業務時間外の連絡は無視していい?違法性や連絡が来たときの対応を解説

日本労働組合総連合会が発表した「つながらない権利に関する調査2023」結果によると、回答者の7割以上の人が業務時間外に連絡がくると答えました。また6割以上の人が連絡に対してストレスを感じると答えました。業務時間外の連絡にストレスを感じている人はいますが、無視していいのかわからない人は多いのではないでしょうか。

本記事では、業務時間外の連絡を無視してもいいのか、違法になるのかについて解説します。また、業務時間外の連絡が来たときにどのように対応すればいいか紹介しますので、参考にしてください。

本記事の結論

・業務時間外の連絡は無視して問題ない
・業務時間外の連絡が来たときの対応は、無視する、きっぱり断る、通知をオフにする、賃金を請求する
・業務時間外の連絡を禁止する法律は日本にはない(海外では禁止にしている事例がいくつかある)

業務時間外の連絡は違法になるのか

業務時間外の連絡は違法になるのか気になる人は、多いのではないでしょうか。以下の3つについて詳しく説明します。

  • 業務時間外の連絡を禁止する法律はない
  • 業務時間外の連絡が違法になるケースとは
  • 「つながらない権利」とは

業務時間外の連絡を禁止する法律はない

日本には業務時間外の連絡を禁止する法律はありません。そのため、業務時間外に連絡が来たからといって違法とはいえないのです。しかし、海外では業務時間外の連絡を禁止する法律があります。例えば、フランス・イタリア・メキシコ・カナダの一部などでは、「つながらない権利」によって業務時間外の連絡を法令で禁止しました。

つながらない権利に関して後ほど紹介しますので、参考にしてください。日本では、法制化する動きはありませんが、厚生労働省の「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」によって注意喚起を促しています。

業務時間外の連絡についてルールを設けることが望ましいことや、業務時間外の連絡に返事をしなかったからといって不利益な人事評価を行うことは適切ではないと、記載していますが、強制力はありません。

業務時間外の連絡が違法になるケースとは

業務時間外の連絡を禁止する直接的な法律はありませんが、違法になるケースも存在します。基本的に業務時間外に労働を命ずることは許されていません。休みの日であっても、上司からの連絡に何度も返事をしていては、労働と変わらないからです。

労働基準法第35条では、「労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」と定められています。また、労働基準法第37条では、「休日出勤や深夜労働させた場合には割増賃金を支払わなければならない」と定めています。つまり、業務時間外の連絡が「業務」に値する場合、労働基準法第35・37条に違反する可能性があるのです。

そのため、業務時間外の連絡が「労働時間」に当てはまる場合は、メールの返事をしていた時間分の給料や残業代を請求しましょう。業務時間外の連絡が労働時間に当てはまるかどうかの判断は難しいです。そのため、自分で判断しきれない場合は、労働基準監督署や労働関係に強い弁護士などに相談してみましょう。

たとえ業務時間外の連絡が業務ではなかったとしても、民法709条(不法行為)にあたる可能性があります。また、業務とは関係のないプライベートな連絡が来る、侮辱する内容が送られる、嫌がらせのように大量のメールが来るといった場合はハラスメント行為です。ハラスメント行為は、違法行為ですので、この場合は業務時間外の連絡であっても違法となります。

「つながらない権利」とは

つながらない権利とは、業務時間外に上司や取引先などの業務連絡に対し、対応する義務がないことを主張する権利のことです。明確な定義がありませんので、「業務時間外に仕事とつながらない権利」や「業務時間外に仕事に関する連絡を遮断する権利」などと説明されます。

本来、休日は労働者の休息の場ですので、勤務先といえど立ち入ることはできません。しかし、「業務」と「連絡」の意識を間違えている会社では、休日であっても仕事の対応を求められることがあります。日本では、つながらない権利を主張する労働者が増えていますが、法制化には至っておりません。

先ほど説明した通り、海外(フランス・イタリア・メキシコなど)では、つながらない権利が法律として義務付けられています。そのため、日本でも近い未来に法制化する可能性があるでしょう。

業務時間外の連絡は無視していい?上司や取引先への対応方法

「休日に仕事の連絡をしたくない」と思う人は少なくありません。本当は無視したいけど「無視すれば処罰があるのでは?」と不安に思う人もいるでしょう。業務時間外に上司や取引先から連絡が来た場合の対応方法を見ていきましょう。

  • 業務時間外の連絡を無視しても問題ない
  • 業務時間外の連絡に気がつかないように通知をオフにする
  • 業務時間外の連絡をきっぱり断る
  • 業務時間外に連絡した分の残業代を請求する
  • 業務時間外に取引先から連絡が来たときは?

業務時間外の連絡を無視しても問題ない

業務時間外の連絡を無視しても問題ありません。業務時間外にメールを確認する義務はありません。休日は労働者の自由な時間ですので、勤務先に従う必要がないからです。もちろん、対応を要する連絡であったとしても、無視して問題ありません。

無視したことによって減給や解雇など、不利益が生じた場合は不当処分です。不当処分は違法ですので、処分の撤回や訴訟などが可能です。

仮に業務時間外にメールの確認などを義務付けられていた場合は、無視してはいけません。

しかし、この場合は労働時間となりますので、給与が発生します。会社が給与や残業代を支払わない場合は、違法になりますので、未払い分を請求しましょう。

業務時間外の連絡に気がつかないように通知をオフにする

業務時間外の連絡に気がついてしまうと、返信しなければならないと思ってしまいます。連絡を見たのに無視することに対して、罪悪感を感じてしまう人もいるのではないでしょうか。そのため、連絡に気がつかないように通知をオフにしましょう。

例えば、LINEで連絡が来る場合は、通知をオフにしたり、休日のみ非表示に変えたりしましょう。連絡がわからなければ、罪悪感を感じることもありません。連絡がないとわかれば、連絡者も諦めるでしょう。

業務時間外の連絡をきっぱり断る

業務時間外に何度も連絡されるのが嫌な人は、初めにきっぱりと断ることが大切です。例えば、「休日はプライベートを重視するため、連絡を返しません」「この後用事があるので、夜まで返事ができません」などと説明しましょう。人によっては無視しても、何度も連絡を送ってくる場合があります。しかし、最初に断っておけば何度も連絡が来ることはありません。

無視や断ることが苦手な人は、連絡を返すスピードを遅くしましょう。6時間に1回などのペースで連絡を返せば、休日は返事を返すのが遅い人だという印象を与えられます。また、用事があったとしても連絡が遅ければ、別の人に頼る可能性が高くなります。連絡自体は返しているので、無視しているわけではありません。

普段通り連絡を返してしまうと、連絡すれば返ってくるものだと解釈されます。早い段階で業務時間外に連絡しても、返事がないことをアピールしておきましょう。

業務時間外に連絡した分の残業代を請求する

先に説明した通り、業務時間外の連絡を強制された場合は労働時間に当てはまります。当然、労働時間は給与や残業代が発生しますので、会社に請求しましょう。ただし、残業代を請求するためには、働いた証拠が必要です。例えば、以下のような証拠を集めておきましょう。

  • 対応したメールや電話の送受信履歴
  • 社用のスマホやパソコンから連絡する場合は、そのログの記録
  • 私用の場合は、Web閲覧履歴

証拠が不十分であれば労働時間として認められない場合があります。業務時間外に連絡した分の残業代を請求する場合は、しっかりと証拠を集めておきましょう。

業務時間外に取引先から連絡が来たときは?

業務時間外に連絡が来るのは会社だけではありません。自社からの連絡は無視できても、取引先から連絡は無視できない人もいます。取引先からの連絡を無視すると、クレームにつながりかねません。業務時間外に取引先から連絡が来た場合は、自己判断で決めずに上司からの指示を仰ぎましょう。

会社によっては営業時間外であっても、手厚くサポートすることを約束している場合があります。残業代が発生しない管理監督者が対応することもあります。上司から業務時間外であっても対応するようにいわれた場合、対応しましょう。この場合は、労働時間に含まれますので、働いた賃金を後ほど請求することを上司に伝えておきましょう。

上司側で対応する場合は、連絡に対応する義務がありませんので、任せておいて問題ありません。もし、取引先から連絡が来た場合は、上司が対応する旨を伝えて、連絡先を教えれば連絡が来ることはないでしょう。

業務時間外に連絡が必要になったときどうする?

業務時間外に連絡が来た場合は、基本的に無視していいですが、自分が連絡する側になった場合も考えておきましょう。

  • 業務時間外に連絡するときのマナー
  • 【上司から部下】へ業務時間外に連絡するときの伝え方
  • 【部下から上司】へ業務時間外に連絡するときの伝え方

業務時間外に連絡するときのマナー

業務時間外の連絡は、相手に迷惑をかけますのでマナーを守ることが重要です。上司から部下に送る場合は、パワハラと思われないようにとくに注意が必要です。業務時間外に連絡するときは、以下のマナーを守りましょう。

  • 業務時間外に連絡を送ることについて謝罪の文章から始める(夜分遅くに失礼いたします、業務時間外に連絡して申し訳ございませんなど)
  • 緊急性があることをメールの件名で伝える(LINEであれば謝罪文の次に記載する)
  • 本文は用件を簡潔にまとめる
  • 緊急である理由を伝える
  • 相手に何を求めているのか簡潔に記載する
  • 文末にもう一度謝罪文を入れる

業務時間外の連絡に対して、相手に対応してもらったときは必ず感謝の連絡を伝えることが大切です。また、用件が解決したことも一緒に伝えておくといいでしょう。

【上司から部下】へ業務時間外に連絡するときの伝え方

上司から部下へ業務時間外に連絡するときの伝え方を紹介します。

件名:【要確認】明日の研修時間の変更について

〇〇さん。業務時間外の連絡失礼します。

明日の研修時間が10時から14時に変更になりましたので、取り急ぎ連絡しました。

研修会場には乗り合わせで行くと聞いていたため、同伴する方への連絡をお願いします。

夜分遅くに申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

上司から部下に業務時間外に連絡するときは、パワハラといわれないように言葉に注意しましょう。上司だからといって謝罪の言葉がなかったり、命令口調になっていたりしないように気をつけてください。

【部下から上司】へ業務時間外に連絡するときの伝え方

部下から上司へ業務時間外に連絡するときの伝え方は、以下の通りです。

件名:【至急】明日の会議に必要な資料について

〇〇さん

お世話になっております。〇〇です。
業務時間外に連絡してしまい、申し訳ございません。

本日、業務時間に〇〇さんから頼まれていました、明日の会議に必要な資料が用意できました。

取り急ぎ必要な問題と判断し、夜分遅くではありますがご連絡いたしました。

明日の会議に必要な資料を添付いたしましたので、ご確認お願い致します。よろしくお願いいたします。

業務時間外に連絡するときのマナーをしっかり守り、誤字脱字のないように注意しましょう。

業務時間外の連絡についてよくある質問

業務時間外の連絡についてよくある質問は、以下の通りです。

  • 上司や取引先に連絡先を聞かれた場合は断ってもいいの?
  • 業務時間外の連絡はハラスメントになる?
  • 業務時間外の連絡でストレスを感じる人は多い?

それぞれについて見ていきましょう。

上司や取引先に連絡先を聞かれた場合は断ってもいいの?

上司や取引先にプライベートの連絡先を聞かれた場合、断っても構いません。プライベートの連絡先を教えてしまうと、少なからず業務時間外に連絡が来る回数が増えてしまいます。もしあなたが、「この人には連絡先を教えたくない」と思っているのなら、素直に断りましょう。

仕事上、連絡が必要な場合もあるので、仕事用のメールアドレスをつくっておくことをおすすめします。仕事用のメールアドレスを教える際に、「仕事用のメールアドレスなので業務時間外は連絡ができません」と事前に伝えておけば、連絡で来る心配がありません。仮に連絡が来たとしても事前に伝えているため、無視して構いません。

事務職をしている人などは、自分以外の連絡先を聞かれることがあります。例えば、取引先から「〇〇さんいますか」と聞かれ「〇〇はあいにく席を外しております」と伝えると、「〇〇さんに連絡を取りたいから電話番号を教えて」などと聞かれる場合があります。

この場合は、基本的に連絡先を本人の許可なく伝えてはいけません。本人の許可がない場合は「会社の規約により連絡先をお伝えすることができません」と伝えましょう。

業務時間外の連絡はハラスメントになる?

業務時間外の連絡は、連絡する内容によってハラスメントになる可能性があります。とくに上司から部下への連絡は、伝え方次第で、ハラスメントと捉えられる可能性があるので、注意しましょう。例えば、以下の連絡はハラスメントになる可能性があります。

  • 業務に関係のないプライベートな話をする
  • 返事が来るまで何度も連絡を送る
  • 「連絡しなければ給料を減らす」など圧力をかける
  • 「〇時までに必ず連絡を返すこと」など返事を強制する
  • 「〇時までに資料を作っておいて」など休暇中に業務を与える

上記のような連絡が来る人は、社内の相談窓口に相談しましょう。

業務時間外の連絡でストレスを感じる人は多い?

日本労働組合総連合会が発表した「つながらない権利に関する調査2023」結果によると、「業務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがある」と答えた人は72.4%です。また、「業務時間外に取引先から業務上の連絡がくることがある」と答えた人は44.2%です。取引先よりも社内からの連絡が多いことがわかります。

「業務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくるとストレスを感じる」と答えた人は、62.2%です。連絡の内容を確認しないと内容が気になってストレスを感じると答えた人が多くいます。

まとめ

業務時間外の連絡は基本的に無視して構いません。業務時間ではないため連絡を返すかどうかは、労働者の自由です。もし、連絡を無視したことにより、減給や解雇など不当な処罰を科された場合は違法です。

業務時間外の連絡は違法ではありませんが、状況によっては違法になる可能性があります。日本では法制化されてませんが、海外では「つながらない権利」として、業務時間外の連絡を法律で禁止しているところもあります。業務時間外の連絡が来たときは、無視するか、きっぱり断るなど対処しましょう。

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