転職活動において「学歴フィルターはあるのか」気になる人は少なくありません。自分に学歴がない人は、「転職が不利になってしまうのでは?」と考えてしまうのではないでしょうか。
本記事では、転職でも学歴フィルターはあるのか、中途採用に求められるスキルについて解説します。
・中途採用では主に「ポータブルスキル」「テクニカルスキル」「マネジメントスキル」が求められる。
・学歴フィルター以外にも「即戦力になれるスキルがあるか」「アピールできる実績・経歴があるか」が重要
転職でも学歴フィルターはあるのか
結論からいえば転職でも学歴フィルターはあります。ただし、学歴を求められるケースが限られていたり、重要度が低かったりするため、転職先によって異なります。
- 新卒ほど学歴は重視されない
- 業種や職種によっては学歴を求められるケースがある
- 学歴フィルターにかからない42校とは?
それぞれについて見ていきましょう。
新卒ほど学歴は重視されない
転職においても学歴フィルターは存在します。とくに書類選考時では、学歴がある方が有利になる場合があります。ただし、新卒と比べると重要度は低いです。
転職においては、学歴よりも社会人としての経験・実績・スキルが求められるからです。新卒は、社会経験(職歴)がないため、経験や実績を図ることが難しくなります。新卒の場合、就活生の判断材料が学歴くらいしかないため、新卒は学歴が重視されやすいのです。
また第二新卒も新卒と同様の考えを持つケースが多くあります。第二新卒は、一度社会経験を得ているものの、期間が短いです。そのため、新卒と同様にその人の能力を図る材料が少なく、学歴を重視する傾向があります。
学歴はあくまでその人の学力を知るための情報であり、実績やスキルまでは判断しきれません。そのため、学歴がないという理由で、不採用にあることはほとんどないでしょう。
逆に学歴がなかったとしても、社会人としての経験が豊富にあり、即戦力になれるスキルを持っていれば、採用されるケースは多くあります。新卒と転職(中途採用)では、求められるスキルが異なるため注意しましょう。
業種や職種によっては学歴を求められるケースがある
転職において学歴フィルターが重視されるケースはあまりありませんが、業種や職種によっては学歴が求められることもあります。例えば、「総合商社・金融・保険・コンサル」などの業種は、学歴フィルターが存在するといわれています。
これらの業種は高学歴なイメージを持つ人が多く、実際に採用される人も高学歴な人が多いです。また、アナリストやディーターなど専門職も学歴を重視する傾向があります。専門職はその分野に特化した知識が必要です。その分野に精通する学校の出身者や知識を有している人は、選考が有利になります。
もちろんすべてに当てはまるわけではありません。学歴がなかったとしても、熱意や人柄が評価され採用されるケースもあります。
学歴フィルターにかからない42校とは?
大学の中には書類選考など選考が有利になる、学歴フィルターのかかりにくい大学があります。具体的には、以下の42校です。
【旧帝大】
北海道大学・東北大学・東京大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学・九州大学
【関東国公立】
一橋大学・東京工業大学・お茶の水女子大学・筑波大学・東京外国語大学・東京医科歯科大学・東京農工大学・電気通信大学・首都大学東京・横浜国立大学・横浜市立大学・千葉大学・埼玉大学
【関東私立】
早稲田大学・慶応義塾大学・ICU(国際基督教大学)・上智大学・東京理科大学・学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学・芝浦工業大学
【関西国公立】
神戸大学・大阪府立大学・大阪市立大学・大阪外国語大学(現在は大阪大学の一部)・奈良女子大学
【関西・東海私立】
関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学・名古屋市立大学
「国公立」「MARCH」「関関同立」以上であれば、比較的に学歴フィルターにかかりません。これよりも偏差値の低い「産近甲龍」「日東駒専」は学歴フィルターにかかる可能性があります。
中途採用に求められる8つのスキル
転職においては学歴ではなく、実績や経歴、スキルが求められると説明しました。具体的に以下のスキルを身につけておくといいでしょう。
- ポータブルスキル(対課題力・対人力)
- テクニカルスキル(特化スキル・専門スキル・汎用スキル)
- マネジメントスキル(リーダーシップ・コーチングスキル・目標設定スキル)
年齢によって求められるスキルが異なるため、併せて見ていきましょう。
ポータブルスキル
ポータブルスキルとは、業種や職種を問わず汎用性の高い職務遂行上のスキルのことです。つまり、ポータブルスキルがあれば、さまざまな業種・職種で活躍できます。
ポータブルスキルは「対課題力」と「対人力」の2つにわかれます。それぞれのスキルについて具体的に見ていきましょう。また厚生労働省では、ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)を提供しています。自分のポータブルスキルがどのくらいか気になる人は、診断してみてください。
1.対課題力
対課題力とは、目の前の課題を解決するために必要な力(スキル)のことです。対課題力は以下の5つの要素にわかれています。
要素 | 必要な能力 |
---|---|
現状の把握 | 現在の課題が何なのかを把握するために、必要な情報を収集し分析する能力 |
課題の設定 | 分析結果をもとに取り組むべき課題を設定する能力 |
計画の立案 | 担当業務や設定した課題を遂行するために必要な計画する能力 |
課題の遂行 | 課題を遂行するために必要な推進力や機動力 |
状況への対応 | 予期せぬ状況になっても臨機応変に対応できる対応力や責任力 |
仕事をスムーズに進めていく上で、対課題力が必要です。仕事ができる人ほど、仕事の初めに一日の流れやスケジュールを組み立て、自分の立てたプランに沿って作業を進めます。また、新しい情報にも臨機応変に対応し、高い成果をあげています。
2.対人力
対人力は、さまざまな人とより良い人間関係をつくりあげ、目標達成に向けて協力するための力です。対人力は以下の4つの要素にわかれています。
要素 | 必要な能力 |
---|---|
社内対応 | 上司や関係部署、管理者など社内メンバーと高いコミュニケーションを図る協調力 |
社外対応 | 顧客や社外パートナーとコミュニケーションを図り、相手を動かす交渉力 |
上司対応 | 上司への報連相や意見を述べる主張力、意見を断る否定力 |
部下マネジメント | 部下の教育・育成やチームをまとめる統率力、共に成長をめざす共生力 |
仕事は一人でするものではなく、上司・部下・関係者などさまざまな人と関わりながら働きます。よりよい人間関係をつくりあげながら、作業を効率良く進めるには対人力が必要です。
転職時には対人力と対課題力を合わせたポータブルスキルが求められます。
テクニカルスキル
テクニカルスキルは、業務を円滑に進めるために必要な知識やスキルのことです。ポータブルスキルとは違い、専門的なスキルや業界知識・商品知識など、より深い知識が求められます。
そのため、どの職種・業種にも適応するスキルではなく、職種ごとに求められるテクニカルスキルは異なります。例えば、事務職であればパソコンや簿記などのスキル、営業職であればコミュニケーションスキルや交渉力などが必要です。
テクニカルスキルは「汎用スキル」「専門スキル」「特化スキル」の3つにわかれます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
3.汎用スキル
汎用スキルは業種や職種を問わず、日常業務をこなすために必要なスキルです。転職しても次の職場で活かせるスキルであり、先ほど紹介したポータブルスキルとも呼びます。専門性は低く、比較的どのような人でも身につけやすいスキルです。具体的には以下のようなものです。
- ビジネスマナー
- パソコンの基本的な操作スキル
- 文章力や語彙力
- 自分の属している業界や自社に関する知識
汎用スキルは、新入社員研修などで身につけるスキルですので、中途採用であれば身についていて当然のスキルといえるでしょう。そのため、次に紹介する専門スキルや特化スキルを身につけておきましょう。
4.専門スキル
専門スキルは、業務遂行するために必要な専門性のある知識やスキルのことです。汎用スキルよりも専門性が高くなるため、どの職種でも共通するスキルではありません。具体的には、以下のようなスキルです。
- ITエンジニアであれば、プログラミングスキル、分析スキル、問題解決力
- 営業職であれば、コミュニケーションスキル、プレゼンテーションスキル、交渉力
- 人事部門であれば、給与や法律の知識、スケジュール管理能力、事務処理能力
新しい業種や職種に転職する場合は、専門スキルが活かされない場合があります。似た職種であれば汎用的に使えるため、アピールポイントになります。
5.特化スキル
特化スキルとは、専門スキルよりも高度なスキルであり、プロフェッショナル性のあるスキルです。例えば、ITエンジニアであればプログラミング言語の中でも、Python、Java、C++など特定のプログラミング言語に特化した知識・スキルのことです。
マーケティング部門であれば、CRMツールの設計、高度なライティングスキルなどが特化スキルにあたるでしょう。特化スキルを保有していれば、他者と差別化が図れるため転職においても有利になります。
マネジメントスキル
マネジメントとは、経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・情報)やビジネス全般を管理するスキルのことです。マネジメントスキルは、部下の教育や仕事のスケジュール管理、プロジェクトの目標設定などさまざまな場面で必要です。
管理職や昇格を目指している人、キャリアアップを目指している人にはとくに身につけておくことをおすすめします。マネジメントスキルは、いくつかありますが、「リーダーシップ」「コーチングスキル」「目標設定スキル」について詳しく紹介します。
6.リーダーシップ
マネジメントスキルは、チームや組織を管理するスキルですので、集団を統率するリーダーシップは必須のスキルです。リーダーシップは総合的なスキルが求められます。
物事を全体的に見る視野の広さ、正しい意見を的確に述べる意思決定力、チームを包括的にまとめる統率力などのスキルが重要です。また、チームを導くためには主体的に行動することも大切です。
リーダーシップは一朝一夕で身につくスキルではありませんので、若い間から鍛えておきましょう。
7.コーチングスキル
管理職や部下がいる人に必須ともいえるスキルが、コーチングスキルです。コーチングスキルは、人材育成の場において必要なスキルであり、部下の潜在的な能力を引き出すスキルです。コーチングスキルは、部下の主体性を促し、会社の生産性を向上させる効果が期待できます。
コーチングスキルを身につけるには、「承認」「傾聴」「質問」の3つが大切です。まずは相手の些細な変化や成長に気づき、承認することです。相手に成長している実感を与えます。また、相手を理解し、意見を聴くことが大切です。これにより信頼関係を構築します。相手の成長や行動につなげるために質問を投げかけることも大切です。
8.目標設定スキル
目標設定スキルは、組織やチームに進むべき方向を示すスキルです。目標を定めることで、チームが一丸となってその目標へ進めます。目標設定は、内部環境や外部環境を加味することが重要です。
とくにトップマネジメントは、自社の経営状況や社会状況などを踏まえた上で設定しなければなりません。常にアンテナを張って、さまざまな情報を取得することが目標設定スキルの向上につながります。
年齢によって求められるスキルが異なる
上記で紹介したスキルは、中途採用に必ずしも必要とは限りません。転職先や職種、年齢などによっても、求められるスキルが異なるからです。そのため、自分の状況と照らし合わせて必要なスキルを身につけましょう。
新卒や第二新卒は、スキルより学歴が重視されます。このように年齢によって求められるスキルが異なるため、自分にとって重要なスキルを把握しておきましょう。厚生労働省が発表した令和5年度「能力開発基本調査」によれば、正社員に重要なスキルは以下の通りです。
【50歳未満の正社員に重要なスキル】
順位 | 必要な能力 |
---|---|
1位 | チームワーク、協調性・周囲との協働力(60.0%) |
2位 | 職種に特有の実践的スキル(40.4%) |
3位 | コミュニケーションスキル・説得力(34.9%) |
4位 | 課題解決スキル(分析・思考・創造力等)(30.6%) |
5位 | マネジメントスキル・リーダーシップ(28.9%) |
【50歳以上の正社員に重要なスキル】
順位 | 必要な能力 |
---|---|
1位 | マネジメントスキル・リーダーシップ(56.1%) |
2位 | チームワーク、協調性・周囲との協働力(42.8%) |
3位 | 課題解決スキル(分析・思考・創造力等)(39.5%) |
4位 | コミュニケーションスキル・説得力(33.7%) |
5位 | 職種に特有の実践的スキル(31.9%) |
50歳未満の社員は「チームワーク、協調性・周囲との協働力(60.0%)」が最も重要なスキルに対し、50歳以上は「マネジメント能力・リーダーシップ(56.1%)」と異なります。
年齢が若い社員に重要なスキルはポータブルスキルです。チームワークや職種の特有スキル、コミュニケーションスキルなど、汎用的に使えるスキルが求められています。
50歳以上の社員に重要なスキルはマネジメントスキルです。リーダーシップや課題解決スキルなど、人を管理するスキルが求められます。
転職時に学歴フィルター以外で大切なポイント
転職時は学歴フィルターだけでなく、以下の3つが大切です。
- 即戦力になれるスキルがあるか
- アピールできる実績・経歴があるか
- 自己分析ができているか
即戦力になれるスキルがあるか
中途採用を募集している会社のほとんどが、即戦力になれる人材を探しています。ポータブルスキルが身についており、転職先の職種に関する知識やスキルを保有していれば、採用される確率が高くなります。
スキルを証明するためには、実績や資格などが必要です。これまでの職務経験の中で、どのような実績を残したのか、具体的な数値を用いながらアピールできれば効果的です。
アピールできる実績・経歴があるか
アピールできる実績や経歴があれば、選考が有利になります。上記で説明した通り、実績や経歴はスキルや経験を保有していることの証明になるからです。また実績があることは、その人の勤務態度や人柄なども把握しやすくなります。
転職先の業種や職種に関する知識や経験をアピールできれば、採用担当者にも伝わりやすく、入社後から活躍できる人材だと期待してもらえるでしょう。
自己分析ができているか
転職活動を成功させるためには、自己分析が十分にできているかが重要です。自己分析で転職の軸を明確にしておけば、入社後のギャップが少なくなります。具体的には以下の質問に対して、答えられるようにしましょう。
- なぜ現職や転職先の会社を選んだのか?選んだ基準は?
- なぜ転職活動に踏み切ったのか、動機は?
- 転職先を探すときに自分が大切にしていることは?
- 転職して実現したいことは?
自己分析せずに転職活動してしまうと、入社後に「思っている会社と違う」といったギャップが生じる可能性があります。結果的に、同じような不満を持ち、同じような理由で辞めることになるのです。
そうならないためにも、自己分析はしっかりをしておきましょう。
転職時の学歴フィルターについてよくある質問
転職時の学歴フィルターについてよくある質問は、以下の通りです。
転職時に学歴フィルターを回避するには?
転職時に学歴フィルターを回避するには、学歴を重視しない業種・職種を選ぶか、転職サイトを利用するかです。とくに転職サイトを利用すれば、担当者が利用者にあった企業を見つけるため学歴フィルターを気にせずに済みます。
学歴フィルターのない企業はあるのか?
学歴フィルターのない企業は、基本的に知名度の低い企業です。学歴フィルターの有無は、おおむね人気があるかによって変わります。人気の高い大手企業や有名企業は、募集数が多く足切するためにも学歴フィルターを設ける場合があります。
そのため、知名度の低い企業や、大手会社の子会社などは学歴フィルターがなく狙い目です。
まとめ
転職時においても学歴フィルターはあります。しかし、新卒などに比べると重要度は低くなります。とくに中途採用であれば、実績や経歴が重視されるため、学歴フィルターを意識する必要はありません。
ポータブルスキルやテクニカルスキルなど、即戦力になれるスキルを身につけられてるかが重要です。
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