上司に残業を指示されたのに給与に反映されていない、残業時間と支払われた額が釣り合っていない、このようなケースで残業代が未払いになることがあります。
計算ミスによる場合もありますが、意図的に支払わない悪質な会社も存在します。しかし、残業代が支払われないからといって泣き寝入りする必要はありません。働いた分の対価は労働者の権利です。
本記事では、未払いの残業代の請求方法や計算方法、時効などの注意点をわかりやすく解説します。
・残業代の未払いを請求できる条件は、労働時間が法定労働時間を超えている、請求権の時効が切れていないなど
・未払いの残業代を請求する方法・手順は、証拠を集める、会社に未払いの残業代があることを伝える、労基に相談・申告する、弁護士に依頼して請求する
・未払い残業代が会社にもたらすリスクは、利息や付加金が上乗せされる、従業員からの信頼を失う、イメージダウンになるなど
目次
残業代が未払いの場合は違法になる?
一般的には残業代の未払いは違法になるケースが多いですが、雇用形態によってはならない場合もあります。
必ずしも違法とはいえないため、どのようなケースで違法にならないのか押さえておきましょう。
- 残業代の未払い違法になる場合
- 残業代の未払い違法にならない場合
残業代の未払い違法になる場合
主に以下のケースでは、残業代の未払いは違法となります。
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働いているのに支払われない
- 深夜労働(午後10時~午前5時)や休日労働の割増賃金が支払われない
- 労働契約や就業規則に基づき支払うと定められた残業代が未払い
- 時間外労働の協定(36協定)がないまま残業させられている
これらのケースは、労働基準法に違反している行為です。残業代は労働の対価として法律で保護されており、支払われない場合は請求権が発生します。
たとえ会社側が経費削減や計算ミスと主張しても、法定の労働条件を満たす時間分の賃金は必ず支払われるべきものです。
残業代の未払い違法にならない場合
残業代が未払いでも、必ずしも違法とは限りません。主なケースは以下の通りです。
- みなし労働時間制(裁量労働制)に該当する場合
- 固定残業代制が適用されている場合
- 管理監督者や機密事務取扱者の場合
- 監視・断続的労働に従事する者の場合
- 公立学校の教員など特定職種の場合
- 農業・畜産・水産業に従事する者の場合
これらのケースでは、法律上、残業代を請求できない場合があります。ただし、対象外であっても実際の労働状況が法律の規定に合致しているかを確認することが重要です。
特に裁量労働制や管理監督者については、実際の業務内容や働き方によって残業代が発生する場合もあります。会社の主張だけで判断せず、自身で確認することが求められます。
残業代の未払いを請求できる条件
残業代の未払いを請求できる条件を紹介します。
- 労働時間が法定労働時間を超えている場合
- 会社が未払い状態である場合
- 残業代は支払われているが割増金額が法定通りでない場合
- 請求権の時効が切れていない場合
労働時間が法定労働時間を超えている場合
労働基準法では、原則として「1日8時間・週40時間」を超える労働をした場合に残業代が発生します。
この法定労働時間を超えて働いているのに、会社から残業代が支払われていない場合は、未払いの残業代を請求することが可能です。
たとえば、1日9時間働いた場合、その超過分1時間は時間外労働となり、通常の賃金の25%以上の割増率で計算された残業代を受け取る権利があります。
また、深夜労働(午後10時~午前5時)や休日労働が重なった場合は、50%以上の割増率が適用されるため、支払われるべき金額は大きくなります。
会社が「みなし残業代を払っているから」と説明するケースもありますが、実際の労働時間と照らし合わせて法定労働時間を超えていれば、残業代の請求は可能です。
会社が未払い状態である場合
残業代が本来支払われるべきにもかかわらず、会社が未払いのままにしている場合は請求が可能です。
未払いの原因としては、単純な計算ミスや経理処理の不備のほか、会社が意図的に支払いを行っていないケースもあります。いずれの場合も、労働者は残業代を請求することが可能です。
よくある例としては、上司の指示で残業をしているのに自己判断の残業だからとして会社が支払いを拒むケースや、固定残業代を理由にすべての残業をカバーしていると説明するケースがあります。
しかし、労働基準法では実際に働いた時間に応じて残業代を支払うことが原則であり、会社の都合で支払いを免れることはできません。
残業代は支払われているが割増金額が法定通りでない場合
一見すると残業代が支払われているように見えても、法定で定められた割増率を満たしていない場合があります。このようなケースも支払いが足りていない分の請求が可能です。
労働基準法では、時間外労働に対して25%以上、休日労働に対して35%以上、深夜労働に対して25%以上の割増率を適用することが定められています。
また、時間外労働が月60時間を超える場合には50%以上の割増率を支払う必要があります。
もし会社がこれらの基準を守らずに通常の時給と同じ金額や、本来より低い割増率で残業代を支給している場合は、未払いが発生しているのと同じです。
請求権の時効が切れていない場合
残業代の請求には時効があり、この期間を過ぎてしまうと未払いがあっても請求できなくなります。
労働基準法の改正により、2020年4月以降に支払い期日を迎えた残業代については、請求できる期間が3年に延長されました。
また、将来的には5年に延長される予定とされていますが、現時点では一律で5年間さかのぼれるわけではありません。
時効の起算点は「賃金の支払い日」であるため、勤務した月の翌月給与日に支払われなかった残業代からカウントされます。
未払い残業代の計算方法を具体例で紹介
残業代を請求するためには、どのくらいの金額が支払われるべきだったのかを正しく把握する必要があります。
ここでは時間外労働・休日出勤・深夜残業の3つのケースに分けて、具体例を用いながら計算方法を解説します。
- 時間外労働の計算例
- 休日出勤の計算例
- 深夜残業の計算例
時間外労働の計算例
まずは時間外労働の残業代から計算しましょう。時間外労働の計算式は、以下の通りです。
時間外労働代 = 基本給 ÷ 月の所定労働時間 × 残業時間 × 1.25
(※割増率1.25は法定の最低基準。月60時間を超えた場合は1.5になります)
基本給が24万円、月の所定労働時間が160時間、残業時間が20時間の場合の時間外労働代(残業代)を計算します。
- 時給を計算:240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円
- 残業時間を掛ける:1,500円 × 20時間 = 30,000円
- 割増を加算:30,000円 × 1.25 = 37,500円
この場合、未払い残業代は 37,500円です。時間外残業は最も発生しやすいケースであり、計算の基本形になります。
自分の給与明細と労働時間を照らし合わせながらこの計算式に当てはめて、正しい金額を確認しましょう。
休日出勤の計算例
次に、休日出勤の残業代を計算してみましょう。休日出勤の計算式は以下の通りです。
休日労働代 = 基本給 ÷ 月の所定労働時間 × 休日労働時間 × 1.35
(※割増率1.35は法定の最低基準です)
基本給が24万円、月の所定労働時間が160時間、休日に8時間働いた場合の休日労働代を計算します。
- 時給を計算:240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円
- 休日労働時間を掛ける:1,500円 × 8時間 = 12,000円
- 割増を加算:12,000円 × 1.35 = 16,200円
この場合、休日出勤の残業代は 16,200円です。
休日労働は、法定休日(会社が就業規則で定める週1回以上の休日)に勤務した場合に発生します。平日の残業とは割増率が異なるため、計算方法を区別して確認することが重要です。
深夜残業の計算例
最後に、深夜労働の残業代を計算しましょう。深夜労働の計算式は以下の通りです。
深夜労働代 = 基本給 ÷ 月の所定労働時間 × 深夜労働時間 × 1.25
基本給が24万円、月の所定労働時間が160時間、深夜に10時間働いた場合の深夜労働代を計算します。
- 時給を計算:240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円
- 深夜労働時間を掛ける:1,500円 × 10時間 = 15,000円
- 割増を加算:15,000円 × 1.25 = 18,750円
この場合、深夜労働の残業代は 18,750円です。
深夜労働は午後10時から午前5時までに勤務した場合に発生します。
深夜労働は体力的な負担が大きいため、割増賃金が法律で定められており、時間外労働や休日労働と重なると、25%にさらに25%が上乗せされ、50%以上の割増率となることもあります、
未払いの残業代を請求する方法・手順
未払いの残業代を請求するときは順序や準備があり、まずは証拠をそろえることが重要です。
そのうえで、会社への通知や公的機関への相談、必要に応じて弁護士に依頼するなど、段階を踏んで対応することが一般的です。ここでは、証拠の収集から請求までの手順を整理して解説します。
- 未払い残業代の証拠を集める
- 会社に未払いの残業代があることを伝える
- 労働基準監督署に相談・申告する
- 弁護士に依頼して請求する
未払い残業代の証拠を集める
残業代を請求する際、まず最も重要なのは証拠をそろえることです。証拠がなければ、働いた時間や未払いの事実を会社や第三者に認めてもらうことが難しくなります。
具体的には以下のような資料や記録が有効です。
- タイムカードや勤怠システムの記録
- 業務連絡のメールやチャット履歴
- 業務日報や作業報告書
- 給与明細や振込履歴
証拠を集める際には、日付や時間、作業内容がわかるものを中心に集めておくと、請求時に非常に有利です。また、紙やデータの形式に関わらず、後から参照できる形で保存しておくことが大切です。
これらの証拠を整理しておくことで、会社への請求や労働基準監督署への相談がスムーズになります。請求額や労働時間を明確に提示できれば、交渉や対応の説得力も大きく高まります。
会社に未払いの残業代があることを伝える
証拠を整理したら、次は会社に未払いの残業代があることを伝えます。ここでは感情的にならず、事実と金額を整理して冷静に伝えることが大切です。
口頭で伝えることも可能ですが、後で証拠として残すためには内容証明郵便やメールなど書面での通知が望ましいでしょう。請求書の書き方は以下の通りです。
20◯◯年◯月◯日
◯◯株式会社
代表取締役 ◯◯◯◯ 殿
◯◯県◯◯市◯◯番地◯
〇〇 〇〇印
請求書
私は、これまでの勤務において、合計〇〇時間の時間外労働を行ってまいりましたが、貴社はこれに対する時間外手当として、本来支払われるべき金額〇〇万円をまだ支払っておりません。
つきましては、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までに発生した時間外労働に対する割増賃金として、合計〇〇万円の支払いを請求いたします。
また、上記未払い分の割増賃金〇〇円について、令和〇〇年〇〇月〇〇日から支払い済みまでの期間に応じ、商事法定利率年6%による遅延損害金を加算のうえ、本書面到達後14日以内に私の口座へ振込にてお支払いくださいますようお願い申し上げます。
なお、期限内にお支払いいただけない場合は、民事訴訟を提起することやその他法的措置を検討せざるを得ないことを申し添えます。
通知の際には、未払いの期間や金額を具体的に示し、集めた勤務記録や給与明細と照らし合わせながら提示します。
この段階で会社が支払いの意思を示す場合もありますが、対応が不十分な場合は次のステップとして労働基準監督署や弁護士に相談するのが一般的です。
書面でのやり取りは必ず保管しておき、後の請求や申告時に役立てましょう。
労働基準監督署に相談・申告する
会社に未払いの残業代を請求しても対応が不十分な場合は、労働基準監督署に相談・申告することが有効です。
労働基準監督署は、労働基準法に基づき、労働者の権利を守るための公的機関であり、未払い残業代の調査や会社への指導を行ってくれます。
相談の際には、整理した勤務時間の記録や給与明細、残業代の計算メモなど、証拠となる資料を持参すると、状況を正確に把握してもらいやすいです。
申告を受けた監督署は、会社に対して指導や立ち入り調査を行い、必要に応じて残業代の支払いを促します。
労働基準監督署に相談・申告することで、会社が対応する姿勢を示し、円滑に交渉が進む可能性が高まります。ただし、労働基準監督署からの申告を受けてどう対応するかは会社次第です。
そのため、なにも対応してもらえなければ未払いの残業代は回収できませんので、弁護士などに相談して法的手段を取る必要があります。
弁護士に依頼して請求する
未払い残業代の請求において、会社が自発的に支払わない場合や、交渉が難航する場合は、弁護士に依頼するのが一般的です。
弁護士に依頼すると、法的な観点から請求額の計算や交渉を行ってもらえるため、未払いの残業代を回収しやすくなります。
弁護士は、会社に対して請求書や内容証明郵便を送付し、必要に応じて交渉や法的手続きを進めますが、会社側が支払いに応じない場合には、労働審判や民事訴訟の提起も行われます。
専門家の力を借りることで、法的な裏付けと安心感を持って手続きを進められることが大きなメリットです。
未払い残業代について相談できる窓口
未払い残業代の問題に直面した場合、まずはどこに相談すればよいか把握しておくことが重要です。労働者向けの窓口は複数あり、状況や希望に応じて使い分けましょう。
未払い残業代について相談できる窓口を紹介して
- 労働基準監督署
- 総合労働相談コーナー
- 労働相談ほっとライン
- 労働組合
- 法テラス
- 弁護士
労働基準監督署
労働基準監督署とは、労働基準法に基づき、労働者の権利を守る公的機関です。残業代の未払い、労働時間の違反、休日労働や安全衛生に関する問題など、幅広く相談できます。
相談は電話で行うことが多く、まず電話で状況を確認してから必要に応じて窓口で面談するといいでしょう。
電話の場合は予約が不要ですが、対面で相談する場合は予約が必要なことが多いため、訪問する際はあらかじめ連絡して確認すると安心です。
ただし、労働基準監督署は会社に対して指導や是正勧告を行うことはできますが、残業代を直接支払ってくれるわけではありません。また、会社側が非協力的な場合や複雑な交渉には時間がかかることがあります。
労働基準監督署に相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- 未払い残業代が明らかで、証拠資料が整理できている人
- 会社に対して公的機関を通して改善を促したい人
- 法律に基づく客観的な助言や指導を受けたい人
総合労働相談コーナー
総合労働相談コーナーとは、厚生労働省や都道府県の労働局が運営する公的な労働相談窓口です。賃金、労働時間、解雇や雇用条件など、幅広い労働問題について相談できます。
相談は電話や面談で行うことが多く、事前に予約をするとスムーズに対応してもらえます。
注意点としては、労働基準監督署と異なり、直接会社に是正を求める権限はありません。あくまで助言や案内を行う窓口であるため、具体的な支払いまで踏み込んだ解決は期待できない場合があります。
そのため、具体的な証拠などを集まっておらず、どのように対応すればいいかなどを気軽に相談したい人におすすめです。総合労働相談コーナーに相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- まず自分の権利や対応方法を確認したい人
- 会社と直接交渉する前に第三者の助言を得たい人
- 曖昧な労働条件や未払い状況を整理したい人
労働相談ほっとライン
労働相談ほっとラインとは、電話で気軽に労働問題について相談できる公的窓口です。残業代の未払い、解雇、ハラスメントなど、幅広い労働問題に対応しており、全国どこからでも利用できます。
電話相談が中心で、自宅や職場からでも相談可能な点が大きな特徴です。匿名での相談が可能で、初期の情報収集や状況確認に非常に役立ちます。
総合労働相談コーナーと比べると、ほっとラインは面談での直接対応は行っておらず、初期相談や助言に特化している点が異なります。
注意点としては、電話だけでは詳しい調査や証拠確認ができないため、複雑な未払い問題については別途窓口訪問や弁護士の相談が必要になることです。
労働相談ほっとラインに相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- まず手軽に相談して情報を得たい人
- 自分のケースが一般的な範囲か確認したい人
- 外出が難しく、電話で済ませたい人
労働組合
労働組合とは、労働者が集まって、労働条件の改善や権利の保護を目的に活動する団体です。
未払い残業代の請求や賃金交渉、労働環境の改善など、会社に直接言いにくいことを組合が代わりに交渉してくれるのが大きなメリットです。
また、組合員同士で情報や経験を共有できるため、自分だけでは気づかない問題点や対処方法を知ることができます。
相談は組合事務所での面談や電話で行われ、個人で対応するよりも心理的な負担が少なく、安心して交渉に臨めるのも特徴です。
注意点としては、組合によって対応できる範囲や交渉力に差があるため、必ずしも全ての問題を解決できるわけではありません。また、未加入の場合は加入手続きが必要になり、交渉までに時間がかかるケースもあります。
労働組合に相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- 組合に加入しており、集団で交渉したい人
- 個人での交渉に不安がある人
- 長期的な労働条件改善も視野に入れて相談したい人
関連記事:労働組合にはどんなことまで相談できる?相談事例や流れを解説
法テラス
法テラスとは、経済的に余裕のない人でも法律相談や手続きを利用できる公的機関です。弁護士による相談や書面作成、交渉の代行など、法的な手続きが必要な場合にもサポートしてもらえるのが大きなメリットです。
残業代の未払いについても、証拠整理や計算、内容証明郵便の作成など、専門的な手続きを安心して依頼できます。電話やオンラインでの相談も可能で、自宅からでも手続きの相談ができるのも便利な点です。
注意点としては、対応可能な案件や援助内容には条件があり、全ての相談が無料で受けられるわけではありません。事前に相談内容が対象になるか確認する必要があります。また、手続きや交渉には時間がかかる場合もあります。
法テラスに相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- 弁護士に相談したいが費用の心配がある人
- 書面作成や交渉のサポートを公的機関に依頼したい人
- 法的手続きも視野に入れて対応したい人
弁護士
弁護士とは、法律の専門家であり、未払い残業代の請求や交渉、労働審判や訴訟まで幅広く対応できるのが大きなメリットです。
証拠の整理や計算、内容証明郵便の作成なども代行してくれるため、会社との交渉が難しい場合でも安心して任せられます。
また、法的手段を視野に入れた戦略的な対応が可能なため、未払い残業代の回収成功率を高められる点も利点です。相談は面談、電話、オンラインなどで行われます。
注意点としては、相談や依頼には費用がかかる点です。成功報酬型の場合もありますが、費用や報酬の条件は事前に確認する必要があります。
また、金額が少額の場合は、費用対効果を考慮して他の窓口での相談を先に行った方がよい場合もあります。
弁護士に相談するのがおすすめな人は以下の通りです。
- 未払い残業代を確実に請求したい人
- 会社との交渉が難航しており、法的手段も検討している人
- 証拠の整理や内容証明作成など専門的なサポートを希望する人
未払い残業代が会社にもたらすリスク
未払い残業代は、従業員にとって大きな不利益となるだけでなく、会社側にも深刻なリスクをもたらします。未払いが発覚すれば法的制裁や経済的な負担に加え、企業の信頼低下にもつながります。
労働者にとっては、会社が背負うリスクを理解しておくことが、未払い残業代を請求する際の強力な交渉材料になるでしょう。
- 未払い残業代に利息や付加金が上乗せされる
- 労基から是正勧告や指導を受ける可能性がある
- 従業員からの信頼を失い、離職率が高まる
- 企業イメージの低下につながる
未払い残業代に利息や付加金が上乗せされる
残業代を未払いのまま放置すると、会社は本来の賃金に加えて利息(遅延損害金)を支払う義務があります。これは法律で定められており、在職中は年率3%、退職後は年率14.6%で計算されます。
特に退職後は利率が高く設定されているため、支払いを先延ばしにすればするほど企業の負担は大きいです。
未払いの残業代を請求する際は、利息や付加金を含めた上で請求しましょう。
労基から是正勧告や指導を受ける可能性がある
会社が未払い残業代を放置すると、労働基準監督署から是正勧告や指導を受けるリスクがあります。これは法律違反をしている企業に対し、早急な改善を求める強い行政指導です。
是正勧告を受けた企業は、未払い分の支払いだけでなく、労務管理全体の見直しを迫られることになります。さらに改善がなければ送検されることもあり、企業にとっては大きなダメージです。
未払いの残業代を請求する際は、「労働基準監督署」というキーワードが交渉材料として活用できます。
たとえば「労基に申告します」と伝えるだけで、会社は調査や行政処分を恐れて話し合いに応じやすくなるのです。実際に申告するかどうかは別としても、労基署の存在を示すことで交渉を有利に進められるでしょう。
従業員からの信頼を失い、離職率が高まる
未払い残業代が発生している会社では、従業員が不公平感や不信感を強く抱くようになります。自分が働いた分の賃金が支払われないのは、単なるお金の問題にとどまりません。
会社が従業員を正当に評価していない、誠実に対応していないと感じさせる大きな原因となります。その結果、会社に対する信頼が揺らぎ、優秀な人材ほど他社への転職を選びやすくなるのです。
企業イメージの低下につながる
未払い残業代が明るみに出ると、会社は社会的な信用を大きく損ないます。
とくに、労働基準監督署から是正勧告を受けた事実や、労働者との間でトラブルになった事実が外部に知られると、取引先や顧客からの信頼も揺らぎます。
今の時代はSNSや口コミサイトを通じて情報が拡散しやすいため、一度悪い評判が広まると修復が難しくなるのが現実です。
残業代が未払いの場合に関するよくある質問
残業代が未払いの場合に関するよくある質問を紹介します。
- 未払いの残業代は退職後でも請求できるの?
- 未払いの残業代はいつまで請求できる?時効は?
- 未払いの残業代を会社が支払わない場合は罰則があるの?
- 証拠がなくても未払いの残業代を請求できる?
未払いの残業代は退職後でも請求できるの?
結論から言えば、未払いの残業代は退職後でも請求可能です。労働基準法では、残業代を含む賃金の請求権は退職によって消滅することはなく、在職中と同じように請求できます。
そのた、退職してしまったからもう遅いと諦める必要はありません。
実際には、退職後に落ち着いてからやっぱり残業代を取り戻したいと考える人は多いです。
在職中だと人間関係や社内での立場を気にして声を上げづらいですが、退職後であれば会社への遠慮が少なく、行動を取りやすくなるのがメリットです。
未払いの残業代はいつまで請求できる?時効は?
未払いの残業代には時効があり、原則として発生から3年で消滅します。これは労働基準法に定められたルールで、かつては2年でしたが、2020年の法改正により3年へ延長されました。
そのため、たとえば2022年1月に発生した未払い残業代は、2025年1月までに請求しなければなりません。
ただし、退職時に未払い残業代がある場合は、退職後から3年間がカウントされるのではなく、あくまで残業代が発生した日ごとに時効が進んでいきます。
そのため、退職して数年経ってからまとめて請求しようと考えると、すでに一部は時効で消滅しているケースが多いので注意しましょう。
未払いの残業代を会社が支払わない場合は罰則があるの?
会社が残業代を支払わない場合、労働基準法違反となり罰則が科される可能性があります。具体的には「6か月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」といった刑事罰が規定されています。
さらに、労働基準監督署から是正勧告を受けても改善が見られない場合、送検され裁判に発展することも少なくありません。
証拠がなくても未払いの残業代を請求できる?
未払い残業代を請求するには、労働時間を裏付ける証拠が重要です。しかし証拠がまったくないから請求できないというわけではありません。
ただし、証拠が乏しいと会社が支払いを拒む可能性が高まるため、労働基準監督署への相談や弁護士への依頼が現実的な手段となります。
専門家が会社から資料を開示させることで、隠された証拠が表に出るケースも多いです。
まとめ
残業代の未払いは、労働基準法で定められた労働者の権利を侵害する行為です。未払いが発覚した場合は自分の労働時間と給与明細を照らし合わせ、計算式に基づいて正しい金額を確認することが重要です。
請求する際は、証拠を集めたうえで会社に申し入れるのが基本ですが、対応が得られない場合には労働基準監督署や労働相談窓口、弁護士といった外部の機関を活用しましょう。
未払いの残業代を請求したことで、現職に居づらくなるケースは多いです。そのような場合は、退職代行サービスを利用して退職するのがおすすめです。
退職に関する悩みや不安のある人は、退職代行ほっとラインまでご相談ください。
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