人手不足の会社であれば、有給休暇が取れない場合があります。有給休暇の取得は、義務化されているため、有給が取れない場合は違法である可能性が高いです。
本記事では、人手不足で有給が取れないときに取得するコツを紹介します。有給が取れないで悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
・有給が取れないのは違法。繁忙期や研修期間などは「時季変更権」によって有給を取る時期を変更できる
・「複合サービス事業」が最も有給が取りやすく、「宿泊業,飲食サービス業」が最も有給が取りにくい
・有給休暇は、6ヶ月以上かつ8割以上出勤している労働者に与えられる休暇のこと
人手不足で有給が取れないときに取得するコツ
人手不足で有給がとれないときに取得するコツは、以下の6つです。
- 有給が欲しい期間を早めに伝える
- 有給が取れやすい時期を選ぶ
- 仕事を休む期間のケアを徹底する
- 有給が取れない理由が正当であるか聞く
- 労働基準監督署や労働組合に相談する
- 転職を検討する
それぞれについて見ていきましょう。
有給が欲しい期間を早めに伝える
有給が欲しい期間を早めに伝えておくことが大切です。急に有給が欲しいといっても、スケジュールを調整することが困難です。また急な有給は他の従業員にも迷惑がかかります。あなたが有給を取ることによって、他の従業員のシフトが急に変われば、反感を買うことになるでしょう。
そのためにも事前に上司だけでなく、他の従業員にも周知させておくことが重要です。また、毎年決まった時期に有給を取る場合は、入社時からアピールしておきましょう。
例えば、「私は旅行が好きなので、毎年7月末には全国各地を旅しています」というように話しておけば、「7月末は〇〇さんが旅行に行く」と印象付けることが可能です。社内が認知していれば、有給が取れないと悩む必要はありません。
有給が取れやすい時期を選ぶ
有給が取れやすい時期・取れない時期を考えて申請することが大切です。業種によって繁忙期は異なりますが、会社の繁忙期に有給申請した場合、認めてもらえない可能性があります。
人手不足でなかったとしても、繁忙期は会社の業績に関わる重要な時期ですので、有給が取れないケースが多くあります。仮に有給が取れたとしても、自分の評価を下げる可能性があるため、注意しましょう。
繫忙期に有給を取ることは、会社の重要な時期に貢献する意思がないと思われてしまいます。また、他の従業員の負担を増やすことになるため、いい顔はされないでしょう。
有給が取れないと悩んでいる人は、なるべく閑散期に有給を取りましょう。
仕事を休む期間のケアを徹底する
あなたが有給を取れば、少なからず他の従業員に負担ががかります。とくに長期休暇を希望する場合はなおさらです。そのため、仕事を休む期間のケアを徹底することが大切です。
何かあったときの具体的な対策案や、休みの間でも連絡が取れる時間帯などを伝えておきましょう。また、緊急時には仕事に戻れるかどうかも共有しておくといいでしょう。
「プライベートの時間は仕事の連絡をしたくない」と思う人は少なくありません。しかし、「わからないことがあればいつでも連絡していいよ」といったスタンスの方が、他の従業員の不安を軽減できます。
他の従業員が安心して働ける環境を整えておくことも、有給を取りやすくするコツです。そのため、長期休暇の場合は、なるべく仕事の応対ができるように心がけましょう。
有給が取れない理由は正当であるか聞く
上司から有給が取れないといわれたときは、「なぜ有給が取れないのか」理由を聞きましょう。業務への支障を理由に有給が取れない、または時期を変更されることは仕方ありません。しかし、理由が不透明である場合は、明確な理由を求めることが大切です。
有給が取れない理由をはぐらかされたり、有給を取り下げるよう脅迫されたりする場合があります。このように話を聞いてもらえない場合は、労働基準監督署や労働組合、弁護士などに相談しましょう。
労働基準監督署や労働組合に相談する
労働者には有給を取る権利があります。有給を取りたいと主張しているにもかかわらず、なかなか有給が取れない人は、労働基準監督署や労働組合に相談してみましょう。
例えば、労働基準監督署は労働基準法に違反している可能性が高い場合、会社に立ち入り検査をし、是正勧告や行政指導など行うケースがあります。
ただし、調査するには違法行為の証拠がなければ動いてもらえません。そのため有給取得を拒否された証拠を集めてから相談しましょう。
転職を検討する
有給が取れない会社は、労働環境に問題がある可能性があります。現在の会社で有給を取ることにこだわらず、転職を検討することも1つの手です。今回は労働基準監督署や労働組合などに相談して有給が取れたとしても、次回に有給が取れるとは限りません。
退職時には残っている有給を消化できますので、労働環境の良い転職先を探してみましょう。
有給が取れない場合は違法なのか
有給が取れない場合は違法なのか、なぜ取れないのか理由について解説します。
- 有給が取れないことが違法にあたるケース
- 有給が取れない理由は?
有給が取れないことが違法にあたるケース
有給休暇の取得は労働者の権利であり、会社の一方的な都合で有給が取れない場合は違法にあたります。例えば、以下のようなケースです。
パターン1:「有給休暇はないといわれた」
有給休暇のない会社は存在しません。有給休暇は会社の規定ではなく、労働基準法で定められています。そのため、「有給休暇はない」といった発言は違法にあたります。ただし、有給休暇は入社して6ヶ月以上かつ8割以上出勤しなければ、有給休暇は付与されません。
あなたがこの条件を満たしていない場合、「あなたに有給休暇はない(付与されていない)」といわれても違法ではありません。
パターン2:有給を取る理由次第で取得できるか異なる
有給を取ってどのように過ごすかは労働者の自由です。
しかし、「ライブに行くために有給を取ることは認められない」「資格を取るためなら有給を取っても良い」といったように内容によって有給休暇の取得を拒否することは違法です。
有給が取れない理由は?
有給休暇の取得は労働者の権利でありますが、必ずいつでも取れるわけではありません。有給が取れないケースも存在します。例えば以下のようなケースでは、有給を取ることが難しいです。
- 会社の繁忙期や人手不足で業務に支障が出る場合
- 業務に必要な研修期間の場合
- あなたの代わりとなる人がいない場合
具体的に解説します。
会社の繁忙期や人手不足で業務に支障が出る場合
会社の繫忙期や人手不足、長期休暇を希望する場合、有給を取ることで業務に支障をきたす可能性があります。この場合は会社は有給を取る時期を変更することが可能です。
この会社の権利を「時期変更権」といい、労働基準法第39条で定められています。
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
この法律は名前の通り「時期を変更」する権利です。会社はいつなら有給が取れるのか代替え日を提示する必要があります。
業務に必要な研修期間の場合
会社が設定した研修期間は、時季変更権を行使できる可能性があります。研修は、業務に必要な知識や技能を身につける期間です。業務を円滑に進めるために必要な期間であるため、研修期間内での有給消化は難しいでしょう。
あなたの代わりとなる人がいない場合
あなたが特定の専門技能を持つ場合や特定のポジションにいる場合は、あなたが有給を取ることで業務に重大な影響を及ぼす可能性があります。そのため、会社の業務に支障が出るような時期・状況においては、有給の時期を変更するように求められる場合があります。
有給を取りやすい仕事はあるのか?
有給が取れない理由は「人手不足」や「忙しさ」が原因です。人手不足や忙しさは企業や業種によって異なります。有給を取りやすい仕事はあるのか見ていきましょう。
- 有給が取りにくい業界・取りやすい業界
- 大手企業や有名企業
- 女性役員が活躍する職場
有給が取りにくい業界・取りやすい業界
厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると、令和5年の有給取得率は62.1%と過去最高の値でした。業種によって有給の取りやすさが異なります。上記の調査をもとに有給が取りにくい業種・取りやすい業種を表にまとめましたので、参考にしてください。
【有給が取りにくい業種】
順位 | 業種 | 平均取得率 | 平均取得日数 |
---|---|---|---|
1 | 宿泊業,飲食サービス業 | 49.1% | 6.7日 |
2 | 教育,学習支援業 | 54.4% | 9.8日 |
3 | 卸売業,小売業 | 55.5% | 9.7日 |
ー | 平均値 | 62.1% | 10.1日 |
【有給が取りやすい業種】
順位 | 業種 | 平均取得率 | 平均取得日数 |
---|---|---|---|
1 | 複合サービス事業 | 74.8% | 14.4日 |
2 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 73.7% | 14.4日 |
3 | 製造業 | 65.8% | 12.3日 |
ー | 平均値 | 62.1% | 10.1日 |
1番有給が取りにくい業種は「宿泊業,飲食サービス業(49.1%)」です。1番有給の取りやすい「複合サービス事業(74.8%)」と比べると平均取得率が25.7%も異なります。現在の業種では、有給が取りにくいと感じる人は、上記の表を参考に転職を検討してください。
大手企業や有名企業
有給の取りやすさは業種だけでなく、企業規模によっても異なります。大手企業や有名企業のような、企業規模の大きい会社は、福利厚生が充実しており、豊富な人材を有している傾向にあります。そのため、有給が取りやすいです。
企業規模 | 有給取得率 |
---|---|
1,000人以上 | 63.2% |
300~900人 | 57.5% |
100~299人 | 55.3% |
30~99人 | 53.5% |
女性役員が活躍する職場
女性役員が活躍する職場は、育児休暇や産前・産後休暇など休暇制度が整っている傾向があります。またワークライフバランスにも力を入れていることが多く、有給を取りやすいでしょう。
そもそも有給休暇とは?
有給休暇とはどのようなものなのか、知識を深めていきましょう。
- 有給休暇の定義
- 有給休暇の取得は義務付けられている
- 有給休暇には時効がある
- 有給休暇は買取できない
- パートやアルバイトにも有給休暇はあるの?
- 有給が取れない雰囲気があるときは?
それぞれについて解説します。
有給休暇の定義
有給休暇は、一定の条件を満たしたものに対し与えられる休暇のことです。労働基準法第39条には以下のように定義しています。
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
上記の条件を満たして労働者に対して、有給休暇が付与されるため、雇用形態の限定はありません。
有給休暇の取得は義務付けられている
2019年4月から年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員は、年間5日の有給を消化する義務があります。そのため、本来であれば会社が年間5日の有給が取れる環境をつくることが大切です。
「有給が取れない」のではなく「有給を取らせる」ように促すことが会社の務めです。また5日間の取得義務がありますが、「年間5日間しか取ってはいけない」というわけではありませんので注意しましょう。
有給休暇には時効がある
有給休暇の時効は2年です。付与された日から2年経てば有給が消滅しますので、注意しましょう。
時効が2年ですので、翌年までは繰り越すことが可能です。
有給休暇は買取できない
有給休暇が取れない人は、消滅するくらいなら有給を買い取ってもらいたい、と思う人は多いのではないでしょうか。しかし、有給休暇の買取は原則違法に当てはまります。
そもそも有給休暇は労働者の健康、心身のリフレッシュが主な目的です。有給休暇を買い取ってしまうと、労働者に休暇が付与されていないことになります。つまり十分な休息を確保できない環境をつくることになってしまいます。
有給休暇の買取が禁止されているのは、労働者の労働環境を保護するためです。しかし、労働者に害がない場合は、例外的に有給休暇の買取が認められるケースがあります。具体的には以下のケースです。
- 退職や解雇などで労働契約が終了し、有給休暇が消滅する場合
- 時効によって有給休暇が消滅する(もしくは消滅した)場合
もし、有給が取れずに時効で消滅する場合は、会社に交渉することも1つの手です。ただし、有給の買取は会社の義務ではありません。そのため、上手く交渉することが大切です。
パートやアルバイトにも有給休暇はあるの?
有給休暇は、入社して6ヶ月以上かつ8割以上出勤している労働者に対して付与されます。そのため、雇用形態に関係なく、パートやアルバイトにも条件を満たせば付与されます。一般的な社員は6ヶ月で付与される有給休暇は、10日です。
パートやアルバイトなどの非正規の場合は、以下の表を参考にしてください。
週所定 労働日数 | 1年間の 所定労働日数 |
継続勤務年数(年) | ||||||
0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | ||||
付与日数(日) | 1日 | 48日~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | |
2日 | 73日~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | ||
3日 | 121日~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | ||
4日 | 169日~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 |
参照元:厚生労働省「有給休暇の付与日数」
有給が取りにくい雰囲気があるときは?
まずは上司にやんわりと有給が取りたい旨を伝えましょう。有給が取りにくい雰囲気があっても、相談してみるとあっさり有給が取れることもあります。
周りの人も「みんなが取っていないから取りにくい」と思っているだけで、様子を窺っているだけかもしれません。上司に相談しても有給が取れない場合は、社外の相談窓口に相談しましょう。
まとめ
「有給が取れない」と悩んでいる人は、有給を取れやすい時期を選んだり、早めに有給が欲しい旨を伝えたりすると取れやすくなります。また業種や企業規模によっても、有給の取りやすさが異なります。
そのため、今の会社では有給が取れないので転職する場合は、業種や企業規模にも注目して転職先を選びましょう。また、有給が取れない場合は、社内外の相談窓口(労働基準監督署や弁護士など)に相談することをおすすめします。
コメントを残す