いじめは子どもだけでなく、職場でも行われています。「職場いじめ」は深刻な問題であり、許されるものではありません。職場いじめはパワハラの1種であり、厳正な対象が必要です。
本記事では、職場いじめによくある事例と対処法について詳しく解説しています。1人で悩んでいる人は、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談しましょう。
・「同じミスが多い」「自己主張ができない」人は、職場いじめの対象になりやすい
・職場いじめに遭ったときは、誰かに相談したり、証拠を集めたりするのが良い
・相談窓口としては「社内の相談窓口」「総合労働相談コーナー」がある
職場いじめによくある事例8選
職場いじめによくある事例としては、以下の8つがあります。
- 暴力を振るわれる、暴言を吐かれる
- 仲間外れ、無視される
- 嫌味や陰口を言われる
- 無理難題な要求をされる
- 必要以上に指導・責される
- 業務を与えてもらえない
- 会社を休めない
- 責任を押し付けられる、成果を奪われる
この8つのどれかに身に覚えがある人は、職場いじめに遭っている可能性があります。誰かに相談する、いじめの証拠を集めるなど対策しましょう。
暴力を振るわれる、暴言を吐かれる
殴る・蹴るといった暴力行為や威嚇行為は、職場いじめに当てはまります。職場いじめの範囲を超えていれば、暴行罪や侮辱罪にもなりかねません。例えば、以下のようなケースは、暴行罪や侮辱罪に適用されるケ可能性があります。
- 暴行罪:「上司にお腹を殴られた」「ペットボトルで頭を叩かれた」など、直接暴力を振るわれた
- 侮辱罪:「お前みたいなクズは仕事を辞めろ」「早く動けデブ」など、暴言で罵られた
- 脅迫罪:「次ミスしたら減給だからな」「2日以内に資料を作らないとクビだからな」などの言葉で脅された
上記のような行為が続くようであれば、法的措置をとって対処することを検討しましょう。
仲間外れ、無視される
仲間外れや無視も職場いじめとしてよくある事例です。暴力と違って直接体へのダメージはありませんが、精神的なダメージを受けます。具体的には以下のような行為があれば、職場いじめを受けていると考えてください。
- 毎日挨拶をしても返されない
- 特に忙しくもない日であっても会話をしてくれない
- 必要な資料が共有されない
- 全員が知っている連絡を受けていない
周囲とコミュニケーショが取れなければ、業務に支障が出ます。従業員と連携が取れなくなり、他の従業員の足を引っ張る場合もあります。
嫌味や陰口を言われる
嫌味や陰口も日常的に続くようであれば、れっきとした職場いじめです。嫌味や陰口は表面化しづらいですが、精神的にダメージが蓄積されます。具体的には以下のような行為が、職場いじめを受けていると考えてください。
- 同僚から悪評を流されていること聞いた
- 成績が優秀であることを妬まれ「新入社員のくせに生意気だ」と言われた
- 自分の知らないところで「上司と不倫している」と事実無根の情報を流された
- 「顔で採用されただけ」と嫌味を言われた
嫌味や陰口は、直接的な攻撃ではありませんが、差別的な内容が多く慰謝料の請求も可能です。
無理難題な要求をされる
達成できない無理難題な要求も、職場いじめに当てはまります。具体的には以下のような行為です。
- 通常一週間欠けて行う業務を1日でするように言われる
- 終業時間ギリギリに膨大な仕事を押し付けられる
- 1日では終われない仕事量を任される
- 引継ぎがほとんどない状態で作業を任された
上記のように通常業務では、達成できないようなことを求められます。また「達成できなれば給与を減らす」など脅される可能性も考えられます。
必要以上に指導・叱責される
仕事をミスすると注意されてたり、責されたりするのは当然です。しかし、必要以上に指導・責することは職場いじめに当てはまります。具体的には以下のような行為です。
- 大声で怒鳴られながら指導される
- 必要のない反省文を何枚も書かされる
- わざと他人の目の前に行き指導する
- 仕事のミスとは無関係だと明白だが、私生活やプライベートが原因と指摘される
上記のような職場いじめは、1度対象にされると継続的して被害に遭います。とくに能力の低い人や普段からミスが多い人は、いじめの対象にされやすいです。誰しもミスはありますが、常に監視されているというプレッシャーから、さらにミスが増えてしまうでしょう。
業務を与えてもらえない
業務がなければ楽に感じられるかもしれませんが、実際は業務を与えてもらえないと苦痛になります。仕事する上では、業務をこなすことで自分の存在価値を証明します。業務を与えてもらえないことは、「価値がない」と言われているようなものです。
また業務を与えてもらっても、雑務や草むしり、掃除など、本来の業務を与えてもらえないケースもあります。例えば以下ような事例は、職場いじめに当てはまります。
- 営業職に配属されたが、業務内容がゴミ拾いや掃除ばかり
- 業務に対する具体的な指示がなく、「好きにして」と言われる
- 同僚よりも明らかに与えられる仕事量が少ない
- 雑務や事務作業しかやらせてもらえない
- 不合理な理由で業務から外される
会社を休めない
職場いじめが深刻化すると、休憩時間や休日が取れなくなることも少なくありません。休憩や有給休暇などは、労働者の権利であり、取らせないのは違法です。労働基準法第34条には、以下のように記されています。
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
労働時間に応じて45~60分の休息時間が必要です。もし、理不尽な理由で休息を与えてもらえない場合は、社内の相談窓口などに相談しましょう。
また労働基準法第35条には、以下のように記されています。
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
週休2日の会社が多いですが、法律上では週休1日でも問題ありません。週休1日とありますが、半休(半日出勤)を2回しても1休とはならないので、注意しましょう。
責任を押し付けられる、成果を奪われる
会社は従業員が一丸となって成果を上げます。しかし、職場いじめをする加害者は、自分の利益のために成果を横取りし、逆に不利益になることは責任を押し付けてくるのです。とくに陰湿な加害者ほど、周囲にバレないように責任を押し付けたり、成果を奪ったりします。
そのため、職場いじめの被害者は不利益な状況に陥りやすく、社内の居場所がなくなってしまいます。
職場いじめの対象になりやすい人の特徴
「いじめられる側に問題がある」という認識は、明確な誤りです。いじめている人が、罰せられるべきであり、100%悪いといえます。職場いじめに遭う人には共通の特徴があります。
以下の5つの特徴を理解し、自分が変わることで職場いじめの対象から逃れましょう。
- 同じミスが多い
- 遅刻や欠勤が多い
- 自己主張できない
- 優秀で仕事が良くできる
- 他人の意見を聞かない
それぞれについて解説します。
同じミスが多い
人間誰しもミスをします。しかし、同じミスが多いマイナスなイメージを抱かれ、職場いじめの対象になりやすいです。ミスが多いと他の従業員にも迷惑がかかります。中には同じミスをしていることにストレスを感じる人もいるでしょう。そのストレスが蓄積され、口調が荒くなり、職場いじめへと発展します。
ミスを100%防ぐことはできませんが、ダブルチェックするなどミスが増えないようにしましょう。ミスが多いと職場いじめにつながるだけでなく、単純に自分の評価を下がる行為です。もちろん他の従業員にも迷惑になるため、減らせるように努めましょう。
遅刻や欠勤が多い
遅刻や欠勤も上記と同じで、他の従業員に迷惑がかかります。そもそも遅刻や欠勤が多いことは、ビジネスマナーに違反しています。社会人としてあるまじき行為であるため、遅刻や欠勤をしてはいけません。
普段から真面目に働いている人が、遅刻や欠勤をしても職場いじめにつながりません。しかし、普段から遅刻や欠勤が多い人は、評価が低くなっているため職場いじめにつながりやすいです。日ごろの勤務態度は、しっかり周りに見られているため、真面目に勤務するように心がけましょう。
自己主張できない
普段からおとなしい人や自己主張が少ない人は、職場いじめの対象になりやすいです。自己主張が少ない人は、「いじめても抵抗しなさそう」だと思われています。甘く見られすぎるとストレスのはけ口になるので、注意しましょう。
また自己主張が強すぎても「空気が読めない」「協調性がない」といった印象を与えてしまいます。とくに組織が大きくなればなるほど、和を乱すものはいじめの対象になりやすいです。周りに合わせてつつ、状況に合わせて自分の意見を主張できるように、心がけましょう。
優秀で仕事が良くできる
優秀すぎる人や容姿端麗の人は、他者から妬みや嫉みを生じやすいです。とくに自分よりも後に入社したにもかかわらず、自分よりも仕事ができる場合、面白くないと感じる社員も少なくありません。
初めは面白くないと感じるだけであっても、徐々にエスカレートしていき、職場いじめに発展するケースもあります。もちろん被害者からすれば、「真面目に仕事をしているだけなのに」と思うかもしれません。
社会はさまざまな人がいます。年齢が上であっても自分よりも幼稚な行動をしている人もいます。なるべく加害者も反感を買わずに、謙虚な姿勢を心がけましょう。
他人の意見を聞かない
社会人の先輩は自分よりも経験が豊富であり、ためになるアドバイスをもらえます。しかし、中には自分ルールにこだわりすぎて、他人の意見を聞かない人も少なくありません。部下のためを思ったアドバイスであても、誤りを認めず、反抗的な態度を取っていれば、好意を無駄にされたと感じるでしょう。
その結果、「〇〇はアドバイスを聞かない」「頑固だ」「協調性が欠けている」といったマイナスの評価が社内に広がり、職場いじめへとつながります。
自分がすべて正しいとは限りません。固定観念を捨てて、柔軟に対応できるように心がけましょう。とくに上司や先輩のアドバイスには耳を傾けましょう。よほど不合理なことでなければ、素直にアドバイスを聞き入れることが大切です。
職場いじめに遭ったときの対処法
職場いじめに遭ったときは、そのまま放置するのではなく対処しましょう。何もしなければいじめが深刻化する場合があります。職場いじめに遭ったときの対処法としては、以下の4つがおすすめです。
- 信頼できる人に相談する
- 職場いじめに遭った証拠を集める
- 毅然とした態度で拒絶する
- 退職・転職を視野に入れる
それぞれについて解説します。
信頼できる人に相談する
職場いじめに遭ったとき、まずは信頼できる人に相談しましょう。職場いじめに対して1人で対処することは難しいため、自分の味方になる人を見つけることが大切です。
例えば、上司に相談し、上司が加害者に直接話をすることでいじめがなくなる場合もあります。1人で抱え込まず、誰かに相談することで、気持ちも楽になります。
上司が加害者の場合は、「社内の相談窓口」「ハラスメント悩み相談室」「総合労働相談コーナー」といった相談窓口を利用しましょう。それぞれについては、後ほど詳しく解説しますので、参考にしてください。
職場いじめに遭った証拠を集める
職場いじめに立ち向かっていくには、いじめに遭っている証拠が必要です。とくに懲戒処分や慰謝料の請求など、法的手段を取るときは、職場いじめに遭って証拠が必須です。具体的には以下のような証拠を収集しましょう。
- 暴言や罵声を浴びている音声の録音
- 実際に暴力を振るわれたときの動画
- 暴言や誹謗中傷の発言が記載されたメール・LINEなど
- 職場いじめに遭った日にちや状況を書いた日記・メモ
- 他の社員の目撃証言
- 医師による診断書(うつ病や精神疾患など)
証拠が多ければ多いほど、職場いじめに遭ったことを証明しやすくなります。1回被害にあった証拠だけでなく、継続的かつ日常的に被害に遭っていることを証明できれば有利になります。証拠はいくつあってもかまいませんので、できるだけ多くの証拠を集めておきましょう。
毅然とした態度で拒絶する
職場いじめに遭ったと認識した時点で、拒絶することが大切です。被害者が何も抵抗しないと、いじめがエスカレートする可能性があります。毅然とした態度で「不愉快だ」「やめてほしい」と拒絶すれば、いじめが収まる場合があります。
仕返しや過度に拒絶することはよくありませんが、ずっと我慢し続ける必要もありません。あまり気にならない程度であれば、無視していればいいですが、エスカレートしそうであれば対処しましょう。
ただし、加害者によっては毅然とした態度で拒絶すると「生意気だ」と、反感を買う場合もあります。その場合は、いじめの証拠を集めたり、誰かに相談したりなど、他の対処法を実施しましょう。
退職・転職を視野に入れる
職場いじめに耐えられない場合は、退職や転職も視野に入れましょう。以下のような状況に陥った場合は、退職や転職がおすすめです。
- 上司や会社に相談したけど対処してもらえない
- 職場いじめがエスカレートしている
- うつ病や精神疾患など精神的ダメージが大きい
- 社内に味方が1人もいない
- 会社に出勤することが憂鬱になる
今の会社がすべてではありません。とくに上司や会社に相談しても対処してもらえないような会社は、改善の余地がありません。より職場環境の整った会社で働くことをおすすめします。職場いじめがひどく、すぐにでも会社を辞めたい人は、即日退職のやり方を紹介していますので、以下の記事を参考にしてください。
参考:即日で退職することは可能?即日退職の条件・やり方・注意点をわかりやすく解説!
職場いじめの相談窓口
職場いじめに遭ったときは、誰かに相談することがおすすめです。相談窓口としては、以下の3つがあります。
- 社内の相談窓口
- 総合労働相談コーナー
- 弁護士
それぞれについて解説します。
社内の相談窓口
職場いじめやハラスメントが社会問題になっていることから、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月からハラスメント相談窓口の設置が法律で義務化されました。労働施策総合推進法第30条に記された内容は、以下の通りです。
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
陰湿な職場いじめは、上層部の目が届かない範囲で行われているため、社内の相談窓口を利用して上層部まで報告しましょう。上層部に伝われば、何かしらの対策が講じられるはずです。もし、何も行動を移さない場合は、社外の相談窓口を利用してください。
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーは、職場のトラブルを無料で相談できる相談窓口です。職場いじめやパワハラ、嫌がらせなどあらゆる分野の労働問題を対象にしています。予約は不要で、専門の相談員と面談もしくは電話で相談できます。
労働基準法の法律に違反する疑いがある場合、行政指導の権限を持つ担当者に取り次ぐため、いじめを訴えたい人にもおすすめです。土日祝日と年末年始を除く日であればいつでも相談できます。相談受付時間は、各エリアごとにことなりますので、詳しくは「総合労働相談コーナーのご案内」を確認してください
弁護士
労働問題に詳しい弁護士であれば、職場いじめの解決策を提案してくれます。法的手続きや交渉などの対応が可能なため、いじめを訴えたい人におすすめです。弁護士への相談は無料ではありません。そのため、いじめ被害が深刻で法的手段を取りたい場合に利用しましょう。
弁護士を選ぶときは、職場いじめに関する実績や経験が豊富にあるか確かめてから依頼しましょう。
職場いじめに関するよくある質問
職場いじめに関するよくある質問は、以下の通りです。
- 職場いじめの加害者を裁判で訴えることはできる?
- 職場いじめは気にしないでいいの?
- 職場いじめの証拠がないときはどうすればいい?
それぞれについて解説します。
職場いじめの加害者を裁判で訴えることはできる?
職場いじめの加害者を裁判で訴えることは可能です。加害者を訴える場合、「民法709条(不法行為)」を理由に損害賠償を請求できます。不法行為は以下の通りです。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
損害賠償を請求するには法的な証拠が必要です。そのため、事前に証拠を集めておく必要があります。法的な手段を取るときは、知識のある弁護士などに相談しましょう。
職場いじめは気にしないでいいの?
被害者本人が気にならない程度であれば、気にしなくても構いません。ただし、何も抵抗しなければ職場いじめがエスカレートする可能性もあります。そのため、まずは信頼できる誰かに相談しましょう。
職場いじめの証拠がないときはどうすればいい?
今からでも遅くないので少しずつ証拠を集めていきましょう。直接的な証拠がないときは、間接的な証拠でも構いません。第三者の証言やいじめ被害をメモするなど、定期的に記録しておきましょう。
まとめ
職場いじめやハラスメントは、社会問題にもなっており無視できません。いじめ被害を放置していれば、エスカレートする可能性があります。そのため、まずは社内の相談窓口などを利用して、誰かに相談しましょう。
また、職場いじめに遭っていることがわかるように、証拠を集めることも大切です。
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