転職(就職)する際には、ブラック企業かホワイト企業か見極めたいところです。ブラック企業に入社してしまうと、長時間労働(残業)やハラスメントなど労働環境が悪い状態で働くことになってしまいます。そうならないためにも、ブラック企業の見極め方を身につけておきましょう。
本記事では、ブラック企業の見極め方と転職を成功させるポイントについて解説しています。
・ブラック企業は、求人募集・会社説明会・面接などで見極められる
・ブラック企業の特徴は、「労働時間(残業時間)が長い」「ハラスメントが横行している」「給与が低い」など
・ブラック企業を避けて転職を成功させるには、求人募集をしっかりと見る、転職エージェント利用するなど
目次
ブラック企業の見極め方:求人募集編
まずは、求人募集時のブラック企業の見極め方です。誤って選考に進まないように、求人募集の段階でブラック企業かどうか見極めましょう。見極め方のポイントは、以下の4つです。
- 給与が相場よりも極端に高い・低い
- 休日が少ない労働時間も長い
- 求人募集が多く期間も長い
- 募集条件がゆるい
給与が相場よりも極端に高い・低い
給与が相場よりも低い企業を避ける人は多いです。しかし、給与が相場よりも極端に高い場合、給与の高さを魅力的に感じ転職先の候補に入れる人は多いのではないでしょうか。会社は慈悲活動をしているわけではないので、業務内容と見合わないほど給与が高い場合は要注意です。
求人募集の給与が高すぎると、長時間残業や休日出勤を強要されるブラック企業の可能性があります。また残業代が出ない、厳しいノルマがあるなど、労働環境が悪いこともあるので注意しましょう。例えば、以下のような求人募集です。
業界 | 不動産業界 |
仕事内容 | 自社オリジナルの住宅ペイントの提案 (未経験者大歓迎・やる気さえあればスキルなしでも可能) |
勤務地 | 関東・東海・関西・中部・九州 |
給与 | 月給31万円~ (みなし残業5万円・月あたり20時間を含む) |
初年度想定年収 | 600~1,100万円 (歩合給・インセンティブを含む) |
就業時間 | 8:00~18:00 (休憩120分) |
福利厚生 | 各種社会保険完備 退職金制度 健康診断 結婚祝金 出産祝金 |
休日・休暇 | 年間休日115日(会社カレンダーによる) |
未経験者で初年度から600万円以上の給与は高い傾向があります。求人募集ではインセンティブを含むと記載しておき、実際は自分の成果とはみなされず、給料が低くなる場合もあります。
休日が少ない労働時間も長い
休日が少ないだけでなく、残業が多く、労働時間が長くなってしまうパターンです。労働時間が長いだけではブラック企業とは言い切れませんが、給料と見合っていなければブラック企業だといえるでしょう。
また、「カレンダー通りの休みが欲しい」「ワークライフバランスを充実させたい」と思っている人もブラック企業だと感じてしまいます。例えば、以下のような求人募集です。
業界 | 流通・小売業界 |
仕事内容 | 店舗で活躍できる事務スタッフ |
勤務地 | 東京・神奈川・埼玉・千葉 |
給与 | 月給23万円~ (固定残業代45時間を含む) |
初年度想定年収 | 300~400万円 |
就業時間 | 9:00~18:00 (休憩60分) |
福利厚生 | 社会保険完備 社宅制度あり 勤務地限定制度 |
休日・休暇 | 年間休日100日(週休2日制) |
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、1人当たりの平均年間休日は115.6日です。上記の求人募集であれば15日間少なくなっています。また、固定残業代45時間を含まれているのため、給与が低く労働時間も長くなってしまいます。
休みが少ない会社で多いのは「週休2日制」です。「完全週休2日制」ではないので注意しましょう。完全週休2日制は、必ず週2日休みがあります。一方の「週休2日制」は、週2日が約束されていないため、週1日の場合もあります。必ず週休2日ほしい人は「完全週休2日制」の企業を探しましょう。
求人募集が多く期間も長い
1年を通してずっと求人募集している企業は避けましょう。入社した社員が定着せず、離職率の高き企業ほど募集期間が長い傾向があります。ただし、募集期間が長いかどうかは、長期間転職活動している人でなければ、判断が難しいです。
また、募集期間だけでなく募集人数にも注目してください。規模の小さい企業(従業員数)に対して、募集人数が多い場合も、入れ替わりが激しいことが予想されます。現在は、人手不足の企業が多いため少し判断が難しいですが、業績などを一緒に加味して考えましょう。
募集条件がゆるい
募集条件がゆるい企業にも注意が必要です。「未経験者歓迎」「やる気だけでもOK」「学歴・年齢不問」などが書かれている募集は、誰でもいいから人手を求めている可能性があります。このような企業は、社員の入れ替わりが激しい傾向にあるので、注意しましょう。
「アットホームな職場」「若手が大活躍」など、企業ごとにアピール内容は異なりますが、甘い言葉を鵜呑みにするのではなく、休日や労働時間、給与などその他の条件もしっかり見た上で検討しましょう。
ブラック企業の見極め方:会社説明会編
次は、会社説明会でのブラック企業の見極め方です。会社説明会では、実際に働いている社員に質疑応答ができるケースが多いため、労働条件や職場の様子などについて質問しましょう。
- 若手社員の参加が多い
- 具体的な情報を入手する
若手社員の参加が多い
会社説明会に参加したら、参加している社員に注目しましょう。若手社員の参加が多ければ、中堅社員が離職している可能性があります。もちろん中堅社員がいないからといって、一概にブラック企業とはいえません。そのため、参加している社員の年齢や役職、雰囲気などを確かめることが大切です。
具体的な情報を入手する
ネットの情報だけではわからないことや、ネットには載っていない情報をがあります。会社説明会では、質疑応答の時間がありますので、実際の社員から具体的な情報を聞き出しましょう。ほとんどのケースで会社説明会は選考に含まれませんので、思い切った質問をして問題ありません。例えば、以下のような質問をしてみましょう。
- 月の平均残業時間は何時間ですか?
- 職場でパワハラやセクハラなどを見たことがありますか?
- 週休2日制とありますが、週1日休みは多いですか?
- 会社の定着率を教えてください
- 有給休暇の取得率を教えてください
具体的な数値を提示できればいいですが、抽象的であったり、話をごまかしたりする場合は、ブラック企業の可能性があります。
ブラック企業の見極め方:情報収集編
次は情報収集編です。転職先に関する情報を集めブラック企業かどうかを見極めましょう。
- 口コミ・評判を確かめる
- 就職四季報を確かめる
- ブラック企業リストに名前がないか確かめる
口コミ・評判を確かめる
企業について知るためには、実際に働いていた人や現役社員の口コミを参考にしましょう。例えば、「OpenWork」や「en Lighthouse」などがあります。この2つは投稿するために会員登録が必要なので、自由に投稿できる口コミサイトより信ぴょう性は高いです。
給与や福利厚生、残業時間、社風など、自分の気になる項目をチェックしてブラック企業か見極めましょう。ただし、口コミはあくまで参考として捉えてください。口コミサイトは誰でも書き込めますので、必ずしもその情報が正しいとは限りません。
企業がお金を払って悪い口コミを消している場合もあります。すべてを鵜呑みにしないよう注意しましょう。
就職四季報を確かめる
就職四季報とは、東洋経済新報社が発行しており、転職(就職)に役立つ情報が記載されているデータ集です。就職四季報には「平均継続年数」「3年後離職率」が掲載されていますので、この2つを使ってブラック企業を見極めましょう。
平均継続年数が低かったり、3年後離職率が高かったりする企業は、ブラック企業である可能性が高いです。就職四季報は有料なので、無料でデータを集めたい人は、厚生労働省の「雇用動向調査」を参考にしてください。
ブラック企業リストに名前がないか確かめる
ブラック企業リスト(労働基準関係法令違反に係る公表事案)は、厚生労働省が発表しています。ブラック企業リストには、各都道府県の労働基準関係法令違反した企業がリストアップされています。過去のデータも閲覧できますので、労働環境の悪い状態が常習化されていないか確かめましょう。
また、非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構では、ホワイト企業だけでなくブラック企業も検索可能です。こちらも併せて見ておくといいでしょう。
この2つに名前が載っていないからといって、ホワイト企業というわけではありません。会社の数が多すぎてすべてを見切れていません。求人募集内容や口コミ、会社説明会など他の要素も加味した上で、ブラック企業が見極めましょう。
ブラック企業の見極め方:面接編
最後は、面接でのブラック企業の見極め方です。面接官とのやりとりの中で、労働環境や社内の様子などを見極められる可能性があります。
- 面接官の態度が悪い
- 内定までが早すぎる
面接官の態度が悪い
面接官の態度が悪かったり、高圧的な受け答えをしたりなど、まともな対応をとってもらえない場合は、ブラック企業の可能性があります。また、「清潔感がない」「時間にルーズ」といった面接官には注意しましょう。圧迫面接で高圧的な態度とる面接官はいますが、清潔感のなさや時間にルーズなことは圧迫面接とは関係がありません。
入社後でも似た態度をとり、パワハラ被害にあう可能性があります。面接官の態度が良い=ホワイト企業とも言い切れませんが、面接官の態度が悪いような企業はおすすめできません。
内定までが早すぎる
面接から内定までが早すぎる場合、「誰でもいいから採用したい」と思っている可能性がありますので、注意しましょう。企業側がしっかりと人材を見極められていなければ、入社後にミスマッチが生じやすくなります。また、誰でもいいから採用していた場合、無理な働き方を強要されることもあります。
すぐに内定をもらえることはうれしいことですが、少し考えてみてもいいでしょう。もちろん、書類選考時からある程度目星を付けている場合もあります。内定までが早いだけで、一概にブラック企業とはいえませんので、他の要素も含めて見極めましょう。
ブラック企業の特徴をおさらい
そもそもブラック企業とは、どのような特徴があるのかおさらいしていきましょう。
- そもそもブラック企業とは?定義は?
- 長時間労働(長時間残業)が常習化している
- ハラスメント(パワハラ・セクハラ)が横行している
- 離職率が高い
- 給与が低く労働時間と見合っていない
そもそもブラック企業とは?定義は?
ブラック企業には明確な定義がありません。しかし、厚生労働省ではブラック企業の特徴を以下のように説明しています。
① 労働者に対し極端な長時間労働やノルマを課す
② 賃金不払残業やパワーハラスメントが横行するなど企業全体のコンプライアンス意識が低い
③ このような状況下で労働者に対し過度の選別を行う
引用元:厚生労働省
上記のように「残業時間が〇〇時間以上」というように、明確に記載されていないことがわかります。また忙しさも業種や企業によっても異なりますし、ハラスメントといっても個人の捉え方で変わりますので、定義するのが難しいでしょう。
ブラック企業を定義するのは難しいですが、一般的にはどのような特徴があるのか具体的に見ていきましょう。
長時間労働(長時間残業)が常習化している
ブラック企業では、長時間労働が常習化している傾向にあります。年末年始や決算のときだけ、長時間労働になる場合は、ブラック企業とはいえないでしょう。
ノルマや仕事量が多すぎて定時までに終わらず、毎日残業が発生するケースが多いです。また、長時間労働が常習化することで、「早く帰るのが悪」といったイメージがついてしまうこともあります。
労働基準法第32条では、「1日の労働時間は8時間」「1週間の労働時間は40時間」と定められています。この法定労働時間を超えて労働させる場合は、36協定の締結が必要です。36協定を締結した場合であっても、時間外労働時間は月45時間、年360時間と定められています。
そのため、上記の労働時間を超えるような企業はブラック企業です。自分の1ヶ月の労働時間が長いか短いかを比較するために、厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」を参考にしてください。毎月勤労統計調査の「令和6年8月分結果速報」によれば、一般労働者(パートタイムを除く)の平均総実労働時間は、155.7時間、時間外労働時間は12.4時間です。
ハラスメント(パワハラ・セクハラ)が横行している
ブラック企業では、上司や社長の意見が最重要視され、その他の従業員の声が通りにくい傾向があります。いわゆる風通しの悪い職場環境になっており、上司からパワハラやセクハラがあっても問題視されないことが多いです。
本来であれば、パワーハラスメント防止措置が義務化されているため、企業はしかるべき対応をとらなければなりません。しかし、ブラック企業の場合は、社内に相談窓口が設置されていたとしても相談しにくかったり、機能していなかったりして、防止措置がとられていないケースがあります。
給与が低く労働時間と見合っていない
労働時間が長いのにそれに見合った給与が支払われていない場合は、ブラック企業の可能性があります。例えば、残業代が支払われない、管理職なのに給与が上がらないなどです。
とくに残業代が支払われないといった悩みを抱える労働者は多くいます。「早出は残業に入らない」「月20時間以上の残業代は払わない」など、企業独自のルールによって残業代が支払われないケースもあります。
もちろん、これらはすべて労働基準法違反です。上司の決めたルールか法律で決まっているルールかを見極めることも大切です。
離職率が高い
ブラック企業は離職率が高い傾向があります。先ほど紹介した「長時間労働(長時間残業)が常習化している」「ハラスメント(パワハラ・セクハラ)が横行している」などが原因です。厚生労働省が発表している「令和5年雇用動向調査結果の概況」によれば、2023年の一般労働者の離職率は12.1%です。
「生活関連サービス業,娯楽業」の離職率が20.8%と一番高く、「複合サービス事業」が6.8%と一番低くなっています。平均よりも離職率が高い場合は、ブラック企業の可能性があります。
ブラック企業を見極めて転職を成功させるコツ
ブラック企業を見極めて転職を成功させるコツは、以下の通りです。
- 安易な理由に流されない【求人情報をしっかり見ること】
- ブラック企業にとらわれすぎない【転職軸を明確にすること】
- 転職エージェントを利用する【転職のプロにサポートしてもらう】
それぞれについて見ていきましょう。
安易な理由に流されない【求人情報をしっかり見ること】
「給与が高い」「勤務地が近い」など、安易な理由で転職先を決めてはいけません。ブラック企業を見極めるには、求人情報をしっかりと確かめることです。給与や勤務地だけでなく、休日・残業時間・賞与・福利厚生など、総合的に判断して転職先を選びましょう。
ブラック企業にとらわれすぎない【転職軸を明確にすること】
ブラック企業を避けられれば、転職が成功するわけではありません。もちろん、ホワイト企業だからといって転職に成功したとも限りません。転職する目的を明確にし、設定した条件や希望を満たせる企業であることが重要です。
ホワイト企業に就職できたとしても、自分のやりたい仕事でなければ、また転職することになってしまいます。転職軸を明確化し「自分の譲れない条件」「大切にしている条件」などが、満たされているか確認しましょう。
転職エージェントを利用する【転職のプロにサポートしてもらう】
転職活動が難航している人は、転職エージェントを利用しましょう。転職エージェントでは、転職のプロがあなたの条件を聞き出し、理想の転職先をピックアップします。とくに初めて転職する人は、新卒との違いに戸惑う人もいるのではないでしょうか。
転職の進め方や企業の探し方、面接対策など幅広くサポートしてもらえますので、検討してみましょう。
ブラック企業の見極め方に関するよくある質問
ブラック企業の見極め方に関するよくある質問は、以下の通りです。
- ホワイト企業を教えてください
- ブラック企業に入ってしまったときはどうする?対処法は?
- 新卒でブラック企業に入ってしまい、すぐ辞めるのは大丈夫?
それぞれについて見ていきましょう。
ホワイト企業を教えてください
ブラック企業と同様にホワイト企業の定義はありません。ホワイト企業に関しては、経済産業省が発表している「健康経営優良法人2024ホワイト500」を参考にしてください。経済産業省がホワイト企業を500位までランキングしているため、参考になります。2024年10月時時点の上位10は、以下のようになっています。
順位 | 企業名 |
---|---|
1位 | 社会福祉法人美芳会 |
2位 | 株式会社東洋開発 |
3位 | ケーブルテレビ株式会社 |
4位 | アスカカンパニー株式会社 |
5位 | 株式会社日本エー・エム・シー |
6位 | 株式会社岡部機械工業 |
7位 | 株式会社東京海上日動コミュニケーションズ |
8位 | 静銀ビジネスクリエイト株式会社 |
9位 | アフラック生命保険株式会社 |
10位 | 株式会社イオンファンタジー |
参考元:SHEM 非営利一般社団法人 安全衛生優良企業マーク推進機構
ブラック企業に入ってしまったときはどうする?対処法は?
ブラック企業に注意していても、入ってからブラック企業であることに気がつく場合もあります。ブラック企業に入ってしまった場合は、法律違反しているかどうかを確かめましょう。思ったよりも労働時間が長かったとしても、労働基準法に則った労働時間であれば違法ではありません。
残業代が支払われない、パワハラやセクハラ被害を受けているなど、法律違反があれば労働基準監督署や弁護士に相談したり、転職を検討したりしましょう。ブラック企業であれば、簡単に辞められないケースがあります。そのようなときは、退職代行サービスを利用してみましょう。
新卒でブラック企業に入ってしまい、すぐ辞めるのは大丈夫?
新卒でブラック企業に入社後、すぐ(3年以内)に辞めた場合は「第二新卒」として扱われます。第二新卒は、新卒同様、スキルや経歴よりも学歴や将来性が重視されるため、求人募集も多くあります。そのため、すぐに辞めたとしても転職が不利になりません。
しかし、1年未満に辞めてしまうとアピールポイントがなく「またすぐに辞めるのでは?」とマイナスの印象を与える可能性があります。そのため、できる限り1年以上は在籍することをおすすめします。
新卒がすぐ辞めると転職に不利になるのかは、こちら「新卒ですぐ辞めるとその後の転職は厳しい?就職後にすぐ転職を成功させる方法を紹介 – 退職代行ほっとライン」の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
ブラック企業は、求人募集や会社説明会、面接などで見極めることが可能です。ただし、ブラック企業にとらわれすぎてもいけません。ブラック企業なかったとしても、自分の転職軸とは離れた企業に転職すると入社後にギャップを感じる可能性があります。しっかりと検討してから転職先を選びましょう。
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