仕事に手を抜かない
- 引き継ぎ作業を徹底する
- 退職前に信頼できる人に相談する
就業規則に従って退職意思を伝える
退職意思を伝える際には、まず就業規則を確認することが重要です。多くの企業では、退職に関するルールが就業規則に規定されており、具体的な手続きや通知期間が定められています。就業規則に従って退職意思を伝えれば、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
例えば、退職の申し出をする際には、上司に対して口頭で伝えた後、正式な書面での通知を行うことが求められる場合があります。この手続きを守ることで、会社側にも配慮を示し、良好な関係を保ったまま退職することが可能です。また、退職の意向を伝えるタイミングも重要です。
可能な限り、業務の繁忙期を避けて申し出ることで、会社に対する配慮を示せるでしょう。
退職するからといって仕事に手を抜かない
退職の意思を伝えたからといって、仕事に手を抜くことは厳禁です。最後まで誠実に業務を行うことは、会社との関係を良好に保つために重要です。職場での信頼を損なわないためには、これまで通り業務に全力を尽くす姿勢が求められます。
仕事を適当に終わらせると、同僚や後任に負担をかけることになり、結果的にトラブルを引き起こす原因となります。
とくに、退職後に同じ業界で働く可能性がある場合は、悪い印象を与えないよう心掛けることが大切です。このように、最後まで責任を持った行動を取ることが、退職時のトラブルを減らす一因となるでしょう。
引き継ぎ作業を徹底する
引き継ぎ作業は、退職時において非常に重要なプロセスです。引き継ぎを怠ると、残された従業員に迷惑をかける可能性があるため、計画的に行うことが重要です。まずは後継人に業務の流れや重要な情報を提供したり、一緒に作業を行い、業務の進め方を直接教えたりするとよいでしょう。
また、引き継ぎ後も後任者からの質問に対応する姿勢を持つことで、職場への配慮を示せます。これにより、退職後も良好な関係を保つことができ、トラブルを避けられるでしょう。
退職前に信頼できる人に相談する
退職を考える際、信頼できる人に相談することも有効な方法の一つです。同じ職場で働く人や、過去に退職を経験した人の意見を聞くことで、実際の状況や注意点を把握できるでしょう。相談を通じて、自分が考えている退職理由や方法に対するアドバイスを受けられれば、事前にトラブルを回避する手助けになります。
また、信頼できる人に話すことで、不安や悩みを軽減でき、精神的なサポートにもつながります。退職に関する具体的な手続きや、業務の引き継ぎについてもアドバイスをもらえるため、準備を万全に進めることが可能です。
退職時のトラブルによって懲戒処分になるケース
退職時には、さまざまなトラブルが発生することがありますが、とくに注意が必要なのは懲戒処分の対象となる行為です。懲戒処分は、従業員にとってキャリアに影響を与えるリスクがあります。
- 退職意思を伝えて無断欠勤する
- 2週間前までに退職意思を伝えず退職する
- 会社の支援制度を利用してすぐに退職する
- 正当な理由もなく有期雇用契約の人が退職する
- 他の従業員も一緒に引き抜きして退職する
- 会社に何らかの損害を与えてから退職する
退職意思を伝えて無断欠勤する
法律上、退職日の2週間前に退職意思を伝えれば退職できます。そのため、退職意思を伝えて無断欠勤しようと考える人もいるでしょう。しかし、無断欠勤は非常にリスクが高い行動です。とくに、業務において自分が担当している重要な仕事がある場合、無断欠勤することで会社に損害を与えかねません。
こうした行為は、就業規則に反することが多く、懲戒処分の対象となる可能性があります。最悪の場合は、懲戒解雇になる可能性も考えられます。そのため、退職を考えている場合でも、無断で欠勤せず、きちんと上司や人事に報告を行うことが重要です。とくに円満退職するためには、最後まで責任を持って業務を遂行する姿勢を大切にすることが求められます。
2週間前までに退職意思を伝えず退職する
上記でも述べた通り、退職日の2週間前に退職意思を伝えなければ労働基準法に違反します。このように何も伝えずバックレてもメリットはゼロです。バックレて2週間以上連絡をしない場合、たいていのケースで懲戒解雇になります。退職金やボーナスが支給されないケースが多いため、これまでの働きが無駄になってしまいます。
また、最悪の場合は損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。可能性としては低いですが、バックレたことで会社に損害が生じた場合は、請求されることがあります。
会社の支援制度を利用してすぐに退職する
会社の支援制度を利用し、短期間で退職する行為も懲戒処分の対象となる可能性があります。支援制度は、通常、社員の成長やキャリアアップを目的として設けられています。しかし、支援制度を利用してすぐに退職する場合、企業側から見れば不誠実な行為とみなされることも少なくありません。
例えば、教育や研修を受けてからすぐに退職することで、企業が投資したコストを無駄にすることになります。このように、業務上の義務や責任を果たしていない場合、懲戒処分に至ることが多いです。
正当な理由もなく有期雇用契約の人が退職する
有期雇用契約で働く従業員が、正当な理由もなく退職をする場合、懲戒処分を受ける可能性があります。有期雇用契約は、特定の期間において業務を行うことを前提としており、契約の途中で退職することは企業にとっても大きな負担となります。
契約終了までの期間が残っている場合、業務の引き継ぎや人員補充が必要になるため、懲戒処分を受ける可能性が高いです。退職を考える際には、まずは自分の状況や職場環境を見直し、必要であれば上司や人事に相談することが重要です。
契約期間中でも辞める方法と注意点については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。
関連記事:派遣社員を今すぐ辞めたい!契約期間中でも辞める方法と注意点を解説
他の従業員も一緒に引き抜きして退職する
他の従業員を引き抜く形で退職する行為は、企業に対する重大な背信行為ですので、原則として違法です。労働者は、会社の不利益になる行為をしてはいけない義務(誠実義務)があります。引き抜き行為は競業避止義務に反する行為ですので、損害賠償の対象となります。損害としては、引き抜かれた社員の採用コスト、教育コスト、後継人を探すコストなどの費用です。
会社に何らかの損害を与えてから退職する
会社の財産を故意に損なう行為や、業務に対する妨害行為など、何らかの損害を与えてから退職した場合は懲戒処分に当てはまります。例えば、会社の備品を壊す、会社のデータを削除する、会社のデータを流出させるなどです。
こうした行為は、懲戒処分はもちろん、場合によっては刑事責任を問われることもあるため、非常に危険な行為と言えるでしょう。
「退職するから関係ない」「退職するからばれない」といった浅はかな考えは危険です。どのような行動が自分や会社に影響を与えるかを十分に考えた上で行動しましょう。
効率よく退職するなら退職代行サービスがおすすめ
退職時にトラブルを避けて効率よく退職したい人は、退職代行サービスがおすすめです。退職代行サービスを利用すれば、直接会社とやり取りすることなく退職できます。退職時のストレスが軽減されるとともに、手続きを代行してもらえるので転職活動に専念できるのがメリットです。
また、退職に関する豊富な知識を持ったアドバイザーに、トラブルを避けるためのアドバイスや、適切な退職の進め方について相談できます。
「会社に行かずに退職したい」「自分で退職を伝えるのが怖い」といった悩みを解決することが可能です。
まとめ
退職時に引き止められる、退職金が支払われない、有休消化できないといったトラブルはよくあります。
トラブルの内容によっては、転職先に迷惑がかかるだけでなく、懲戒処分を科される可能性もあるので注意しましょう。そのため、退職を検討している人は、どのようなトラブルがあるのか事前に把握し、未然に防げるように対処しましょう。
トラブルを避けて退職したい場合、退職代行サービスがおすすめです。退職代行ほっとラインでは、最安値を追求した価格でサービスを提供しています。満足いかない場合は、全額返金保証もあるので安心して利用できます。退職に関する悩みがある人は、ぜひ相談してください。
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