産休後に辞めるのはアリ?退職時の注意点や損しないためのポイントを紹介

産休後に辞めたいと思う人は、少なくありません。産休後に辞めるのは法律上、問題ありません。しかし、会社から良く思われないこともあり、注意が必要です。また、辞めるときは出産手当や育児休業給付金など、手当金制度を把握しておきましょう。

本記事では、産休後に辞めるのは可能か、辞めるときの注意点について紹介します。また、辞めるときに知っておきたいポイントをまとめましたので、参考にしてください。

本記事の結論

・産休後に辞めるのは可能
・出産手当金や育児休業給付金、失業手当などの手当金制度を活用すること
・産休後に辞めるときの注意点は、転職活動の難易度が高くなる、会社や従業員から良く思わない可能性があるなど
・産休後に辞めるときのポイントは、円満退職を目指す、雇用形態を見直す、フレックスタイム制や時短勤務を活用するなど

産休後に辞めるのは法律上問題ない

産休後に辞めるのは法律上問題ありません。産休・育休を取得後に退職することを禁止する法律はありませんので、辞めることが可能です。元々は復帰を考えていたものの、思っていたよりも育児がしんどい、家庭の事業などの理由で退職する人は少なくありません。

厚生労働省が発表している「仕事と育児・介護の両立に係る現状及び課題(p.10)」によると、第一子を出産後に退職した人は30.5%です。出産を機に退職する人は多くいます。

ただし、会社は産休後に復帰してくるものだと思っています。そのため、しっかりと手順を踏んで退職手続きを進めないと、トラブルの原因になるので注意しましょう。

産休後に辞めるなら活用できる手当金制度を把握しておこう

産休中は「ノーワーク・ノーペイの原則」から給与が発生しません。そのため、経済面で不安を抱える人もいるのではないでしょうか。給与が発生しない分、産休後に辞める人が活用できる手当金制度を申請しましょう。

  • 出産一時金
  • 出産手当金
  • 失業手当
  • 育児休業給付金

出産一時金

出産一時金(出産育児一時金)とは、妊娠4ヶ月(85日)以上の人が出産したときに支給される給付金です。早産、死産、流産、人工妊娠中絶なども対象となります。申請すると1児につき50万円給付されます(令和5年4月1日までの人は、1児につき42万円です)。

なお、産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は、48.8万円となります。会社を退職したあとでも、以下の条件を満たしていれば出産一時金を受け取ることが可能です。

  • 妊娠4ヶ月(85日)以上であること
  • 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間があること
  • 資格喪失後(退職日の翌日)から6ヵ月以内に出産した場合

会社を退職したあとに、パートナーの健康保険の被扶養者となった場合、どちらか片方の出産一時金しか受け取れません。退職後に国民健康保険に加入した場合も同じです。

出産一時金を申請し忘れていた場合、出産日の翌日から2年以内であれば全額支給してもらえます。必ず忘れないように申請しましょう。

出産手当金(産休手当金)

出産手当金は、産休時に会社から給与の支給がなかった場合、被保険者のみが手当金を受け取れる制度です。出産手当金は、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以降56日目までの期間を対象として支給されます。

1日に支給される金額は、支給開始日の以前12ヶ月間の各月額を平均した金額】÷30日×2/3です。例えば、月給30万円の場合、1日に支給される金額は30万÷30日×2/3=6,667円です。

産休中に退職した場合でも、以下の2つの条件を満たせば出産手当金をもらえます。

  • 被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失時に出産手当金を受けている、または受ける条件を満たしていること

なお、退職日に出勤してしまった場合は、条件を満たさないため出産手当金を受け取れないので注意しましょう。

育児休業給付金

育児休業給付金は、原則1歳未満の子どもを育児するために育児休業を取得した人が、一定の条件を満たすと支給される給付金です。申請前に退職予定を会社に伝えている人は、支給条件の対象外になりますので、注意しましょう。

育児休業給付金の支給条件は以下の通りです。

  • 育児休業を取得した人
  • 育休を取得する前の2年間で月間11日以上働いた月が12ヶ月以上あること
  • 育休中の勤務日数が10日以下または勤務時間が80時間以下であること
  • 出産した子どもが1歳6ヶ月になるまでに退職する予定が明らかである人

上記でも説明しましたが、出産した子どもが1歳6ヶ月になるまでに退職する予定があることを事前に会社へ伝えていた場合は対象外です。育児休業給付金の支給期間内で退職したとしても返金する必要はありません。

支給期間中に退職した場合は、退職日を含む支給単位期間の一つ前の支給単位期間までが支給の対象となります。母親・父親どちらでも受給可能ですが、支給期間が異なりますので注意しましょう。

  • 母親の場合:産後休業(8週間)が終了した翌日から子どもが1歳に達する日の前日まで
  • 父親の場合:子どもの出生日から子どもが1歳に達する日の前日まで

支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)」です。

失業手当

失業手当(基本手当)は、働く意思のある失業者(求職者)に対して支給されるものです。求職期間中の生活を安定させ、求職活動しやすくする目的があり、求職者活動しているにもかかわらず就職できない人が対象です。

支給条件は以下の通りです。

  • 就職する意思があり、いつでも就職できる能力がある
  • 離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上ある

失業手当は、退職後にすぐ働ける状態であることが前提です。そのため、産休後に辞めてから働く意思がない人は受け取れませんので、注意しましょう。受給期間は原則、退職した翌日から1年間ですが、出産や育児などを理由に30日以上働けなくなった場合は最長3年間、延長できます。

支給額は、退職日の直前6ヶ月間の給与(賞与は除く)の合計÷180×50~80%(年齢により異なる)です。年齢により上限も決まっています。

産休後に辞めるときの注意点

産休後に辞めるときの注意点は、以下の通りです。

  • 産休と同時に退職しないほうがいい
  • 会社や従業員から良く思われない場合がある
  • 保育園を辞めさせられる可能性がある
  • 転職活動の難易度が高くなる

それぞれについて見ていきましょう。

産休と同時に退職しないほうがいい

産休と同時に退職した場合、出産手当金などの給付金が受け取れない可能性が高いです。産休後であればもらえるはずのお金が、もらえないため損してしまいます。何か理由がない限りは、産休後に辞めることをおすすめします。

会社や従業員から良く思われない場合がある

産休・育休は基本的に復帰を前提にしている休業です。そのため、会社は産休・育休が終われば復帰するものだと思い、段取りを組んでいます。しかし、産休後に辞めると、「わざわざ休みを与えたのにマナー違反だ」と良く思わない会社も少なくありません。

また、産休・育休で欠員した補充がなければ、従業員の負担が増加します。育児休業法においても「会社に残る社員に配慮すること」が会社に義務づけられていますので、本来は会社の責任です。

しかし、理解が浅い人は産休を取得したあなたのせいで負担が増えた、と思う人もいるでしょう。復帰してもらい作業負担を軽減させたいのに、あなたが辞めてしまうとさらに不満が高まってしまいます。

このように、産休後に辞めると会社や従業員から反感を買う恐れがありますので、しっかりと正しい手順で退職手続きを進めましょう。

保育園を辞めさせられる可能性がある

2人目の子どもを出産するときに、1人目の子どもが保育園を利用している場合は、保育園を退園になってしまう可能性があります。もちろんすぐに退園することにはなりません。転職期間として3ヶ月程度は、預かってもらえます。

ただし、転職する予定がない場合は退園になる可能性が高いです。自治体によって対応が異なりますので、退職する前に確認しておきましょう。

転職活動の難易度が高くなる

産休後に辞めて転職する場合、難易度が高くなります。転職する際は、これまでとは違い幼い子どもがいることを配慮して、転職先を選ぶ必要があります。転職先も、幼い子どもがいることを理解し、柔軟に対応してもらえる会社でなければなりません。

これまで通りの働き方ではなく、フレックスタイム制度や時短勤務などの利用が大切です。会社によっては、入社1年目には時短勤務が適応されないケースもあります。そのため、福利厚生などもしっかりと確認しておきましょう。

また、理想の転職先が見つかりにくい場合は、現職で部署異動や時短勤務、残業制限などをお願いする選択も候補に入れておきましょう。

産休後に辞めるときのポイント

産休後に辞めるときは、以下の7つのポイントを押さえておきましょう。

  • 産休後に子どもを預けるところを探しておく
  • 早めに退職意思を伝えておく
  • 円満退職を目指す
  • 雇用形態を見直す
  • フレックスタイム制度や時短勤務を利用する
  • 産休の期間をしっかり把握する
  • 辞められないときは退職代行サービスを利用する

産休後に子どもを預けるところを探しておく

産休後に転職する場合は、子どもを預けるところを確保しておく必要があります。一般的には保育園ですが、家族や身内など預けられるところを探しておきましょう。子どもを預けるところが決まっていないと、採用担当者も採用後の動き方が不安定なので採用をためらってしまいます。

早めに退職意思を伝えておく

先に説明した通り、産休は復帰を前提にした休業です。会社も復帰を見込んで段取りを組んでいます。そのため、早めに退職意思を伝えてスムーズに進められるようにしましょう。

法律上では、退職日の2週間前に退職意思を伝えれば問題ありません。ただし、会社の就業規則に従うのが一般的です。おおよそ1~3ヶ月前と記載されている会社が多くあります。

退職意思を伝えるタイミングについては、こちら「退職は何日前までに伝えるべき?法的ルールと正しい辞め方を解説します – 退職代行ほっとライン」の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

円満退職を目指す

産休で辞めるときは、円満退職を目指しましょう。会社によっては良く思わない場合もありますので、なるべく会社の意向に沿った辞め方がベストです。そのため、「〇日は出社してほしい」「退職手続きをしに会社まで来てほしい」などの要望に、できる範囲で答えられるように心がけましょう。

円満退職を目指すには「退職意思を伝えるタイミング」と「引継ぎ作業」がポイントです。上記で述べたように退職意思は早めに伝えてください。また、引継ぎ作業を怠ってはいけません。

引継ぎ作業を入念に済ませれば、残された従業員の負担が減るため、円満退職に近づきます。円満退職のやり方については、こちら「円満な退職の伝え方を解説!上司や同僚に伝えるポイントや例文を紹介 – 退職代行ほっとライン」の記事を参考にしてください。

雇用形態を見直す

子育てしながら働く場合、これまで通りの働き方が難しくなるケースがほとんどです。正社員からパートに雇用形態を変えるなど、見直すといいでしょう。

パートであれば拘束時間や責任が少なくなるので、時間的にも精神的にもゆとりができます。また社員と違い休みを取りやすくなるので、子どもがケガをしたり、風邪をひいたりしたときでも、柔軟に対応しやすいです。

時間に余裕がある人は、副業に挑戦してもいいでしょう。副業であれば、家にいながら自分のペースで作業が進められます。

フレックスタイム制や時短勤務を利用する

正社員のまま働き続ける方は、フレックスタイム制度や時短勤務を利用しましょう。フレックスタイム制は、総労働時間が決められた一定期間内であれば、出退勤の時間を労働者が自由に設定できる制度です。

時短勤務は、1日の労働時間を6時間まで抑えられる制度です。どちらも、育児と仕事のバランスを取りやすくなります。可能であればテレワークを活用してもいいでしょう。

時短勤務は法律で定められている制度ですが、フレックスタイム制やテレワークは会社によって導入されているか異なります。就業規則を確認したり、上司に聞いてみたりしましょう。

産休の期間をしっかり把握する

産休は「産前は予定日の6週間前、産後は8週間経過しなければ働いてはいけない」と労働基準法第35条により定められています。約3ヶ月間は休むことになるので、次の出勤日を忘れないように気をつけましょう。

産休期間が過ぎているのに休んでいると、無断欠席扱いになります。また、会社によっては産休を正しく理解しておらず、産休に必要な日数を取得できないケースもあります。

例えば、労働者に働く意思があれば、医師の許可を得て産後6週間後から働くことが可能です。しかし、理解がない会社は、産後6週間後から働けるものだと思い、出勤日を早く設定する可能性があります。

辞められないときは退職代行サービスを利用する

退職を決意したものの「強い引き止めにあい辞められない」「自分で退職を伝えづらい」といった人は少なくありません。退職代行サービスであれば、会社と直接やりとりすることなく退職できます。

退職に必要な作業は、退職代行サービスが手続きしてくれますので、丸投げして問題ありません。退職代行サービスを利用するときは、トラブルが発生する恐れがあることも視野に入れておきましょう。

退職代行サービスのトラブルについては、こちら「退職代行でよくあるトラブル事例15選!リスクを避けて確実に辞めるにはどうしたらいい? – 退職代行ほっとライン」を参考にしてください。

退職代行ほっとラインは、退職成功率100%です。女性カウンセラーも在住し、転職サポートもしていますので、ぜひご相談ください。

産休後に辞めることに関するよくある質問

産休後に辞めることに関するよくある質問は、以下の通りです。

  • 産休後に辞めるメリットは?
  • 産休後に辞めると退職金はもらえるの?
  • 産休・育休とは?取得できる条件は?
  • 産休後に辞めるときの手順は?

それぞれについて見ていきましょう。

産休後に辞めるメリットは?

産後に辞める最大のメリットは、育児に専念できることです。一般的に育児は、3歳までが負担の大きい時期といわれています。日々成長するわが子と向き合えるのは貴重な時間です。

また、仕事を辞めるとストレスが軽減されるので、心にもゆとりができます。職場での余計なストレスを家庭に持ち込まずに済むこともメリットの一つです。

産休後に辞めると退職金はもらえるの?

産休後に辞めると退職金がもらえるかどうかは、会社によって異なります。退職金があるのは当たり前だと思っている人は、多いのではないでしょうか。

厚生労働省が発表している「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業は、74.9%です。当たり前のように思われがちですが、意外と多くありません。

また、産業別に見てみると、宿泊業・飲食サービス業(42.2%)、サービス業(54.4%)などは、退職金をもらえる可能性が低いです。

退職金は法律で定められていませんので、支給するかは会社の自由です。退職金がもらえる対象や金額については、会社の就業規則を確認しましょう。

産休とは?取得できる条件や期間は?

産休(産前休暇・産後休暇)とは、出産準備に必要な「産前休業」と、産後に体を休ませるために必要な「産後休暇」を合わせたものです。

産休は会社に勤めているすべての女性に取得できる権利があります。正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員なども対象です。

産前は予定日の6週間前、産後は8週間の計14週間が休暇期間です。産休中の給与の有無は会社により異なります。就業規則などを事前に確認しておきましょう。

なお、産休中は手当金がありますので、「産休後に辞めるなら活用できる手当金制度を把握しておこう」を参考にしてください。

産休後に辞めるときの手順は?

産休後に辞めるときの手順は以下の通りです。

  • 退職意思を示す
  • 退職届を提出する
  • 後任者に引継ぎする
  • 従業員や取引先に挨拶する
  • 有休消化する
  • 必要な書類を受け取り退職する

まずは、会社の就業規則に従って退職意思を示しましょう。引き止められることが多いので、退職意思を強く示し、妥協しないことがポイントです。

次に退職届を提出します。退職届の書き方は「退職届を出すタイミングはいつ?書き方や出し方、提出時期を徹底解説します – 退職代行ほっとライン」を参考にしてください。

円満退職を目指すには、引継ぎ作業が重要です。後任者がいない場合は、マニュアルを作成しておきましょう。従業員や取引先に退職することを伝える場合は、上司に確認を得てから伝えます。先に同僚などに伝えてしまうとトラブルになる可能性があるので、注意しましょう。

有給がある人は、有休消化をします。会社が退職に必要な書類を準備できれば、書類を受け取りましょう。

まとめ

産休後に辞めることは可能です。法律上、何も問題ありません。ただし、会社は産休後に復帰するものだと思っていますので、適切なタイミングで退職意思を伝えましょう。また、産休後に転職する場合は、子どもの預け先を確保しておくことが重要です。

バランスよく育児と仕事をするには、フレックスタイム制や時短勤務などを活用するとよいでしょう。産休後に辞めるときに、自分で退職を伝えにくい人は退職代行ほっとラインに相談してください。

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