部下との接し方に悩みを抱える人は少なくありません。中には、部下が言うことを聞かないため、作業がスムーズに進まないといった悩みもあります。マネージャー職に就いた人は、部下の指導や教育も仕事の一つですので、対処しなければなりません。
本記事では、部下が言うことを聞かないときの対処法について紹介します。また、言うことを聞かない原因や信頼を得る方法などについて解説しますので、参考にしてください。
・部下が言うことを聞かないときの対処法は、否定せず部下の話を聞く、部下をサポートする、仕事を任せてみる、最低限の注意にとどめるなど
・言うことを聞かない部下との信頼を深めるには、コミュニケーションを増やす、部下の長所や成果を褒める、言葉だけでなく行動で示すなど
・部下が言うことを聞かない原因は、信頼関係が築けていない、上司を無能だと思っている、上司の言動がハラスメントになっている
目次
部下が言うことを聞かないときの対処法
部下が言うことを聞かないときは対処が必要です。言うことを聞かない状況が続けば、チームの和を乱したり、生産性が低下したりします。
- 否定から入らず部下の話を聞く
- 部下が困っているときにサポートする
- 部下に仕事を任せてみる
- 言うことを聞かない部下に時間を使いすぎない
- 必要最低限だけ注意・フィードバックする
- 指導やコミュニケーションのやり方を見直す
6つの対処法を紹介しますので、見ていきましょう。
否定から入らず部下の話を聞く
まずは部下の話を否定せずによく聞くことです。上司がしっかりと部下の話を聞く姿勢を示せば、部下が心を開いてくれる可能性があります。この時に大切なことは、否定せずに最後まで部下の話を聞いてあげることです。話す内容によっては「そこは違う」と否定したくもありますが、グッと我慢しましょう。
話を最後まで聞いたうえで間違っているところがあれば、フィードバックしましょう。途中で話を遮って議論が始まれば、部下がさらに言うことを聞かなくなる恐れがあります。そのため、相手の視点に立ち部下がなぜそう思ったのか背景や理由を尋ねてみると効果的です。部下を責めるような態度や口調は避けて、共感や理解を示すことで信頼関係を築くきっかけになります。
部下が困っているときにサポートする
部下が困っている場合、適切なタイミングでサポートすることが重要です。言うことを聞かない部下の中には、プライドが高い人もいます。この場合、頭ごなしに指示を出しても言うことを聞いてくれません。そのため、あえて自分がサポート役として部下を支えると効果的です。
例えば、部下が悩んでいるときに一緒に解決法を考えたり、どのような手助けがあれば仕事がやりやすいか聞いてあげたりしましょう。サポートしながら具体的なアドバイスを伝えることで、聞き入れてもらえる可能性があります。
ただし、何でもかんでも部下の代わりにやってしまうと、部下の成長機会を奪ってしまう可能性があるので、注意しましょう。必要以上に手を出さないように「何か助けが必要なときはいつでも相談してほしい」と声をかけることで、部下が自主的にサポートを求める環境を作ることができます。部下が助けを求めているときにサポートすることで、信頼関係の強化やモチベーションの向上につながります。
部下に仕事を任せてみる
部下が言うことを聞かない場合、あえて仕事を任せてみるのも一つの手です。仕事を任せることで、責任感や主体性を引き出します。仕事を任せるときは、目標や仕事内容、スケジュール、納期などを明確に決め、部下がどのように進めていけばいいのか指針を示すのが効果的です。
このとき、部下のやり方に対して細かい指示を出したり、過度に干渉したりするのは避けましょう。一定の裁量を与え、部下が考えながら何をすべきか決めることがポイントです。また定期的に進捗状況を確認し、必要に応じてアドバイスすることで、仕事が円滑に進みます。
このように部下を信頼している姿勢を見せることで、部下は自分が期待されていることを感じ、モチベーションの向上につながります。
言うことを聞かない部下に時間を使いすぎない
部下が言うことを聞かないからといって、過度にその一人に時間を使いすぎてはいけません。特定の部下だけに時間を費やしてしまうと、組織全体の生産性が低下したり、他の部下の指導が疎かになってしまったりします。中にはどれだけ言っても言うことを聞かない部下もいます。部下が反抗的な態度を取る理由を見極め、問題解決に必要な時間のみを割くようにしましょう。
改善が見られない場合は、一定の距離を保ち、無理に部下を変えようとしないことも一つの手です。介入しすぎてストレスが溜まり、仕事や人間関係に悪影響を及ぼす場合もあります。上司はチーム全体を管理することが大切ですので、言うことを聞かない部下だけに時間を使いすぎないよう注意しましょう。
必要最低限だけ注意・フィードバックする
部下が言うことを聞かないからといって何もせず放置するのは良くありません。問題点を放置するのは部下のためにもよくありませんし、「上司の言うことを聞かなくてもいい」と思わせる要因にもなります。そのため、部下に対する注意やフィードバックは最小限にとどめ、必要なことだけを伝えることも重要です。
例えば、簡潔に短時間で伝える、仕事に関係のない話は持ち出さない、他人と比較しないといったことに注意してください。問題点を指摘すると、部下のモチベーションを下げる恐れがあります。そのため、否定的な言葉よりもポジティブな表現を多く使ったり、改善した時にどこが良かったのか褒めたりするのがポイントです。
指導やコミュニケーションのやり方を見直す
部下が言うことを聞かない原因として、指導やコミュニケーションのやり方が合っていない場合も考えられます。そのため、自身の指導方法や接し方を振り返り、必要に応じて改善することも大切です。部下によって性格や能力が変わります。能力の低い部下に対しては具体的にアドバイスを伝える、プライドの高い部下には褒めてあげるなど、ひとり一人に合った柔軟な対応を心がけることで、部下との信頼関係が深まります。
自分にマネジメント能力が足りていないと実感する場合は、必要に応じて研修や外部のリソースを活用し、指導スキルを向上させることも効果的です。部下が言うことを聞かないのは、必ずしも部下だけに原因があるとは限りません。上司の指導方法や接し方が問題となる場合もありますので注意しましょう。
言うことを聞かない部下の信頼を得る方法
部下が言うことを聞かないときは、信頼関係を構築することが大切です。信頼関係を得るには、以下の方法を試してください。
- コミュニケーションを増やす
- 部下の成果や良い所をしっかり褒める
- 部下に認められるような実績を作る
- 言葉だけでなく行動で示す
コミュニケーションを増やす
言うことを聞かない部下との信頼を得るには、コミュニケーションを増やすことが大切です。良好な人間関係を構築するには、コミュニケーションを取り、心理的な距離を縮めることです。これは、言うことを聞かない部下に限った話ではなく、どの従業員にでも当てはまります。
業務に関する指示や注意だけでは、コミュニケーションを深めていることになりません。日常的な雑談や部下の興味・関心のある会話を積極的に取り入れることが大切です。最初のステップはコミュニケーションの頻度を高めることを意識してください。あいさつや天気のことなど、何でもいいので部下と会話する回数を増やします。
部下との会話がある程度増えれば、コミュニケーションの質を高めてください。一方的に自分だけが話すのではなく、双方の対話を心がけ、部下が話しやすい環境を整えることも信頼を得るために大切なことです。
部下の成果や良い所をしっかり褒める
部下の成果や良い所を認識し、言葉にして褒めることは信頼を得るうえで非常に有効です。とくに言うことを聞かない部下は、自分が評価されていない、見下されていると感じる場合が多いため、正当に評価し褒めてあげることで心を開きやすくなります。褒めるときは、「〇〇の部分が良かった」「〇〇したことで効率が良くなって素晴らしい」など、部下の行動に対して何が良かったのか具体的に褒めてあげましょう。
具体的に褒めることで、自分のことをしっかりと見てくれている、という認識が湧きます。また、結果だけでなく、過程での工夫や努力を褒めることも大切です。基本的に人は褒められて悪い気分にはなりません。悪い所を探して指摘するのではなく、良い所を探して褒めて育てるように心がけましょう。
部下に認められるような実績を作る
部下の信頼を得るには、自分自身が尊敬できる人間であること示す必要があります。とくに言うことを聞かない部下は、上司に対して「本当に信頼できるのか」「仕事ができない人の指示を聞く必要があるのか」といった疑念を抱いている場合が多いです。そのため、仕事上で部下に認められるような実績を作り、自分のスキルや行動で示すことが効果的です。
具体的には、営業であれば契約件数を多く獲得する、接客業であれば全店で上位になるような売り上げを作るなど目指しましょう。
言葉だけでなく行動で示す
部下の信頼を得るには、言葉だけでなく行動で示すことです。例えば、「部下の意見も大事にしている」と口で言うものの、実際に部下の意見を一度も採用していなければ口だけになってしまいます。また、「困ったときはいつでも相談してほしい」と伝えていても、いざ相談してみると具体的なアドバイスがもらえず、状況を改善できる案が出てこなければ部下の信頼を得られません。
時には自分が言った通りにならなかったり、上手くいかなかったりするときもあります。そのときは、素直に自分の失敗を認め謝ることも大切です。上司だから部下には謝らないといったスタンスではなく、一人の人間として適切な対応を取ることがポイントです。
部下が言うことを聞かない原因は?
部下が言うことを聞かないときは、何かしらの原因が考えられます。原因を分析し改善すれば、部下も言うことを聞いてくれるでしょう。
- 部下と信頼関係が築けていない
- 部下に無能な上司だと思われている
- 上司の言動がハラスメントになっている
部下と信頼関係が築けていない
部下が言うことを聞かない原因の一つは、信頼関係が十分に築けていないことです。部下との信頼関係が不足していると、「上司の指示に従う必要がない」と不満や反発を感じることが多くなります。
信頼関係を築くには、上司が部下の意見や感情を真剣に受け止め、日頃から適切なコミュニケーションを取ることが大切です。また自分よりも身分が下だからといって上から目線で物事を伝えるのではなく、対等な立場で意見交換を行うことで部下が上司に対して「この人なら信頼できる」という気持ちを持てるようになります。
部下に無能な上司だと思われている
部下が上司のことを無能だと感じた場合、上司の指示やアドバイスを軽視する可能性があります。とくに上司から具体的な指示がない、責任転嫁する、判断力が欠けるような上司は無能だと思われやすいです。また、実績やスキルが不足していると、「この人の指示に従っても成長できない」と思うかもしれません。
こうした状況を防ぐために、上司は常に知識やスキルを磨き、向上させる努力を続けることが必要です。しっかりとした実績を残せば、部下に「この上司の言葉には価値がある」と納得させることができるでしょう。無能な上司の特徴については、以下の記事で詳しく紹介しています。自分に当てはまる点がないか確かめてみましょう。
関連記事:上司が無能の場合どうする?特徴や対処法、なぜ無能が上司になれるのか解説
上司の言動がハラスメントになっている
業務が忙しく作業に追われていると、無意識に言動がハラスメントになっている可能性があります。例えば、威圧的な態度を取ったり、見下されないようにマウントを取ったり、一つのミスを執拗に責めたりなどです。このような言動が部下のモチベーション低下や拒否感を抱かせる原因になります。また、威圧的な態度に気が動転してしまい、上司の話した内容が頭に入らず指示に従えない場合もあります。
ハラスメントは労働基準法に違反する行為でもありますので、自分の言動を見直し、部下との接し方を改善しなければなりません。また、無意識に言動がハラスメントになっていることに気づいてときに、謝罪や改善策を提示することも大切です。
部下が言うことを聞かないのはハラスメント?
部下が上司の指示に従わず命令を無視する行為は、ハラスメント(パワハラ)になる可能性が高いです。仮にパワハラに当てはまらなかったとしても、部下の行動は組織の和を乱す行為ですので、しかるべき処置が必要です。以下の3つの条件をすべて満たせば、部下の言動がパワハラとみなされます。
- 優越的な関係を背景とした言動
- 仕事において必要であり、かつ相当な範囲を超えたもの
- 終業環境を害するもの
「①優越的な関係を背景とした言動」とは、豊富にスキルや経験のある部下が協力しないことで仕事が進まないを指します。「②仕事において必要であり、かつ相当な範囲を超えたもの」とは、業務に必要のない言動や業務目的を大きく逸脱した言動のことです。「③就業環境を害するもの」とは、身体的や精神的にダメージを受け、まともに働けなくなる状態です。
部下が言うことを聞かないことに関するよくある質問
部下が言うことを聞かないことに関するよくある質問を見ていきましょう。
- 部下が言うことを聞かないときはどうしたらいいですか?
- 言うことを聞かない部下を放置するとどのような悪影響がありますか?
- 部下が言うことを聞かないときのストレス解消法は?
- 優秀な部下が言うことを聞かない理由は?
部下が言うことを聞かないときはどうしたらいいですか?
部下が言うことを聞かないときは、なぜ言うことを聞かないの原因を見つけましょう。部下に原因があるケースがほどんどですが、自分に非があることも少なくありません。原因がわかれば対策しましょう。対策方法としては、部下のサポートを徹底したり、コミュニケーションを多く取ったりなどがあります。
部下に接するときは、批判的な態度を取るのではなく、意見に耳を傾ける姿勢が大切です。部下に適切なフィードバックを行い、成果や努力をしっかり認めることで、関係の改善を図ることができます。
部下が言うことを聞かないときのストレス解消法は?
部下が言うことを聞かないと、大きなストレスを感じることがあります。部下が言うことを聞かないと、短所や悪い所ばかりを探しがちになります。そこで、部下の長所や頑張っているところに目を向けてみましょう。部下の頑張りや成果を見つけて褒めることで、「自分のことを正当に評価してくれる」と心を開きやすくなります。その結果、部下と信頼関係が深まればストレスが軽減されるでしょう。
また、ストレスを溜め込まないために、職場以外でリフレッシュする時間を確保することも有効です。趣味や運動、家族や友人との時間を過ごすことで、気持ちを切り替えることができます。さらに、必要であれば、上司自身がメンターや同僚に相談し、適切なアドバイスやサポートを受けることもおすすめです。ストレスを無理に抱え込まず、積極的に解消する工夫が大切です。
優秀な部下が言うことを聞かない理由は?
優秀な部下が言うことを聞かない理由は、主に上司の言動を軽視しているからです。優秀な部下ほど、自分のやり方に自信を持っています。そのため、上司の指示が非効率であったり、具体的な指示がなかったりすると、言うことを聞かなくなるでしょう。また、自分の経験やスキルに基づいて合理的な方法を選びたいという思いが強い部下ほど、指示に従わず、自発的に動くことが多くなります。
優秀な部下は、適切な対応をすることで大きな力となる存在ですので、そのポテンシャルを最大限に引き出せるよう配慮することが重要です。部下の意見を否定せず最後まで聞いたり、仕事を任せてみたりなど、部下の視点に立ちながら柔軟に対応しましょう。
まとめ
部下が言うことを聞かないときの対処法や原因、信頼を得る方法について解説しました。部下が言うことを聞かないときは、部下だけでなく、自分にも原因がないか見直しましょう。指導方法を誤っていたり、威圧的な態度を取っていたりすれば、部下は言うことを聞いてくれません。
信頼関係を深めるためにも、業務以外のコミュニケーションを取り、部下の長所や成果を褒めることで状況を改善していきましょう。
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