「退職を決意したが、いつ退職届を出せばいいかわからない」と悩む人は多いのではないでしょうか。退職届を出すタイミングとしては「退職を決意したらすぐ」が正解です。早めに退職届を提出し、退職準備を進めることが、円満退職の秘訣になります。
本記事では、退職届を出すタイミングや、退職届の書き方・出し方について解説します。
・すぐに退職したい人は2週間前に伝えればOK
・退職届を出すときは、忙しい時間帯や時期を避ける
退職届を出す最適なタイミングは?
退職を決意すればすぐに退職届を出しましょう。具体的には、以下の4つについて詳しく紹介します。
- 退職する1ヶ月前には提出する
- すぐに退職したい場合は2週間前でも可能
- 時間に余裕がある人は賞与・ボーナス後
- 退職届を出すタイミングは雇用形態で異なる
退職する1ヶ月前には退職届を提出する
退職を決意すれば、1ヶ月~3ヶ月前には退職届を提出しましょう。何日前に提出すべきかは、会社ごとに異なります。会社が定めている就業規則に記載がありますので、確認しましょう。記載がない場合は、一般的も1ヶ月~3ヶ月前に退職届を提出するのが好ましいです。
なるべく早く退職意思を伝えることが大切です。
退職するとなれば、あなたの代わりとなる人材を見つけなければなりません。その人材に引き継ぐ準備期間が必要です。また有給休暇を消化する場合は、自分が休みたい日数を踏まえた上で早めに伝えましょう。
すぐに退職したい場合は2週間前でも可能
中にはすぐに退職したいと考えている人もいるのではないでしょうか。法律上では、2週間前に退職意思を伝えれば辞めることが可能です。これは、民法第627条で定められています。ただし、急に退職届を提出すれば、会社側に迷惑がかかります。
そのため、円満退職を希望する人は、なるべく早めに退職届を提出しましょう。
時間に余裕がある人は賞与・ボーナス後
退職届を出すタイミングとしておすすめなのが、賞与(ボーナス)をもらった後です。賞与をもらう前に退職意思を伝えてしまうと、減額または支給されない可能性があります。
そもそも賞与は法律で定められていないため、支払う必要のないお金です。そのため、減額や支給されなかったとしても法律違反ではありません。
また賞与をもらった直後に退職意思を伝えると、悪い印象を与えてしまう可能性があります。賞与をもらってから半月または1カ月後くらいに退職意思を伝えるといいでしょう。
退職届を出すタイミングは雇用形態で異なる
どの雇用形態であったも退職を決意したら、すぐに伝えることがタイミングとして正しいです。ただし、退職届を出すタイミングについては、民法でルールが定められています。
雇用形態 | 退職届を出すタイミング | 民法 |
---|---|---|
期間の定めのない雇用契約(正社員など) | 2週間前まで | 民法第627条1項 |
6ヶ月以上の期間によって報酬を定めた場合 | 3カ月前まで | 民法第627条3項 |
期間の定めのある雇用契約(契約社員、アルバイトなど) | 決まっていない | 民法第628条 |
期間の定めのある雇用契約を結んでいる人は、契約途中では辞められません。
契約期間中に辞める場合は、「やむを得ない事業」や「会社の合意」が必要です。
どちらかがあれば、即日辞めることもできますが、基本的には早めに伝えておきましょう。
退職届を出すタイミングで注意すること
退職届を出すタイミングとして、注意することは以下の3つです。
- 忙しい時期(繁忙期)は避ける
- 有給消化を見越して退職届を出すタイミングを考える
- なるべく就業時間後に伝える
それぞれについて解説します。
忙しい時期(繁忙期)は避ける
忙しい時間帯や繁忙期に退職届を提出しても、対応してもらえない可能性があるため注意しましょう。一般的に年末(12月)や年度末(3月)は、退職者が多くなる時期です。区切り目に合わせて退職すれば、引継ぎ作業もスムーズにでき、会社側としても都合がよくなります。
また、時間に余裕ができやすい「閑散期」も退職届を出すタイミングとして最適です。逆に繁忙期や人事異動の直後、大きなプロジェクトの途中などは、退職届を出すタイミングとして避けるべきです。辞めにくくなるだけでなく、引継ぎもしにくいためおすすめできません。
繁忙期や閑散期は、自分の属している業界によって異なります。忙しい時期かどうか判断した上で、退職届を出しましょう。
有給消化を見越して退職届を出すタイミングを考える
有給休暇を消化したい人は、消化する日数を見越して退職届を出すタイミングを考えましょう。例えば、有給休暇を20日紹介する場合、週2回休みが必要なのですべて消化するまでに約1ヶ月かかります。
1ヶ月前に退職届を提出してしまうと、有休消化で休んでいるため引継ぎ作業が全くできません。引継ぎ作業などを考慮すると、2~3ヶ月前に伝えるのが適切なタイミングといえます。
なるべく就業時間後に伝える
退職届を出すときは、上司の忙しくない時間を選んでください。就業時間内は、作業に追われている可能性があるため、就業時間後がおすすめです。まずは上司にどの時間帯なら余裕があるのか、聞いておきましょう。そしてなるべく上司が希望する時間帯に合わせて、退職届を出してください。
退職届の正しい書き方
退職届の書き方は、法律で決まっていません。フォーマットも自由なので、自分で好きなように作成して構いません。会社でフォーマットが決まっている場合は、会社が用意したものを利用しましょう。
退職届のテンプレートを見ながら、テンプレートに沿って正しい書き方を紹介します。
退職届
20XX年X月X日(提出日)
〇〇株式会社
代表取締役〇〇様
【役職があれば記載(部署名だけでも可)】
〇〇(自分の名前)
この度、一身上の都合により、20XX年X月X日をもって退職いたします。 以上
必要に応じて内容を変更してください。
1.書面の題名について
書面の題名は「退職届」です。似た言葉に「退職願」がありますが、少し意味合いが変わりますので注意しましょう。
「退職届」は、自主退職を意味し、会社の承諾がなかったとしても提出から2週間経てば、一方的に辞めることが可能です。一方「退職願」は、合意退職の申し入れを意味し、会社に退職したいことをお願いする意思を示す言葉です。会社が承認しない場合は辞められません。
退職する意思が強い人は、「退職届」と書きましょう。
2.書面の文章について
書面には必ず退職日を記載してください。法律上は2週間後に辞められますので、2週間後の日付か、それ以降の日付を記載します。有給休暇を消化したい人は、消化する日数を踏まえた上で、退職日を設定してください。
退職日は基本的に変更できません。そのため、「とりあえず〇日と書いておこう」といった軽い気持ちで決めてはいけません。変更する場合は、会社の合意が必要です。もちろん、会社が一方的に退職日を延期させることもできません。
3.退職意思の明記について
退職届では、必ず確定的な退職意思を明記してください。つまり「退職します」といったように記載します。「退職したい」「退職する予定です」といったような、退職を希望する書き方をしてはいけません。
上記でも説明しましたが、退職届は労働者が退職を主張する届け出です。書面では「退職届」と記載していても、書いている内容が退職を希望する文言であれば「退職願」として判断されます。
あくまでも大切なことは書面の内容です。「退職届」と書いていれば、すべてがその効力を発揮するわけではないので注意しましょう。
4.退職届の宛先について
退職届の宛先は、社名と社長の名前を記載します。退職届は、会社を代表する権限のある人の手に渡って、はじめて効果があります。そのため、上司の名前などではなく、社長の名前を記載しましょう。
ただし、会社から宛先の指示がある場合は、その指示に従ってください。指示された宛先に退職届を受理する権限が委譲されているためです。
5.提出日について
退職届を提出する日付も必ず記載してください。退職届は、提出から2週間後に辞められるという効力を発揮します。この効力を発揮させるためには、提出日が必要です。
よくある間違いとしては作成日を記載してしまうことです。作成日ではなく提出日を記載するように注意しましょう。
6.署名について
誰が退職するのかを示すために、自分の名前を署名し、押印してください。また自分の部署名や役職名も併せて記載しましょう。
退職までの流れと退職届の出し方
退職までの流れは、以下の通りです。
- 1.退職するか検討する
- 2.退職届を出すタイミングを確かめる
- 3.退職意思を示す
- 4.退職届を出す
- 5.後継人に引き継ぐ
- 6.有休を消化する
- 7.退職する
それぞれについて解説します。
1.退職するか検討する
結婚・出産・介護・職場のトラブルなど、退職理由は人それぞれです。自分の現在の気持ちや状況を考えた上で、退職すべきか検討してください。退職手続きが進むと後戻りはできません。その場の感情だけで判断しないように、誰かに相談して退職するか検討しましょう。
2.退職届を出すタイミングを確かめる
退職届を出すタイミングは、就業規則を見て判断しましょう。会社の就業規則に何ヶ月前に提出すべきか記載されています。記載がない場合は1~3ヶ月前を目安にしてください。
会社によっては、退職届を出す前に退職願を出さなければいけないケースもあります。退職時にルールなどは、就業規則に従うことが賢明です。
3.退職意思を示す
いきなり退職届を出すのではなく、退職意思を示す必要があります。退職意思は、直属の上司に口頭で伝えてください。
上司を飛ばして上の立場の人に退職意思を伝えるのは、マナー違反になります。トラブルの原因になりますので、必ず直属の上司に伝えましょう。退職意思を伝えるときには、退職理由が必要です。
円満退職したい人は、退職理由を会社のせいにしてはいけません。「給料が低い」「上司が嫌い」など、ネガティブな理由ではなく、「キャリアアップのため」「成長を実感しながら働きたい」などポジティブな理由を伝えるようにしましょう。もしくは育児・介護などを理由にしても構いません。
4.退職届を出す
退職日が決まれば、退職届を提出します。基本的には誰もいない会議室などで、上司に直接手渡しで提出してください。提出のタイミングとしては、退職が受理されたときです。退職届の書き方は、「退職届の正しい書き方」で紹介していますので、参考にしてください。
なお、退職届に記載する退職理由は基本的に「自己都合」です。
退職勧奨があったときや、解雇されたときなどは「会社都合」になります。
5.後継人に引き継ぐ
引継ぎ作業は、円満退職するための大切なポイントです。自分が担当していた業務を後継人にしっかりと引き継ぐことで、会社の負担を軽減します。残された従業員たちに迷惑をかけないためにも、引継ぎ作業は念入りにしましょう。
また、後継人に引き継ぐタイミングで、取引先へあいさつ及び後継人の紹介をします。引継ぎと並行して、退職準備も進めましょう。名刺や制服、業務用のパソコンなど、会社から支給されて備品は返却しなければなりません。返却しなければ、退職金から天引きされる可能性もあるので、注意しましょう。
6.有休を消化する
引継ぎ作業やあいさつ回りが終われば、有休の消化については会社と相談しながら決めます。例えば、まとめて有休消化して退職日まで休むパターンや、週に1回は出勤して残りを有休消化するパターンなどさまざまです。
有休消化する日数を減らす必要はありませんが、なるべく会社の意向に沿った休み方で消化すると、より円満退職に近づくでしょう。なお、「退職するやつには有休消化させない」といったハラスメントが発生した場合は、労働基準監督署や弁護士などに相談しましょう。
7.退職する
退職する前に返し忘れた備品はないか、あいさつしていない人はいないかなどを確認しましょう。また、退職日に、必要書類を受け取る必要があります。離職票や健康保険資格喪失証明書など、転職先に必要な書類ですので忘れずに受け取りましょう。
会社によっては、退職日に間に合わないケースもあります。後から会社から郵送される場合もあれば、会社まで取りにいくこともありますので、上司に確認しておきましょう。
まとめ
退職届を出すタイミングは、退職を決意してすぐに伝えることです。なるべく早く伝えることで、引継ぎ作業がしやすくなったり、有休を消化しやすくなったりします。何日前までに伝えればいいかは、会社の就業規則を確認してください。
就業規則に記載がない場合は、1~3ヶ月前が一般的です。なお法律上は、2週間前に伝えれば辞められます。退職届を出すタイミングを考えるときは、繁忙期を避け、賞与をもらった後がおすすめです。退職時のルールに従い、円満退職できるように目指しましょう。
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